市場調査会社TrendForceは2026年11月4日、主流DDR4チップの平均スポット価格が11月3日までの週に0.09%下落したと報告した。対象となるDDR4 1Gx8 3200MT/sの価格は、10月28日の46.86ドルから11月3日には46.82ドルへ下がったものの、買い手はさらなる値下がりを見込んで購入を控えている。

ただし、スポット価格は短期の現物取引で形成される価格であり、メーカーと顧客が交渉して決める契約価格とは異なる。また、メーカーの提示価格も実際の契約価格とは限らず、チップの相場が完成品のメモリモジュールやSSDの店頭価格にそのまま反映されるわけではない。今回の小幅な反落がメモリ市場全体の価格動向を判断する材料になるのか、供給と需要の両面から見る必要がある。

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DDR4が値下がりしても買い手が購入を控える理由

TrendForceの11月4日付週次レポートによると、主流DDR4の平均スポット価格は前週から0.04ドル下落し、下落率は0.09%となった。対象の「1Gx8」は8ギガビット(Gb)のメモリチップ構成を表しており、8ギガバイト(GB)の完成メモリモジュールを意味するものではない。

買い手が購入を控えている背景には、依然として高いスポット価格がある。TrendForceによれば、DDR4の最終需要が低迷する一方、スポット価格はメーカーの提示価格を上回っている。買い手は価格がさらに下がる余地があると判断し、調達を先送りしているため、取引量も大幅に減少した。

ただし、スポット価格とメーカーの提示価格の具体的な差額や比率、実際の成約数量は公表されていない。今回の0.09%という下落率も特定のDDR4チップを対象とする指標であり、DDR4製品全体の価格動向を表すものではない。小幅な値下がりだけで、買い手が求める価格水準に近づいたとは判断できない。

DDR5では納期を優先、DRAM市場では在庫の偏りも

DDR5では、DDR4とは異なる動きが見られる。TrendForceによると、一部の買い手は納期の制約から、調達時の目標価格を引き上げた。ただし、部品価格の上昇は利益率を圧迫するため、高値での購入には慎重な姿勢を崩していない。目標価格の引き上げは、必ずしもDDR5市場全体の価格上昇や取引量の増加を意味するものではない。

こうした調達行動の違いを理解するには、在庫の保有状況にも注目する必要がある。TrendForceの10月28日公開の調査要旨では、DRAM供給者の在庫が極めて低い水準にある一方、PCメーカーの在庫は増加していると報告された。さらに、モジュールメーカーでもチップのグレードや用途によって調達方針が異なる。

主体・対象 在庫・調達の状況
DRAM供給者 AI需要と米国のクラウドサービス事業者による追加注文を背景に、在庫が極めて低い
PCメーカー PC出荷の減少に伴って在庫が増加し、2027年の購入量を削減
モジュールメーカー(格下げチップ) 在庫が増加し、購入を縮小
モジュールメーカー(サーバー向け正規グレード) 積極的な調達を継続

供給者の在庫が少なければ、価格交渉では供給側が有利になる。一方、PCメーカーは手元の在庫が増えているため、追加購入を抑えている。モジュールメーカーも、格下げチップの購入を減らしながら、サーバー向けの正規グレードは積極的に確保している。

つまり、PC需要の低迷とDRAM供給者の強い価格交渉力は、必ずしも矛盾しない。用途や在庫の保有者が異なるため、PCメーカーの在庫増加をもってDRAM市場全体が供給過剰に転じたと判断することはできない。

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PC向けDRAMの契約価格を支える供給削減

PC向けDRAMの契約価格も、需要の低迷だけでは説明できない状況にある。TrendForceの10月30日公開の調査要旨によると、2026年第4四半期のPC向けDRAM契約価格は上昇を続けているものの、上昇ペースは前四半期より鈍化している。買い手はメーカーの高い提示価格に抵抗しており、TrendForceは多くの契約が11月に小幅な値上がりを伴う水準でまとまると予想した。ただし、これは10月30日時点の見通しであり、実際に11月の契約がその条件で成立したことを意味しない。

契約価格の上昇を支える要因の一つが、PC向けDRAMの供給削減だ。ノートPCの出荷が低迷し、顧客の在庫が増加する一方、DRAMメーカーは生産能力をサーバー向けに振り向け、PC向けの供給を絞っている。このためTrendForceは、PC向けDRAMの供給不足が続くと見込んでいる。需要が弱くても供給がそれ以上に制限されれば、価格が下がるとは限らない。

さらに、TrendForceによると、DRAM供給者は2027年のPC向けDRAM供給量を前年より減らす計画だ。ただし、公開された調査要旨には具体的な減少率が示されておらず、計画どおりに供給が削減されるかも確定していない。少なくとも現時点では、DDR4のスポット価格がわずかに下がったことを、PC向けDRAMの供給不足解消や契約価格の下落を示す兆候とみなすのは早い。

NANDの下落ペースは鈍化、独身の日セール後の需要が焦点に

NANDフラッシュ市場では、価格の下落ペースが鈍化している。TrendForceの10月28日付レポートと11月4日付レポートによると、512Gb TLC NANDウェハーの平均スポット提示価格は、10月26日の16.883ドルから11月2日には16.152ドルへ下落した。下落幅は0.731ドル、下落率は約4.33%で、前週の9.19%から縮小している。ただし、下落率が小さくなっただけで、価格そのものは引き続き下がっている。

観測日 平均スポット提示価格 週次下落率
2026年10月26日 16.883ドル 9.19%
2026年11月2日 16.152ドル 4.33%

※同一の512Gb TLC NANDウェハーを比較。10月26日の9.19%はその前週からの下落率。11月2日の下落率は16.152÷16.883−1≒−4.33%となり、TrendForceの公表値と一致する。

これらはウェハーの平均スポット提示価格であり、実際の成約価格や完成品SSDの店頭価格とは異なる。下落ペースが鈍化したことだけでは、NANDの需要が回復に向かっているとは判断できない。

中国では11月11日前後に大型商戦「独身の日セール」を迎える。TrendForceの前週の報告によると、一部の中国スマートフォンブランドは9月に製品価格を引き上げたものの、商戦を前に在庫処分を目的とした値下げを進めていた。ただし、市場参加者はインフレや地政学的・経済的な不透明感に加え、買い替え需要が上半期に前倒しされたことから、値引きによる販売促進の効果は限られるとみている。

今後のメモリ市場を判断するうえでは、DRAMのスポット取引量が回復するか、11月の契約価格がどの水準で妥結するかが重要になる。NANDについても、独身の日セールでの販売動向に加え、商戦終了後に補充発注が増えるかが焦点だ。短期的な価格変動だけでなく、実際の取引量と供給動向を合わせて確認する必要がある。