BYDのStella Li副社長が、2027年に固体電池技術を搭載する最初のモデルを用意する計画を明らかにした。発言は9月に公開されたCarwow.esのインタビューで語ったものだ。とは言え、次世代電池を実車に載せる予告は、一般販売の開始や量産の成功を意味するわけではない。実車への搭載が成功することと、同じ品質で大量に作れることは全く別問題だからだ。

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初搭載モデルの予告で、まだ決まっていないこと

Li氏は、BYDが固体電池の技術と商業化で先行していると述べ、そのことを示すために来年、最初の搭載モデルを用意すると説明した。電池の化学だけでなく、製造能力や設備設計も研究しているという。あくまでBYD幹部による開発計画と自己評価であり、第三者が競争の首位を認定したわけではない。

今回の発言から、車名や販売価格は分からない。どの国でいつ購入できるのかも示されておらず、航続距離や充電時間の数値を伴う製品発表にはなっていない。「モデルを用意する」という約束には意味があるが、消費者への納車を約束したと受け取るのは早い。

さらに、引用された発言は「固体電池」という表現を使っている。この言葉だけで、次期モデルの電解質の構成まで確定することはできない。全固体電池の開発計画と結び付けて注目される一方、実際に搭載する電池の仕様は、車両とともに示されるのを待つ必要がある。

BYDの2027年計画自体は以前から伝えられていた。今回、一歩具体的になったのは、最初の搭載モデルを示すという経営幹部の表明である。そこで見るべき成果も、研究室のセルの性能から、車載システムとして使えるかという問題へ広がる。電池を車に積むことは、開発の終着点ではなく、新しい試験の入り口になる。

実車で問われるのは、固体同士の接触を保てるか

トヨタと出光は、全固体電池の耐久性を阻んできた課題として、充放電を繰り返した際に電極と固体電解質の間に亀裂が生じることを説明している。電解質は、電池の中でイオンが移動するための材料だ。液体から固体へ置き換えると、材料同士が接する場所を保つことが、性能を長く維持するうえで重要になる。

両社が開発する硫化物系固体電解質は、柔らかく、ほかの材料と密着しやすい。トヨタは2023年の協業発表時、割れにくい材料の開発によって性能と耐久性を両立するめどがついたと説明した。ただし、これは両社の材料開発についての説明であり、BYDが同じ材料や解決策を採用していることを示すものではない。

車載試験の具体例は、BMWがすでに公表している。2025年5月、同社はSolid Power製の大型全固体セルを積んだBMW i7試験車を、ミュンヘン周辺で運用していると発表した。硫化物系固体電解質を使うこの試験で調べるのは、セルの膨張をどう管理するか、動作時の圧力をどう制御するか、温度条件をどう調整するか、という点だ。

この試験項目は、全固体電池の評価が材料の性能だけでは済まない理由をよく示している。電池の基本単位であるセルをまとめ、車載パックに組み込むと、押さえる機構や温度を管理する仕組みも必要になる。それらを含めた重さや構造を考えずに、セル単体のエネルギー密度から車の航続距離を読み替えることはできない。

BMW自身も、競争力のある蓄電システムに仕上げるには追加の開発が必要だとしている。実車を走らせられた段階と、商品として完成した段階は違う。BYDの搭載モデルについても、どの条件で性能を測り、繰り返し使った後にどう変化したのかが示されれば、技術の進み具合を判断しやすくなる。

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同じ2027年でも、各社が目指す段階は違う

Samsung SDIは2026年のInterBatteryに向けた公式発表で、全固体電池の量産を2027年後半に始める目標を示した。人型ロボットなどへの用途拡大も掲げており、これは特定のEVを発売するという発表とは異なる。一方、トヨタと出光は、搭載車の市場導入と、その後の本格量産を分けている。

BMWの実車試験、トヨタ・出光の市場導入目標、Samsung SDIの電池量産目標は、開発の異なる段階を示しており、年号だけでは先行順位を決められない。

2026年9月15日時点で確認した各社の発表を、何を実施・完成させるのかで分類すると、次のようになる。発表時点の異なる計画を、性能のランキングとして並べたものではない。

企業・発表時点 対象と公表内容 到達段階・状態
BMW・Solid Power(2025年5月) 全固体セルを積んだBMW i7を運用 実車試験を実施。商品化には追加開発が必要
トヨタ・出光(2023年10月) 全固体電池搭載車を2027~2028年に市場導入 市場導入の目標。その実績を踏まえて本格量産を検討
出光(2026年1月) 固体電解質の大型パイロット装置を2027年中に完工 材料製造設備の建設を開始。完成は目標
Samsung SDI(2026年3月) 全固体電池を2027年後半に量産 電池の量産目標。ロボット用途にも展開する方針

表の差は、単に企業の慎重さの違いではない。材料の製造設備を完成させること、電池を量産すること、車を市場へ出すことは、それぞれ異なる仕事だ。「2027年」という一致だけでは、生産規模も購入できる時期もそろわない。

BYDの予告を評価するときも、最初のモデルを用意したか、実車で性能を実証したか、一般向けに供給できるかを分けて追う必要がある。実車試験という尺度ならBMWにはすでに公表実績があり、量産目標という尺度ならSamsung SDIも具体的な時期を示している。Li氏の「先行している」という言葉を確かめるには、まず何についての先行かを定めなければならない。

普及の時期は、材料を安定して作れるかにかかる

出光は2026年1月、固体電解質を製造する大型パイロット装置の建設を始めたと発表した。千葉事業所で2027年中の完工を目指し、生産能力は年間数百トンを見込む。製造した材料は、トヨタが開発するEV向け全固体電池に使う予定だ。

出光はすでに小型実証設備で材料を作っているが、その実績を踏まえて製造規模を拡大する。ここでの「数百トン」は固体電解質の量であり、完成した電池の生産量やEVの台数ではない。設備が完成した時点で、搭載車が同じ規模で出荷されるわけでもない。

この計画は、量産準備を評価するうえで参考になる。発表された完成年に加え、何を作る設備なのか、どの段階の実証を経たのか、材料がどの製品に使われるのかまで分かるからだ。BYDとは別の供給網の事例だが、電池の普及には材料の製造から車載までをつなぐ必要があることを具体的に示している。

Li氏が材料化学に加えて製造能力や設備設計にも言及した点は、この問題と重なる。良好なセルを作る技術と、同じ品質のセルを継続して供給する技術は、別々に確かめなければならない。初搭載モデルの成功だけで、価格や供給量の問題まで解消したと考えることはできない。

BYDが2027年にモデルを示したとき、走行距離や充電時間には、試験温度と使用条件を伴う数値がほしい。耐久性を支える車載機構と、安定生産を支える設備が具体化すれば、固体電池は開発計画としての期待から、購入するEVを選ぶための判断材料へ近づく。