AppleがApple Watchについて、画面付きの腕時計という現在の製品構成の前提を大きく変えるべく、社内で広く再考しているようだとBloombergが報じた。検討対象には円形画面、画面を持たない新デバイス、異なる表示方式、複数のサイズが含まれるという。UltraやHermèsより上の価格帯、現行SEより低い価格帯も候補にあるとされる。
ただし、いずれも出荷仕様として決まったものではない。Bloombergによると、円形画面は候補の一つにすぎず、市場投入の可能性は低い。再設計が実現する場合も数年先とされ、製品名と価格は明らかになっていない。センサー構成やバンド互換性も同様だ。
Apple Watchはこれまで、表示と通知に健康機能を重ね、通信や安全機能も手首にまとめる方向で進化してきた。今回の構想は、その統合端末を刷新する話に加え、画面を常に見る前提を外した健康データの取り方まで視野に入る。現行モデルの設計とwatchOSの前提から見ると、影響は筐体の輪郭に限らない。
円形画面はwatchOSの前提にも手を入れる
現行のApple Watch Series 11は、42mmと46mmの矩形ケースを採用する。42mmモデルの表示領域は989平方mm、46mmモデルは1220平方mmで、厚さはいずれも9.7mmだ。Appleは睡眠スコア、最大24時間のバッテリー、Ion-Xガラスの傷耐性、5GをSeries 11の特徴として掲げている。
表示領域を広げる方針は、Series 10の時点からはっきりしていた。2024年のSeries 10は42mmと46mmへ移行し、Series 9比で最大9%、Series 4から6比で最大30%広い表示領域をうたった。薄型化と丸みを帯びた角、広いアスペクト比を組み合わせ、矩形の中で情報を読ませる設計を詰めてきたのである。
上位のApple Watch Ultra 3も同じ延長にある。49mm×44mm×12mmのケースに1245平方mmの表示領域を持ち、最大42時間、低電力モードでは最大72時間のバッテリーを公称する。S10チップと64GBストレージを備え、5Gと衛星通信にも対応する。Apple Watchの中でも大画面と長時間駆動を選ぶ利用者へ寄せたモデルだ。
円形表示を採るなら、画面の見え方以上に、文字盤、文字の収まり、コンプリケーション、タップ領域の設計を見直す必要がある。AppleがwatchOS 10の設計資料で示したDial、Infographic、Listの各レイアウトは、画面の形状とサイズを前提に組まれている。丸い表示領域に変われば、既存アプリをそのまま拡大縮小するのではなく、情報をどこへ置くかという判断から作り直すことになる。
AppleのwatchOS 27向け開発者資料は、周辺機器や画面サイズに適応するUIを説明している。ただし、Appleが公開しているwatchOS 27の資料はBeta 4段階で、正式版の出荷仕様を確定するものではない。円形モデルの試作が製品化へ進むかどうかは未定だが、もし進めるならソフトウェア側の移行範囲は広い。
画面を外すと、手首での体験が変わる
Bloombergが伝えた画面なしの新デバイスは、Appleが現行Apple Watchと異なる健康アクセサリーを考えている可能性を示す。ただし、Appleは画面なしの製品を発表しておらず、WHOOPやOuraと同じ設計を採る根拠もない。比較できるのは、画面を持たない製品が現在どの機能を優先しているかまでである。
WHOOPは画面を持たないことを製品の特徴に掲げ、WHOOP 5.0では14日以上のバッテリーと常時センサーを訴求する。表示でその場の通知を処理するより、長時間装着してデータを取り続け、あとから状態を確認する使い方へ寄せた製品だ。画面を見ない時間を前提にすれば、通知の操作性より、装着感、充電頻度、データの連続性が製品の価値を左右しやすくなる。
指輪型のOura Ring 4も、睡眠中の血中酸素、24時間の心拍と心拍変動、体温傾向を測るセンサーと連続データ収集を説明している。腕時計と指輪は装着部位も操作方法も異なるため、機能を一対一で比べることはできない。それでも、画面を外した健康デバイスでは、短い通知の確認よりも、日常と睡眠をまたぐデータの蓄積が中心になることは読み取れる。
Appleが画面なしの端末を製品化する場合、現行Watchの代替品にするのか、iPhoneやWatchへデータを渡す別のアクセサリーにするのかで意味が変わる。前者なら通知、アプリ、通話をどう補うかが問題になる。後者なら、センサーの搭載量、電池、データをどの端末で見せるかが設計上の争点になる。
高価格帯から低価格帯までを組み替える構想
Bloombergは、UltraとHermèsを超える高価格帯、SEより安価な方向も検討対象だと伝えた。事実なら、Appleは一つの外観を更新するより、用途や価格に応じてApple Watch周辺の製品群を広げる計画を考えていることになる。画面付きの腕時計と、画面を持たない健康アクセサリーでは、必要な部品と使われ方が異なる。価格帯が増えれば、どの機能をどの製品に割り当てるかも決めなければならない。
現行の上位モデルは、すでに機能の積み方で差を作っている。Ultra 3は長い電池駆動と衛星通信を掲げる一方、Series 11はより薄いケースで睡眠スコアや5Gを前に出す。ここに新しい価格帯を加えるなら、ケース素材や表示の大きさだけで差を作るのか、センサー、通信、電池のどこで機能差を設けるのかが見えてくる。
この構想は、健康データを扱うソフトウェアともつながる。Bloombergは、新しいAI版Siriと高度な健康トラッキングに合わせ、Eddy Cueの下でHealthアプリを大幅に刷新する長期計画があると伝えた。AppleのwatchOS 27向け資料にはApple Intelligence、Foundation Models、HealthKitが並び、Foundation Modelsを概要表示、ワークアウトのフィードバック、スマートリプライに使う例が載る。Healthアプリ刷新と、開発基盤で示された機能がどの製品にどう分かれるかは、現時点でAppleから示されていない。
健康データを増やすほど、利用者が理解できる形で返す仕組みも必要になる。時計画面で即座に確認する情報と、iPhoneのHealthアプリに集約して期間ごとの変化を見る情報では、表示すべき内容が違う。AI版Siriを含むソフトウェアが、日々の要約をどこで作り、どのデバイスに表示するのかは、画面の有無と同じくらい製品の性格を決める。
数年先の候補と、目先の更新は分けて見る
今回の再設計候補は、次のApple Watchに円形画面や画面なし端末が載るという話ではない。Bloombergは、計画は固まっておらず、実現しても数年先になると伝えた。Bloombergによると、2026年秋のSeries 12とUltra 4は大幅なデザイン変更を伴わず、チップ性能や健康・フィットネス機能の更新が中心になる見通しだ。目先の反復更新と、数年先の再設計候補は分けて見る必要がある。
確認すべきなのは、まず出荷仕様である。Appleが新しいサイズや表示形状を発表した場合、既存の文字盤とアプリがどこまで対応するか、バンドの扱いが変わるか、表示領域と電池時間のどちらを優先するかが具体的に見えてくる。Ultra 3の最大42時間やSeries 11の最大24時間はAppleの試験条件に基づく公称値であり、将来モデルとの実使用時間を先回りして比べる材料にはならない。
画面なしの端末が姿を現すなら、センサーの数より先に、どのデータをどの頻度で取り、どこで解釈して見せるのかを見たい。Apple Watchの再設計は、手首の表示を変える計画なのか、それとも健康データを集める入口を増やす計画なのか。その答えは、発表時の形状より、ソフトウェアとセンサーの役割分担に現れる。
