E Inkは2026年10月15日、カラー電子ペーパーの新世代「Kaleido 4」を発表した。色域体積を前世代の2倍に広げ、白色反射率は15%、コントラストは50%改善したとする。初搭載するのは、中国Hanvon Technologyの電子ノート「M10C II」だ。カラーのPDFや図面を読む用途が広がるなか、色の鮮やかさに加えて、文字の読みやすさやページを動かす速さにも手を入れた。ただし、公表された改善率には表示技術そのものの数値と端末全体での数値が混在し、読書体験への効き方は分けて見る必要がある。
色域体積2倍で変わるもの
Kaleido 4の光学面の改善は、色域体積、白色反射率、コントラストという異なる指標で示された。E Inkは、色域体積が前世代比で2倍の「40K超」になると説明している。これは再現できる色の範囲を表す指標であり、「4万色を表示する」という色数の発表とは区別したい。
仕組みの土台は、白黒の電子ペーパーとカラーフィルターの組み合わせにある。E Inkの技術説明によると、Kaleidoは、画素を駆動するTFTバックプレーンとインク層を備える。その上にカラーフィルター層と保護シートを重ねる構成だ。白黒の表示にフィルターを重ねて色を作るため、インク層の細かさとカラー表示の細かさを同じ数値で読むことはできない。
実際、2022年4月7日に発表されたKaleido 3は、白黒300ppiに対してカラー150ppi、表示色数は4,096色だった。ppiは1インチ当たりの画素密度を示す。色域が広がること、色の段階が増えること、輪郭が細かくなることは、それぞれ別の変化だ。
| 評価する対象 | Kaleido 4の公表内容 | 読み取れる範囲 |
|---|---|---|
| 色の再現範囲 | 色域体積が前世代の2倍、40K超 | 表示色数の増加率には換算できない |
| 白の見え方 | 白色反射率15%改善 | 元の反射率や測定条件は発表に記載なし |
| 明暗の差 | コントラスト50%改善 | 絶対的なコントラスト比は未記載 |
| 動きの表示 | 新アルゴリズムで最大18fpsの動画再生 | 画質や残像、消費電力との兼ね合いは要検証 |
表はE Inkの10月15日発表を、評価対象ごとに分類したものだ。いずれもメーカーの公表値で、独立した実機測定ではない。色域体積の色空間や単位、光学特性の試験条件までは示されていないため、他方式の画面や紙の印刷物との優劣をこの数字から決めることは難しい。
それでも、白の反射と明暗の差を色域と並べた点は、用途を考えるうえで意味がある。図面やデータ表では、色分けが見えても細い文字が読みにくければ情報を追えない。E Inkが挙げる利用場面も、電子書籍からカラーPDF、プレゼンテーション資料、教育用の図版へと広がっている。今回の更新は、色の表現と文書の可読性を一緒に改善しようとする設計である。
27%高速化を支えるのは端末全体の設計

M10C IIでは、ページめくりとスクロールが27%速くなるとE Inkは説明する。新しい酸化物TFTバックプレーンがより高い駆動電圧と高速な画面更新に対応し、Hanvon独自の「Enhanced Pressure Floating」技術とタイミングコントローラー「T2000」を組み合わせる構成だ。フロントライトも再設計し、より自然な色の再現を目指したという。
E Inkの2026年10月15日発表にある27%高速化は、Kaleido 4とHanvon独自技術、T2000を組み合わせたM10C IIの値であり、パネル単体の改善率とは切り分けて読む必要がある。
この区別は、T2000の来歴を見るといっそう明確になる。E InkとHimaxがT2000を共同発表したのは2024年7月31日で、当時からKaleido 3、Gallery 3、Spectra 6への対応を説明していた。今回のKaleido 4と同時に初めて登場した制御ICではなく、既存の表示制御技術を新しいパネルと端末設計に組み込んでいる。
共同発表の説明では、T2000は画面を駆動する電圧のタイミングと持続時間を制御し、温度に応じた補償も担う。つまり、画面を速く動かすには、パネルが対応できる電圧に加え、電圧をいつ、どれだけの時間かけるかという制御が関わる。酸化物TFTの採用とコントローラーの役割をつなぐと、電子ペーパーの操作感が端末ごとの作り込みに左右される理由が見えてくる。
27%という値の比較相手や測定条件は、今回の発表では明記されていない。したがって、別メーカーがKaleido 4を採用した際に同じ改善幅を得られるかは個別の確認が必要だ。T2000や酸化物TFTそれぞれの寄与分も分離されておらず、待ち時間が一律に27%減ると置き換えることも避けたい。
カラー300ppiの報道と、実機で確かめたいこと
カラー表示の精細さについては、Good e-ReaderがE Inkに確認したとして、Kaleido 4は300ppiになると報じている。旧世代の150ppiからの変化として注目できる一方、E Inkの10月15日付発表には解像度も総表示色数も記載されていない。300ppiは同媒体の独自取材として受け止め、端末の正式な仕様表と突き合わせたい情報だ。
動画も、Kaleido 4で初めて可能になった機能というわけではない。Kaleido 3の2022年発表には、すでに動画とアニメーションへの対応が明記されている。今回加わったのは、新しいアルゴリズムによって最大18fpsで再生できるという具体的な性能値である。最大18fpsという値から、同時に保てる色や残像の程度、動画再生時の電池持ちまでは判断できない。
HanvonがM10C IIで狙うのは、こうした表示の更新を仕事の道具へつなげることだ。E Inkの発表によると、OCRや音声、AIを使う業務アプリに加え、クラウドの書庫同期にも対応する。外部アプリの表示サイズ調整とフォント描画も最適化し、文書を開いて読むまでの使い勝手に手を入れた。
書き込みには、電池不要の無線デジタルペンを使い、筆圧を8,192段階で検知する。微細な加工を施した強化ガラスで映り込みや視差を抑え、紙に近い筆記抵抗を持たせるという。画面の色を増やすだけでなく、読む、書く、記録するといった一連の作業を受け持たせる方向である。
E Ink会長兼CEOのJohnson Lee氏は、発表で「カラー電子ペーパーには、単に色を出す以上のものが求められる」と述べた。もっとも、M10C IIの価格や発売日、日本での提供予定は同発表に含まれていない。ほかのメーカーがいつ、どの仕様で採用するかも、個別の製品発表を待つ段階だ。
実機の評価では、同じカラーPDFで色分けした凡例と細かい文字を読み、書き込みながらページを移動したときの表示を確かめたい。照明条件やフロントライトの設定をそろえれば、光学特性の改善と操作速度の改善を別々に比べられる。その両方が日常の文書作業で確かめられてこそ、Kaleido 4はカラー資料を読む電子ノートの選択肢を広げることになる。



