Goldman Sachsが2035年のヒューマノイドロボット市場を1,380億ドル・648万台へ見直したと、2026年8月31日に報じられた。2024年2月に380億ドル・140万台へ引き上げたばかりの数字である。一方、Bank of America Instituteが2025年4月に公表した部品原価の推計では、1台あたりのBOM(部品原価構成、bill of materials)は2025年末で3.5万ドル、量産が進んだ2030〜2035年でも1.3万〜1.7万ドルにとどまる。金額の予測が2年半で3.6倍に動く間に、原価は5年で半分以下という想定にしか動かない。この速度差を縮める作業は市場予測の側では進まず、1台に30本入るアクチュエータの単価がどこまで落ちるかにかかっている。
6倍、そして2年半でさらに3.6倍
2022年11月15日のGoldman Sachs Researchのレポート「Humanoid Robots: Sooner Than You Might Think」には、市場規模の金額予測が載っていない。書かれていたのは「人型ロボット開発の歴史において、商用化に成功したロボットはまだ存在しない」という一文と、工場用途で2025〜2028年、民生用途で2030〜2035年に経済合理性が成立しうるという時期の見立てだった。2年で投資を回収するには生産コストを年15〜20%下げる必要がある、とも置いている。
15か月後、同社は数字を出した。2024年2月27日の改定で2035年のTAM(獲得可能な最大市場規模)を380億ドルとし、自ら従来予測として示した60億ドルの6倍超へ引き上げた。出荷台数は140万台で、こちらは従来の4倍にあたる。担当はChina Industrial Technology researchを率いるJacqueline Du。改定の理由として同社が挙げたのは「AIの進歩が最も我々を驚かせた」という一文で、導入実績への言及はなかった。
コスト側も動いてはいた。同じ記事は、1台あたりの製造コストが前年の5万〜25万ドル(低価格帯から最先端まで)から3万〜15万ドルへ下がったと書いている。自社想定の年15〜20%減に対し、実績は40%減。そしてGoldman自身がその理由として説明したのは、安い部品が手に入るようになり供給先が増えたことだった。低下を押したのは設計思想よりも調達先だ、という説明である。
そして2026年8月末、同社は同じ2035年をもう一度書き換えたと報じられている。市場規模は1,380億ドル、出荷台数は648万台(年間出荷とみられるが、Goldman自身の分類は報道で明示されていない)。2030年は25万6,000台から89万台へ、2026年は5万1,000台から7万5,000台へ引き上げられたとされる。
Goldman Sachsは2035年の同じ市場について、60億ドル、380億ドル、1,380億ドルと2度見通しを引き上げた。出荷台数の見通しも140万台から648万台へ4.6倍になっており、予測の改訂幅は実勢のBOM低下幅を大きく上回っている。ただし2026年8月の値はGoldman公式ページ上では確認されておらず、648万台が2035年単年の出荷か累計かも報道では明示されていない。60億ドルという従来値も、2024年2月の記事が自ら遡って示したものである。
予測の桁がこれだけ動くのは、TAMの作り方に理由がある。この種の数字は労働市場の総額に到達率を掛けて出すトップダウンの推計であり、掛ける側の比率を1ポイント動かすだけで結果が数千億ドル単位で変わる。CleanTechnicaのMichael Barnardは、世界の労働市場20兆ドルに対し到達率を仮に1%とすれば2,000億ドル、5%とすれば1兆ドルになるという条件付きの試算を示している(到達率そのものを1〜5%と予測しているわけではない)。前提の1ポイントが2,000億ドルなら、改定は難しい作業ではない。
原価の側は積み上げで作る。Bank of America Instituteの「Humanoid robots 101」(2025年4月29日)は、中国製部品を前提に2025年末のBOMを3.5万ドルと置き、2030〜2035年に1.3万〜1.7万ドルへ下がると見込む。低下ペースの想定は年率約14%である。この14%をそのまま延長すると、3.5万ドルが中央値の1.5万ドルへ届くのは約5.6年後、2031年前後の計算になる。金額予測が2年で3.6倍動いた同じ期間に、原価が想定通り進んだとしても3割弱しか下がらない。
1関節930ドルを240ドルにするという仕事
業界分析サイトGrabaRobotが伝えるTesla Optimus Gen-2の部品原価は、ソフトウェアを除いて1台5万〜6万ドルとされる。同記事によれば内訳で最も重いのがアクチュエータで約56%、次がハンドの17.2%(9,500ドル)、以下は腰と骨盤が14.2%、大腿13.2%、脛13.2%、足12.2%と続くという。この内訳はMorgan Stanley発として紹介されているが、原資料での直接確認はできておらず、二次媒体経由の数値として扱う。
比率そのものは出典によって幅がある。TechTimesが挙げる35〜40%から、Morgan StanleyのOptimus Gen-2推計の約56%、独立推計の40〜55%まで散らばっており、単一の値で断定できる状態にない。確かなのは、推計により4〜6割という帯のどこかにアクチュエータが座っているという点だけである。
本数の想定はBank of America Instituteのモデルが具体的だ。1台あたり回転式のアクチュエータ16本と直動式14本、合わせて30本。器用な手の自由度は6と置いている。同機関は、6自由度のハンド設計は人間の手(27自由度)が持つ機能の60〜70%をカバーできるとしており、原価はこの水準の手を前提に積まれている。
ここに比率と本数を当てると、1本あたりの金額が出る。アクチュエータがBOMの56%を占め1台に30本使うというモデルを当てはめると、1関節あたりの部品コストは930〜1,120ドルになる。BOMを1.3万〜1.7万ドルに収めるには、同じ比率と本数のまま1関節を240〜320ドルへ、約73%下げる必要がある。計算は単純で、5万ドル×0.56÷30本で933ドル、6万ドル×0.56÷30本で1,120ドル。目標側は1.3万ドル×0.56÷30本で243ドル、1.7万ドル×0.56÷30本で317ドルとなり、中央値同士の比較で必要な低下率は73%になる。
この試算には条件が付く。BOM総額と比率はMorgan StanleyによるOptimus Gen-2という単一機種の推計であって業界平均とは言えず、本数30本はBank of America Instituteのモデル想定で、発行体も年次も違う。目標レンジ自体も2025年4月時点の予測であり、実現した価格ではない。将来もアクチュエータ比率が56%のままだという保証もなく、他の費目が先に下がれば比率はむしろ上がる。それでも、埋めるべき距離が1関節あたり700ドル前後だという桁は動かない。
では、その700ドルはどこから削るのか。ここで半導体との違いが効いてくる。半導体は世代が変わるたび同じ面積に載るトランジスタの数が増えるため、機能あたりの単価が階段状に落ちていく。
精密減速機は逆で、歯面を削って測って組む工程が減らない。波動歯車装置にせよ遊星ローラーねじにせよ、単価を決めているのは加工機の精度と工程数であり、それは生産量を増やしても自動的には縮まない。下がるのは歩留まり、段取り替えの時間、内製化による中間マージン、材料の調達条件である。つまり学習曲線であって、指数曲線ではない。
単価の水準を見ると、この距離の遠さが分かる。同じGrabaRobotの記事によれば、脚部の直動関節に使う遊星ローラーねじは1本1,350〜2,700ドルとされ、フルサイズ機には約12本入るという(本数・単価とも発行体を含め原資料での確認はできていない)。ねじ1本が、目標BOM全体の1割前後を占める計算になる。手も同様で、自由度6の設計でハンド1組が9,500ドルなら、それだけで1.3万〜1.7万ドルという目標の半分を超える。人間の手に近づけるほど、目標との距離は開いていく。
13,500ドルの機体と、価格を出さない機体

Unitreeの公式ストアはG1を13,500ドル(税と送料は別)で売っている。全高1,320mm、質量約35kg、23自由度、稼働約2時間。この1台だけを見れば、量産期のBOM目標1.3万〜1.7万ドルはすでに達成されているように見える。
対して西側の商用機は、そもそも値札を出していない。Boston Dynamicsの電動AtlasもFigure 02も公式価格は非公表で、流通する推計値は互いに一致しない。Agility RoboticsのDigitはRaaS(サービスとしてのロボット提供)が中心で、同社の2026年6月の投資家向け資料は1台あたり月額約8,500ドル、年間約10万ドルを想定価格として示している。よく引用される「時給30ドル」はDigitの利用料を指さない。比較対象として置かれた人間の完全負担人件費(約30.50ドル/時)である。
家庭向けでは1X TechnologiesのNEOが一括2万ドルまたは月額499ドル(予約金200ドル)を提示し、2026年に米国の一般家庭から出荷を始める。Tesla Optimusの2万〜3万ドルはElon Muskが語る長期の量産目標価格であり、2026年半ば時点で受注も公式価格も有償顧客への出荷実績もない。目標価格と提示価格と実勢価格が、同じ「ドル」の単位で並べて語られている状態にある。
平均販売価格が下がるとき、そこには別々の経路が2つある。1つは同じ構成の機体の原価が下がる場合。もう1つは、安い製品が売れて構成比が変わる場合である。
Unitreeの人型ロボットの平均販売価格は2023年の59万3,000元から2025年1〜9月の16万8,000元へ落ちた。同社はモーターと減速機、関節モジュールとサーボドライバを自社で作っており、前者の要素を確実に持っている。同時に、4,900ドル帯のR1から4万3,900〜7万3,900ドルの開発者向けEDU版まで価格帯が広がったことで、後者の効果も混ざる。平均値だけを見て「ハードが安くなった」と読むと、2つを取り違える。
用途の内訳がその区別を助ける。Counterpoint Researchが2026年8月19日に出した集計では、2026年上期の世界出荷は2万2,000台超で前年同期比約300%増、通年では5万台超(210%増)を見込む。シェアはAgiBot 43%、Unitree 31%。ところが用途別では、娯楽と実演、データ生成と研究の合計が6割超を占め、知能製造は13%、倉庫物流は5%にとどまる。出荷台数の急増は起きているが、その大半は工場や倉庫で働く機体ではない。
つまり中国の量産が解いたのは、研究とデモに使える機体を安く作るという問題である。23自由度で稼働2時間の機体を1万3,500ドルで出すことと、工場で毎日8時間動いて保守部品の供給が10年続く完成機を同じ価格で出すことは、同じ問題ではない。IDTechExが世界平均販売価格を2024年の11万4,700ドルから2030年に3万7,000ドルへ約68%下がると予測するときも、基準年は2024年であり、母集団に中国の量産機を含めるかどうかで平均は大きく動く。
完成機では84台、関節では8割
矢野経済研究所が2026年4月24日に公表した予測(メーカー出荷台数ベース)は、世界市場を2025年16,580台、2026年81,690台(前年比492.7%)、2035年718万台と見込む。2025年から2035年のCAGR(年平均成長率)は83.5%になる。同じ集計で日本市場は2025年に84台、世界シェアは1%未満である。完成機の台数で見る限り、日本はこの市場にほとんど参加していない。
部品の側に目を移すと、景色が反転する。ハーモニック・ドライブ・システムズは小型精密減速機(波動歯車装置)の市場で世界シェア80〜90%を維持し、2026年2月27日に東証プライムへ市場を変更した。2026年3月期は売上高595億5,700万円(前期比7.0%増)、営業利益25億6,700万円。前期の営業利益は600万円だったので、1年で4桁近い戻りを見せたことになる。丸山顕社長は「基本特許が切れてなお、これほど長く用いられる部品は稀だ」と述べている。
波動歯車装置がロボットの関節に居座り続けている理由は、構造にある。薄い金属製のカップを楕円形に押しつぶし、外側の剛性リングとの噛み合い位置を1周ずつずらしていくことで減速する。歯車を並べる方式と違ってガタ(バックラッシュ)がほぼ出ず、1段で100分の1前後の高い減速比が得られ、しかも軽い。関節の角度を細かく決めたいロボットにとって、この3つを同時に満たす部品は代わりが利きにくい。
そして人型は関節の数が多い。同社によれば、1体あたりの減速機搭載数は従来の産業用ロボットの約6〜10倍になる。完成機が1台売れるかどうかより、その1台に減速機が何個入るかが効く事業である。
日本のもう1社、ナブテスコはRV減速機で中大型の産業用ロボット関節を押さえてきた。両社は2021年に協業を解消し、ナブテスコは2022年11月に保有するハーモニック株の売却を決定、2023年6月までに確定売却総額375億1,500万円で全株を売却完了している。日本の減速機2社は、人型という新しい需要へいまは別々に向き合っている。
TrendForceは2025年12月9日付の整理で、日本がアクチュエータとセンサー、制御系という基幹部品で参入障壁を上げる戦略を採る一方、米国と中国は完成品を一気に投入していると分類した。完成機がないわけではない。川崎重工のKaleido 9は190cm・99kg・全身30自由度で、2025年12月のiREX 2025では30kgの棚を移動させる実演を見せている。ただし台数の勝負には出ていない。
日本の完成機側の接点は、いまのところ買い手として現れている。Agility RoboticsとToyota Motor Manufacturing Canadaは2026年2月19日にRaaS契約を発表した。3台による1年間のパイロットを経て、初期導入は7台。OntarioのCambridgeとWoodstockの工場で、自動牽引車へのトートの積み降ろしを担う。

Toyota Motor Manufacturing Canada社長のTim Hollanderは、多数のロボットを評価したうえでDigitを選び、従業員の作業環境を改善して操業効率をさらに高められることを喜ばしく思う、と述べている。Goldmanの2026年改定では、Toyotaが2035年に19万〜54万台(世界シェア3〜8%)を生産しうるとの試算も示されたと報じられている。買い手としての日本が、そのまま生産国としての見通しにも数えられ始めている。
ここで一つ断っておくと、ハーモニックの80〜90%は波動歯車装置という特定の製品市場の世界シェアであり、減速機全体でもロボット部品全体でもない。中国メーカーが価格を武器に追い上げていることも業界では共通の認識になっている。日本が関節部品を独占しているという読み方は、この数字からは出てこない。
「元年」は3回来た
中国メディアがこの産業に付ける呼び名は、毎年繰り上がってきた。2024年は試作機のリリース年、2025年は「量産元年」、そして2026年は「商業化元年」である。新華網は2026年1月8日の記事で2026年を商業化元年と位置づけ、高工機器人産業研究所の推計として2025年の1万8,000台から2026年の6万2,500台への伸びを挙げている。
その商業化元年に、実際に契約として確定した導入規模を並べるとこうなる。Agility RoboticsとToyota Motor Manufacturing Canadaが7台。BMWは2026年2月27日のリリースでSpartanburgのFigure 02案件をパイロットプロジェクトと説明しており、投入は1台だった。その1台は2025年の10か月間でX3を3万台超生産する工程を支え、部品移動を約9万回、稼働時間は1,250時間を記録したが、Figure側は2025年11月19日にFigure 02の退役を発表している。Boston DynamicsはCES 2026で量産版Atlasを公開したものの、2026年の生産枠はHyundaiのRobotics Metaplant Application CenterとGoogle DeepMind向けで埋まり、外部顧客への出荷は2027年初頭からになると説明されている。
生産と稼働の差はもっと大きい。Interact Analysisの集計では、2025年に世界で生産された人型ロボットは2万台超(2024年の2,000台未満から10倍)に達したが、実際の運用へ投入されたのは約10%、およそ2,000台にとどまった。それ以外の大部分は研究とデータ収集、娯楽向けだったという。同社は大規模な商用化の変曲点を2032年以降とみて、2035年の年間出荷を70万台超、市場収益を約150億ドルと予測している。
数字を突き合わせるとき、まず揃えるべきは単位より定義のほうだ。2035年の台数見通しは、Goldman Sachsが648万台、矢野経済研究所が718万台、Morgan Stanleyが1,300万台と並ぶが、矢野経済研究所はメーカー出荷台数、Morgan Stanleyは稼働台数であるのに対し、Goldmanの648万台は年間出荷か累計かが報道では明示されておらず、年間出荷として扱うのは暫定にとどまる。数字が近く見えても、数えている対象がそもそも揃っていない。
出荷はその年に工場から出た台数(フロー)、稼働台数は過去の出荷が積み上がった残高(ストック)であり、耐用年数を5年と置けば同じ市場でもストックはフローの数倍になる。Morgan Stanleyの1,300万台は稼働台数の見通しとして伝えられている値で、同社が確度をもって示しているのは2050年に市場約5兆ドル、稼働約10億台という長期の絵のほうである。金額でも同じずれが起きる。Goldmanの1,380億ドルはTAM全体、Interact Analysisの約150億ドルは年間出荷ベースの市場収益であり、9倍の開きがあるように見えて比べているものが違う。
予測の外れ方を自分で記録している例は、この分野ではむしろ例外に属する。Rodney Brooksは2026年1月1日の予測採点表で、2018年に立てた器用な手と家庭用ロボットの予測がいずれも未達だったと自己採点したうえで、新しい予測を書き足した。実用可能な器用さは2036年以降も人間の手に比べて貧弱なままだろう、新しい機構が現れない限り歩行する人型ロボットは人間のすぐそばで動かすには危険すぎる状態が続く、という内容である。
1関節240ドルへ、誰が削るのか
73%の値下げを担いうる経路は、いまのところ3つに絞られる。1つ目は部品の内製化だ。Unitreeが平均販売価格を2年で3分の1以下にした背景には駆動部の内製があり、同じ動きは完成機メーカーの側でも始まっている。
Figure AIの自社工場BotQは2026年4月29日時点で毎時1台の生産速度に達し、120日未満で24倍に引き上げた。Figure 03を350台超製造する過程でアクチュエータを9,000個以上作り、品目数は10種を超え、ライン終端の一発良品率は80%超だという。完成機メーカーがアクチュエータ工場を持つと、1関節あたりの中間マージンが消える。
2つ目は生産量そのものである。学習曲線が変数に取るのは時間ではない、累積生産量だ。累積台数が倍になるごとに単価が一定率下がる、という形で進むため、Bank of America Instituteの「年率14%」も実体は台数の関数を年に読み替えたものだ。2026年の世界出荷はTrendForceが5万台超、Goldmanが7万5,000台と見込んでおり、この水準なら累積を倍にするのに時間はかからない。ただし1関節930ドルを240ドルにするには累積を何倍にも重ねる必要があり、そこに要る年数を決めるのは出荷の伸び率よりも絶対台数のほうだ。
3つ目の半導体は、効き幅が小さい。Goldmanの2026年のレポートは1台あたりの半導体コストを3,000〜6,000ドル超と見積もっていると報じられているが、これはBOM3.5万ドルに対して1割弱から2割弱にあたる。仮に半導体が半額になっても原価は1,500〜3,000ドルしか下がらず、3.5万ドルは3.2万〜3.35万ドルにしかならない。演算が安くなることは機体を賢くするが、関節を安くはしない。
そこへ制度の線が引かれた。FCCは2026年7月28日、公示DA 26-786で「foreign-produced advanced robotic devices」(自律移動ロボット、人型、四足を含む移動機械)をCovered Listに追加した。対象は重量4.4ポンド(約2kg)超で200kbps以上の接続性を持つ機器などで、新規モデルは米国での輸入と販売に必要な機器認証を取得できなくなる。
既存の認証が遡及的に失効するわけではない。認証済みの機体は販売も使用も続けられるが、ハードウェアを変更するには個別のwaiverが要る。全面禁止ではなく、新しい機体の入口を閉じる措置である。
その線がどこを通るかは、NVIDIAの発表を見ると分かりやすい。同社は2026年6月1日のGTC TaipeiでIsaac GR00Tリファレンス人型ロボットを公開した。身体はUnitreeのH2 Plus筐体(約183cm・68kg・31自由度)で、そこにSharpa Waveの5指ハンド(22自由度)とJetson AGX Thor T5000を組み、全身75自由度。2026年後半にUnitreeから提供され、採用先にはAi2やStanford Robotics Centerなど4機関が挙がっている。米国の研究者が標準機として使う身体は、米国が7月に輸入規制の対象へ加えたメーカーの筐体である。
ここに、価格が下がる速度をめぐる本題が戻ってくる。学習曲線は同じ設計を同じ工場で何本作ったかで下がる。供給網が制度で二手に分かれれば、それぞれの累積台数は分母から相当な部分を失い、1関節240ドルへの到達は遅れる。Bank of America Instituteの年率14%が続いたとして3.5万ドルが1.5万ドル台へ届くのは2031年前後、そこから実売価格へ反映されるまでにはさらに時間がかかる。
だから次に確かめるべき数字は、Goldmanの改定幅でもTAMでもない。Counterpointの用途別内訳で知能製造の13%と倉庫物流の5%がどこまで上がるか、Unitreeの平均販売価格の下げ止まりがどこで来るか、ハーモニック・ドライブ・システムズの人型向け出荷が減速機の個数としてどれだけ積み上がるか、である。1関節が240ドルに届けば、人型は1台ごとに稟議を通す設備から、工程に合わせて台数を足す道具へ変わる。ただしIEEE Spectrumの取材でMelonee Wiseが指摘した通り、1拠点あたり数千台を必要とする用途はまだ誰も見つけていない。安くなったところに需要が待っているかどうかは、原価の計算とは別の問題として残る。



