PS Audioの高級SACDトランスポートが新規生産を終え、NaimのUniti StarはCDを再生・取り込みできないStar Liteへと姿を変えた。両社の説明に共通するのは、製品に適した光学ドライブを調達できなくなったという事情だ。2026年に表面化したこの問題は、高級オーディオでも外部から買う部品の供給に製品の継続を左右されることを示している。ただし、CD用の駆動機構は今も供給が案内されており、代替の難しさを理解するには、ディスクを動かす機構と再生を担う制御基板、そしてSACDへの対応を分けて見る必要がある。
PS Audioは生産終了、NaimはCDを外す選択
PS Audioは公式製品ページで、PMG Signature SACD Transportの新規生産を2026年に終了したと明記している。トランスポートとは、ディスクから音楽データを読み取り、外部のDACへ渡す機器だ。DACがデジタル信号をアナログ音声へ変換する。
同社のPaul McGowan氏は1月30日、公式フォーラムで適合ドライブが入手できないと説明した。さらに、ディスクの駆動機構を自社開発することは同社の技術範囲を大きく超えると述べている。電子回路やソフトウェアに強みを持つメーカーでも、光学機構まで内製できるとは限らない。
調達の難しさは以前から見えていた。McGowan氏は2024年6月17日、D&M製ドライブについてのスレッドで、最後の発注を行う必要があり、機構の価格も2倍になったと書いた。保証対応と新規生産のため、大量購入で在庫を確保する方針だったという。ここで倍増したのは同社が調達する機構の価格であり、CDプレーヤー全体の価格ではない。
Naimでは、2026年2月26日の段階ではまだ「生産一時停止」だった。公式フォーラムを管理するRichard Dane氏は、Naimからの連絡を受けたうえで、代替ドライブの適合や、より広範な再設計を検討していると説明した。その後、8月26日にはStar LiteがCD再生・取り込み機構を外した構成になったと述べ、Starに適したCDドライブを調達できなくなったことが変更の理由だとしている。
つまり、一方はディスク再生専用機の生産を終え、もう一方は複合機からディスク機能を外した。Naimが使っていた供給元は確認できておらず、両社が同じ部品を失ったと見ることはできない。
代替ドライブへの変更が再設計になる理由
光学ドライブを使う製品には、ディスクを出し入れするローダーや、レーザー光で情報を読む光学ピックアップがある。それらを動かす制御系も必要だ。部品メーカーSUOS-HiFiの開発キットは、ローダーにサーボ基板とインターフェース基板を組み合わせ、フル版では操作基板やキーも追加する。機構を買えば、そのまま完成品に差し込めるという構成ではない。
SUOSのCD-84/CD-88仕様書を見ると、基板にはサーボ制御や読み出したデータを処理する回路、マイコンが載る。製品側はコマンドを送り、戻ってきた情報を表示に合わせて処理する。したがって別系統の部品へ移る場合、寸法や取り付け方に加え、製品側の制御ソフトとの整合も確かめなければならない。Naimが検討していた「再設計」は、こうした組み合わせの問題として理解できる。
PS Audioには、実際に機構を変えて製品を出し直した前例がある。日本の代理店・完実電気は2020年11月のPerfectWave SACDの告知で、従来のDirectStream Memory Playerがドライブ機構の供給問題で生産を終えたと説明していた。顧客の要望を受け、機構を一新してディスク再生機の発売を再開するという経緯だった。調達先を変える作業は、新製品への移行にまで及びうる。
背景には、専門オーディオ市場より大きな量産需要の変化もある。dCSのAndrewS氏は2025年5月、音楽CDの大衆市場と、ソフトウェアを配布するPC市場がかつて機構の量産規模を支えていたと説明した。その規模に比べ、愛好家向けの専門市場は極めて小さいという。高価格の完成品を作れることと、その内部部品の量産を維持できることは、別の条件なのである。
CD用の部品があっても、SACD機を置き換えられない
SUOSはスロット式ローダー「JPSL-33」の製品ページで量産対応を案内している。ところが、同社FAQは、光学ピックアップが理論上SACDに対応できても、同社のサーボ基板はSACDに対応しないと明記する。
SUOSが量産対応と案内するCD機構でも、同社のサーボ基板ではSACD層を再生できない。
部品の供給状況と再生機能を、メーカーの公開情報で照合すると違いが見える。
| 確認する段階 | 公開資料の記載 | そこから分かること |
|---|---|---|
| ローダーの供給 | SUOSのJPSL-33は量産対応と案内 | CD用機構の供給が一律に消えたわけではない |
| 制御基板の機能 | SUOSのFAQは自社サーボ基板のSACD非対応を明記 | 光学部品の能力だけではSACD再生の可否は決まらない |
| 実際に再生する層 | CD-84/CD-88仕様書はハイブリッドSACDの「CD層」に対応 | ディスクを再生できても、SACD層を読んでいるとは限らない |
| 完成品が提供する機能 | PS AudioのPMGはSACDのDSD層をI²S経由で同社DACへ出力 | CD再生系への置き換えでは、同じ機能を維持できない |
表は2026年9月21日に確認した上記のSUOS製品ページとFAQ、2020年6月版仕様書の13ページ「4.1 Media」、PMGの公式仕様を対照したものだ。部品間の互換性を実機で試した結果ではなく、量産対応という表示も即納や長期供給の保証ではない。
ハイブリッドSACDのCD層を読めることと、SACD層の音声を取り出せることには、はっきりした差がある。PMGのようにSACDのDSD信号を外部DACへ送る機能を持つ製品では、その経路まで維持する必要がある。ディスクが回り、音が出るだけでは、同等の代替にならない。
SUOSの部品がNaimやPS Audioの代替候補だったと確認できたわけではない。ただ、この対照は「CD用の部品が売られているなら使えばよい」という疑問への具体的な答えになる。必要なのは、製品が約束した再生機能を満たす部品の組み合わせだ。
生産終了後を支えるのは、修理に回せる在庫
dCSは2024年7月26日、D&M機構を使うRossini TransportとVivaldi Transport IIについて、新規生産と継続的なサービス対応に必要な在庫を確保していると説明した。部品の供給方針が変わっても、確保済みの在庫によって完成品の生産や修理を続ける余地はある。ただし、この説明は当時のもので、現在の在庫数量や修理可能な年数まで示すものではない。
部品が残ることと、開発や保守が続くことにも差がある。SUOSのFAQによると、旧基板CD-80は既存機向けに供給を続ける一方、コードの保守は終了し、新規開発にはCD-88を推奨している。「入手できる」という情報だけで長期利用を判断すると、こうした条件を見落とす。
所有者にとっては、自分の機種の故障にどの部品が必要で、メーカーや代理店が交換に対応できるかが実際の判断材料になる。買い替えを考える場合も、聴きたいのが通常のCDかSACD層か、外部DACへの出力まで必要かで、候補は変わる。生産終了という表示だけで修理不能と決めつけることも、修理在庫があるとの過去の説明だけで将来まで安心することもできない。
McGowan氏は1月の説明で、2027年に新しいトランスポートを出せるよう試みる意向も示した。ただしPMGではなく、Stellar系になる可能性があるという段階で、発売の確約ではない。後継機が登場したときは、SACDを含む再生範囲と保守条件がどう示されるかを確かめたい。それが手持ちのディスクと再生環境に合えば、部品の世代交代を経ても音楽コレクションを聴き続けられる。



