南京大学と仁烁光能(Renshine Solar)は、1.2m×0.6m、全面積0.72平方メートルの単接合ペロブスカイト太陽電池モジュールで、第三者認証の変換効率22.0%を報告した。2026年8月12日にオンライン公開されたDongdong Xu、Ke Xiao、Ye LiuらとHairen Tanらによる論文「Lead carboxylates passivation for meter-scale perovskite solar modules」(DOI: 10.1038/s41586-026-10994-7)だ。
モジュールを0.72平方メートルまで広げても、結晶膜と表面処理の均一性を保てるか。それが研究の出発点だった。今回の22.0%は、大型化に伴う効率損失をどこまで抑えたかを示す数字である。ただし最良の認証品の値であり、工場の平均値や歩留まりを表すものではない。製造、加速試験、3か月の屋外比較がそれぞれ何を確かめたのか、分けて読む必要がある。
22.0%が更新した0.72平方メートルの基準
同じ0.72平方メートルで、2025年の『Science』論文が報告した全面積認証効率は17.2%だった。今回の22.0%はそこから4.8ポイント上がり、相対では約27.9%の上昇に当たる。安定化出力は158.4Wで、最良モジュールの逆方向スキャン値が22.0%、順方向スキャン値が21.13%だった。
面積の定義を混ぜると比較を誤る。孔径面積810cm²の最良モジュールは逆方向スキャンで24.0%、順方向スキャンで23.30%を記録したが、これは0.72平方メートルの全面積値ではない。0.72平方メートル品の活性領域は全面積の94.3%であり、著者は全面積22.0%を活性面積23.3%に換算し、810cm²品の24.0%との差には端部のデッドエリアなど幾何学的な損失が主に効くと分析する。
22.0%の認証値は最良の1枚に対する値である。一方、810cm²モジュールの条件比較は各条件5枚の並行データで実施され、主要なFigure 3の比較は各群n=10とされる。この試料数から、150MWパイロットライン全体のばらつきや量産歩留まりまでは判断できない。
製造は150MWパイロットラインで行った。大気中でスロットダイ塗布し、ギャップ50µm、塗布速度15mm/sで塗った膜を、10Pa未満で35秒乾燥させ、130℃で20分アニールする。続いて蒸着、原子層堆積(ALD)、スパッタ、レーザースクライブ、封止を組み合わせ、ブチルゴム、POE、ガラスで封止後に130℃で10分ラミネートした。量産寸法に近い工程で数値を出した点は重要だが、販売価格や製造コストは論文の中核評価に含まれない。
溶媒で表面を整え、羧酸鉛で欠陥を処理する
今回の製法は、ペロブスカイト層の表面を先に作り、羧酸鉛で処理する順序を取る。2-メトキシエタノール(2-Me)、1,3-ジオキソラン(DOL)、DMSOを6:3:1の体積比で混合し、真空補助結晶化によってFAIに富む表面を形成した。そこへオレイン酸鉛Pb(OA)2を代表とする羧酸鉛(LCP)を施した。
狙いは、大面積化でも表面処理の均一性を保つことにある。従来のアンモニウムハライド系鈍化剤(AHP)は小面積では有効だが、湿度に敏感で不活性雰囲気を要し、大面積塗布ではコーヒーリングによる不均一が生じやすい。LCPは化学的に安定な材料として、均一塗布と界面での電荷輸送の改善を狙った。
論文は溶解・沈殿観察に加え、FTIRと1H NMRの分光測定、XPSやTOF-SIMSによる表面分析を組み合わせて、この処理を調べた。GIWAXSで結晶構造を確認し、SEM、PLマッピング、電気特性も測定した。XPSは表面でのFA+とI−の富化を支持する。ただし査読への応答は、XPSだけで表面の正確な原子化学量論を決められないと明記している。
機構を補う計算もある。2-Me、DOL、Cs+の混合系を対象にしたab initio分子動力学(AIMD)はCs含有複合体の自発形成を示し、FAIと溶媒の結合エネルギー、I−とOA−の欠陥サイト結合の計算も提示した。いずれも実測の効率や屋外発電量ではなく、提案した反応・結合の機構を支える理論結果である。LCP処理が屋外性能を直接生んだとまでは、この計算から言えない。
1300時間の湿熱試験は何を確かめたか
封止済み810cm²モジュールを各条件5枚ずつ用いた湿熱試験では、85±2℃、湿度85±5%RHで1300±48時間後の相対効率を比較した。初期効率を100とすると、AHP品は61まで下がり、39%低下した。LCP品は98を保ち、低下は2%だった。処理条件をそろえた比較として、湿熱下の劣化差を測定した結果である。
-40℃から85℃までを300回繰り返す熱サイクルでも、LCP品は測定上ほぼ効率損失を示さなかった。別の最大電力点追従(MPPT)試験では、2200時間後に初期効率100に対して96を維持した。どちらも封止済み810cm²モジュールの加速・室内試験であり、数十年の屋外寿命を直接実証する試験ではない。
論文はIEC 61215とIEC 61730の全試験系列を通過したと報告する。IEC適合は設計、安全、耐久に関する試験通過を意味するが、商業採算性や長期の実発電を証明するものではない。
3か月の屋外比較は温度効果を証明しない
同じ大規模地上発電所で、研究チームは1MWのペロブスカイト系と3.5MWの結晶シリコンTOPCon系を2026年3月から5月まで比較した。設備容量が違うため、比較したのは総発電量ではなく、設備容量当たりの月間比発電量である。ペロブスカイト側からシリコン側を引き、シリコン側で割る定義では、論文が報告した差は3月3.42%、4月3.79%、5月5.81%だった。
補足図の棒グラフを読むと、月間比発電量は3月がおおむね126対122、4月が151対146、5月が159対150kWh/kWp-monthで、いずれも前者がペロブスカイト系、後者がシリコン系である。ただし、これは図の目盛りから読んだ概数であり、公開されたSupplementary DataにはFig. 73用の機械可読な生データが含まれない。正確な差は論文記載の百分率を使うべきである。5月23日から24日は発電所メンテナンスによる欠測もある。
春の気温上昇とともに、差が3.42%から5.81%へ広がったことは観察できる。しかしこれは、1つのペロブスカイトシステムと1つのTOPConシステムを同一サイトで3か月観察した比較であり、無作為化した介入試験ではない。容量とモジュール定格、配線とインバーターの影響は分離されていない。傾斜、温度係数、汚れの影響も同様で、温度が差を生んだ因果とは断定できない。
今回の22.0%は第三者認証され、製法と信頼性試験にも統制した比較がある。一方で、屋外優位の独立追試や複数サイトでの再現性はまだ報告されていない。通年かつ複数の気候での比発電量、量産歩留まり、鉛の漏出・回収、ライフサイクルコストがそろえば、モジュール面積を広げた効率の前進が、発電所で採用できる技術へつながるかを判断できる。



