米連邦通信委員会(FCC)は2026年7月28日、国外で生産された「高度ロボット機器」を、通信機器・サービスの安全保障上の制限対象をまとめたCovered Listへ追加した。新しい対象機種は原則としてFCCの機器認証を取得できず、米国で輸入、販売、広告できなくなる。

措置は中国製人型ロボットの排除として受け取られやすい。しかし、FCCの規則はメーカーの国籍を判定条件にしていない。生産地と連邦調達基準に沿って、国外生産品を広く対象にする。米国企業が国外で製造した自律移動ロボットも入り得る一方、中国企業の製品でも米国内生産へ切り替え、基準を満たせば対象外となる余地がある。

さらに、すでに認証された既存モデルの輸入や販売、利用は続けられる。連邦政府専用の調達にも制限はかからない。今回設けられたのは、市場に出回るロボットを一斉に停止する仕組みではなく、新機種の入口に置く認証ゲートである。

AD

中国企業ではなく「国外生産」を分ける

FCCは自らの判断だけでCovered Listを更新できない。Secure and Trusted Communications Networks Actに基づき、適格な国家安全保障機関から「容認できないリスク」との判断を受け、2026年7月27日付の決定を翌日に反映した。掲載後は対象機器への新規認証が禁じられ、申請者は自社製品がリスト対象ではないと証明しなければならない。

FCCのFAQは、この措置を「国に中立」と明記する。国外生産かどうかは、連邦調達規則(FAR)の「国内最終製品」に該当するかで決まる。FARの基本テストでは、米国内で製造され、2024~2028年の納入品なら国内部品コストが全構成部品コストの65%を超えることが要件となる。2029年からは75%へ上がる。市販品などには例外があるため、個々のロボットへこの比率を機械的に当てはめることはできない。

規制後の扱いは次のように分かれる。

区分 米国での扱い
国外生産の新モデル 原則としてFCC認証を取得できず、輸入・販売・広告ができない
追加前に認証済みの既存モデル 輸入・販売・利用を継続できる
連邦政府・政府機関の専用品 輸入・販売・利用の制限を受けない
開発・試験用の未認証機 規則に沿う少量輸入は可能だが、販売・広告は不可
固定式の産業・医療ロボット 高度ロボット機器の定義から除外

既存の対象機器には、基本的なソフトウェアやファームウェア更新を続けられる包括的な適用除外もある。したがって、利用中の機体を修正不能な状態へ追い込む制度ではない。反面、既存認証を流用できない新設計や次世代機では、米国内生産か国防総省の有条件承認が必要になる。

約2kg、200kbpsが引く技術的な境界

「高度ロボット機器」の範囲は、人型と四足歩行型より広い。地上を走り、障害物を避けて経路を選び、人から離れた場所で命令やセンサーデータに基づいて動く機械式モバイル機器が対象となる。倉庫や施設内を走る自律移動ロボットも条件を満たし得る。

重量の境界は、本体とステーションまたはドックの合計で4.4ポンド、約2.0kgを超えることだ。さらに、環境センサーと、上りか下りの少なくとも一方向で200kbps以上の有線・無線接続を備える必要がある。機体のナビゲーションや移動を担うソフトウェアも定義に含む。周囲の知覚、データ収集、遠隔指令に使う機能も同様で、ファームウェアやAI・機械学習モデルの重みまで対象になる。

コネクテッドカーと線路専用車両は除外された。空と水中で動く無人機、米食品医薬品局が規制する医療機器も対象外だ。工場の多関節やデルタ、直交・ガントリー、SCARAといった固定式ロボットも含まれない。中国の産業用ロボット全体を遮断する措置と読むのは正確ではない。

この定義は、ロボットの形より、移動能力とセンサー、通信、ソフトウェア制御の組み合わせを見ている。遠隔接続された機体が周囲を認識し、物理空間で動けることを、通信機器の認証制度へ接続した点が今回の変化である。

AD

遠隔奪取は実証済み、国家によるスパイ活動は未立証

国家安全保障判断は、高精度LiDARに加えて触覚、音響、熱センサーを備えるロボットが、周囲の情報を集め得ると指摘する。想定される場所は家庭や工場から、重要インフラ、戦場まで広い。ネットワーク接続や無線更新が侵害されれば、映像や地図の取得、機体の遠隔操作、物理的な妨害へ発展する恐れがある。

判断文書が挙げた事例には、現実の攻撃経路がある。2026年初めに見つかった家庭用ロボットの問題では、研究者が24カ国の約7,000台へ到達できた。ライブ映像とマイク音声を取得し、住宅地図も閲覧できる状態だった。対象はDJIの家庭用掃除ロボットRomoで、研究者の報告を基にした原報道をFCCも引用している。

Unitree製ロボットで発見されたUniPwnは、G1とH1に加え、Go2やB2でも遠隔コマンド実行とroot権限取得を可能にした。Bluetooth経由で近隣機体へ自動拡散できるとIEEE Robotics and Automation Societyが報告している。2025年9月20日時点で影響するファームウェアが残っていたが、Unitreeは9月29日に大半の修正を終え、更新を順次提供すると説明した。米脆弱性データベースにも、Unitree機器で暗号鍵と初期化ベクトルがハードコードされていたCVE-2025-60250が登録されている。

国家安全保障判断はこのほか、2025年4月に報告された国外製四足歩行ロボットのバックドア疑惑を挙げた。カメラと機体全体を操作できる可能性が問題とされた。

ただし、確認されたのは脆弱性、遠隔奪取、機密性の高いセンサーデータへ到達できる経路である。公開されたFCC文書は、中国政府がこれらのロボットを使って諜報活動に成功した事例や、収集データが中国政府へ送られた証拠を示していない。「スパイになり得る設計上の危険」と「国家によるスパイ活動の立証」は分けて読む必要がある。

有条件承認で問われる所有構造と米国生産

国外生産品にも出口は用意された。国防総省が個別にConditional Approvalを与えた機器は、Covered Listの例外としてFCC認証を申請できる。申請期限は2028年1月1日で、提出しただけでは承認されない。

審査項目はセキュリティ機能の説明より広い。申請企業は親会社や子会社、合弁の関係を明らかにし、5%以上の実質所有者も開示する。取締役と幹部の国籍・居住地、外国政府からの影響や資金支援も審査対象だ。

製品については詳細な部品表と、各部品および設計の原産地を提出する。知的財産とソフトウェア更新を管理する主体、製造から最終組立・試験までの場所も開示対象だ。さらに、国別の価値と生産量の比率を示し、単一供給源が止まった場合の代替策を説明しなければならない。

さらに、現在の米国内組立比率、人員、施設を示し、今後1~5年の設備投資、雇用、施設拡張を期限付きの計画にしなければならない。承認後は四半期ごとの進捗報告が必要だ。条件に故意に違反するか、米政府への情報提供で重要な虚偽説明をすれば、承認を失い再申請もできなくなる。

つまり有条件承認は、脆弱性対策の自己宣言ではない。所有構造と供給網を国防総省へ開示し、米国内生産へ移る工程を約束する代わりに、新機種の市場アクセスを条件付きで残す制度である。計画と実際の生産移転は別であり、承認企業が現れるか、投資計画が実行されるかが次の焦点になる。

AD

中国が先行する市場に認証ゲートを置く

中国国務院新聞弁公室が紹介した業界データでは、2025年の中国には人型ロボットメーカーが140社超あり、出荷は14,400台、世界市場の84.7%を占めた。中国工業情報化部も、完成機メーカーが140社超、発表された製品が330超とする。政府系資料に掲載された業界推計であり、独立監査済みの市場統計ではないが、中国の供給能力が急速に膨らんでいることを示す。

産業用ロボットでは、国際ロボット連盟が2024年末の中国の稼働台数を2,027,000台、新規導入を295,000台と集計した。新規導入は世界の54%で、中国市場における中国メーカーの比率は2023年の47%から57%へ上がった。この統計は工場向け産業ロボットの母集団であり、14,400台という人型ロボット出荷と足し合わせることはできない。

議会では、懸念国の影響下にある企業が作る人型・四足歩行ロボットと制御ソフトウェアを対象にするGUARD Act案が提出されている。こちらは企業の所在地・支配関係を基準にし、国家安全保障機関へ1年以内の判断を求める構想で、FCCが今回採った国に中立な生産地基準とは射程が異なる。下院を2026年7月22日に通過した国防権限法案にも、中国製ロボットを禁止すべきか国防総省が判断する過程を設ける部分が入ったが、最終成立した法律ではない。

FCCの措置は行政上の認証政策であり、議会による恒久的な法制化とも別段階にある。今後見るべきなのは、中国企業というラベルより、どのメーカーが米国内生産へ移り、どの機種が国防総省の有条件承認を得るかだ。既存機が残る市場で新機種だけが止まるため、規制の実効性は、次世代機への更新速度と国内生産の立ち上がりに左右される。