Dell TechnologiesのCEO、Michael Dell氏が、2027年にはメモリ不足がさらに深刻化するとの見通しを示した。10月16日に公開された米紙The Wall Street Journal(WSJ)のインタビューで、半導体工場の建設には約4年かかり、AI需要の拡大に供給が追いつかないと説明している。Dellは950億ドルに上るAIサーバーの受注残を抱える一方、メモリを供給するMicronも増産を進めながら、需給が均衡を取り戻す時期を見通せていない。積み上がった受注を売上に変えるには、必要な種類のメモリを必要な時期に確保することが不可欠だ。在庫を最小限に抑えるDellの生産方式と、数年先の供給を確保するためのメモリメーカーとの長期契約が、AI需要の急拡大によって新たな局面を迎えている。
950億ドルの受注残と、164億ドルの四半期売上
Dellが9月1日に公表した2027会計年度第2四半期の決算説明によると、AI関連の受注額は609億ドル、AIサーバーの売上高は164億ドル、四半期末のAI関連受注残は950億ドルに達した。AIインフラへの投資が急拡大する一方、集まった注文を実際の製品として納入し、売上に計上するまでには大きな時間差が生じている。
950億ドルの受注残を当四半期のAIサーバー売上高164億ドルで単純に割ると、約5.8四半期分の売上に相当する。ただし、これは受注残と売上高の規模を比較した計算にすぎず、すべての注文を納入するまでに約5.8四半期かかるという意味ではない。実際の売上計上ペースは、部品の供給状況や製品構成によって変わり、その間にも新たな受注が加わる。また、950億ドルの受注残がすべてメモリ不足によって納入待ちになっていると判断することもできない。
受注の増加には、顧客が発注する時期の変化も影響している。最高執行責任者(COO)のJeff Clarke氏は同じ決算説明で、将来の供給を確保しようとする顧客が、以前よりも先の需要まで見越して注文するようになったと説明した。大企業の中には、製品を供給できるのであれば予定より早く受け取りたいという顧客もいる。一方、予算が固定されている公共部門や中小企業では、価格が上昇すると、その予算で購入できる数量を減らさざるを得ない。つまり、受注残の増加にはAI需要そのものの拡大だけでなく、将来の供給不足を懸念して調達を前倒しする動きも反映されている。供給不足によって納入が遅れる一方、顧客は将来の注文を早めており、受注残だけでは実際の需要と納入時期の関係を正確に捉えられない。
HBMの供給不足がAIサーバー全体に影響する理由
Michael Dell氏はWSJのインタビューで、メモリの供給制約が緩和される時期について問われ、「現時点で見えている状況に基づけば、2027年には悪化すると思う」との見通しを示した。これは同氏による将来予測であり、半導体全般の供給状況が一律に悪化するという意味ではない。問題となっているのは、AIサーバーの需要拡大に対し、必要な種類のメモリを十分な数量で確保できるかという点だ。
AIサーバーでは、GPUの近くに搭載するHBM(広帯域メモリ)と、CPU側の主記憶として使うDDR系メモリが、それぞれ異なる役割を担っている。HBMもDRAMの一種だが、一般的なサーバー向けDDRメモリを大量に搭載すれば、そのままHBMの代わりになるわけではない。両者は接続方式やメモリ帯域、実装方法が異なり、システムはそれぞれの特性を前提に設計されている。そのため、AIサーバーを完成させるには、GPUだけでなく、設計に合ったHBMやDDRメモリを必要な数量だけ確保しなければならない。
MicronのAIエージェントとHBMに関する技術白書では、NVIDIA Blackwell GPUと192GBのHBM3e、2TBのDDR5システムメモリを組み合わせた実験環境が紹介されている。これは、GPU側の高速メモリとホスト側の大容量メモリが、それぞれ異なる役割を果たしている具体例だ。同社はまた、AI推論で同時に処理する要求数が増えると、処理途中の情報を保持するKVキャッシュの容量が性能上の制約になることも実験で確認している。すべてのAI処理で同じ結果になるとは限らないが、GPUの演算性能だけでシステム全体の処理能力が決まるわけではなく、メモリの容量や帯域も重要な要素となることが分かる。
Michael Dell氏は、AIシステムを顧客に届けるには、GPUやメモリに加えて、液冷設備、ネットワーク、ストレージなどを組み合わせ、導入先で稼働させる工程が必要だとも説明している。高性能なGPUを調達できても、必要なメモリが不足すれば、完成したAIサーバーとして納入できない。需要が急速に拡大している状況では、一部の部品の供給不足がシステム全体の納入を遅らせ、メーカーの売上成長を制約する要因となる。
Micronは2027年から増産、それでも需給均衡は見通せず
メモリメーカー側も供給能力の拡大を急いでいるが、需要の伸びに追いつけるかは不透明だ。Micronは9月30日の決算説明で、暦年2027年と2028年のメモリ・ストレージ市場について、2026年よりも需給が逼迫するとの見通しを示した。同時に、米国やシンガポールで進めている生産能力の拡張計画についても最新の予定を公表している。増産は2027年から始まるものの、供給が需要に追いつき、市場が均衡を取り戻す時期は示されていない。
Micronが9月30日に公開した決算説明資料の2〜3ページによると、主な生産拠点の稼働開始予定は次の通りだ。各拠点は担当する製造工程が異なり、生産開始時期にも数年の差がある。
| 拠点・計画 | 初期生産の予定 | 対象となる工程 |
|---|---|---|
| シンガポールのHBM先端パッケージング施設 | 2027年初め | HBMの先端パッケージング工程 |
| 米アイダホ州のID1工場 | 2027年半ば | ウエハー生産 |
| 米アイダホ州のID2工場 | 2028年後半 | ウエハー生産 |
| 米ニューヨーク州の最初の工場 | 2030年 | ウエハー生産 |
これらはいずれもMicronが公表した計画であり、記載された時期から一定量の完成品を出荷できることが保証されているわけではない。また、HBMを完成させる先端パッケージング工程と、DRAMの基となるウエハーを製造する工程では役割が異なるため、それぞれの能力を単純に合算することもできない。Micronは、新たなDRAM・NAND工場で初期生産を開始してから、供給能力が本格的に拡大するまでには数四半期を要し、段階的に生産量を増やしていくと説明している。
したがって、2029年や2030年までメモリの増産が一切進まないわけではない。2027年から新施設での生産が始まり、供給量は徐々に増えていく見込みだ。それでも供給不足の解消が難しいとされるのは、AI向けを中心に需要も増え続けており、新工場が稼働しても直ちに最大の生産能力を発揮できるわけではないためだ。増設計画が進むことと、市場全体の需給が均衡することは分けて考える必要がある。
Micronは同じ決算説明資料の5ページで、DRAM向けのクリーンルーム増設計画を含めても、旺盛な需要を背景に需給均衡の回復時期を見通せないと説明している。Michael Dell氏も、AIエージェントの普及によって技術の利用形態が変化し、メモリ需要が供給能力を上回る速度で拡大していると指摘した。今後重要になるのは、新工場の建設がいつ始まるかだけではない。実際に出荷できるメモリ製品がどの程度の速度で増え、その供給の伸びが需要の増加を上回るかが、メモリ不足解消の鍵となる。
Dellの受注生産方式が守る資金効率と、残る納期の課題
メモリの価格上昇と供給不足が続く中、Dellは従来の受注生産を中心とした事業運営を維持しようとしている。Michael Dell氏はWSJのインタビューで、顧客の需要に応じて製品を組み立て、在庫を最小限に抑える方式を可能な限り続けており、現金転換サイクルも依然としてマイナスを維持していると説明した。部品価格が上昇するほど、売上につながらない在庫を抱えることで資金が滞留する負担は大きくなる。必要な製品を受注に応じて生産するDellの方式には、こうした資金負担を抑えられるという強みがある。
現金転換サイクルは、在庫を保有する日数と売掛金を回収するまでの日数を合計し、仕入れ代金を支払うまでの日数を差し引いた指標だ。この値がマイナスであれば、平均的には部材の仕入れ代金を支払う前に、顧客から売上代金を回収できていることを意味する。ただし、現金転換サイクルがマイナスだからといって、すべてのAIサーバーについて製造前に代金を全額受け取っているわけではない。あくまで事業全体の運転資金の効率を示す指標である。
一方、在庫管理や資金回収の効率が優れていても、不足しているメモリを確保できるわけではない。過剰在庫による損失を避けることと、必要な部品を調達して納期を守ることは、別々の課題だ。また、メモリなどの部品価格上昇を販売価格に十分反映できなければ、利益率が圧迫される可能性もある。Dellの受注生産方式は、需要変動による在庫リスクを抑えるうえでは有効でも、製品の納入や収益性を無条件に保証するものではない。
こうした状況を背景に、供給側のメモリメーカーでは、将来の供給数量を確保する代わりに、顧客にも長期的な購入義務や資金面での負担を求める契約が広がっている。Micronは9月30日の決算説明で、製品の引き取りと支払い義務を伴う複数年契約を26件締結したことを明らかにした。顧客による資金面での約束は合計320億ドルに達しており、その大半は現金の預託によるものだという。Micronにとっては、将来の需要を見通しながら生産能力の拡張を進めやすくなり、顧客にとっては必要なメモリの供給を確保しやすくなる仕組みだ。
ただし、これらの契約がDell向けであるとは公表されていない。それでも、長期的なメモリ供給の確保に預託金や製品の引き取り義務が伴っていることは、AI需要の拡大によって半導体の調達環境が変化していることを示している。従来のように必要な時期に必要な数量を購入するだけではなく、数年先の需要を予測し、どこまでの数量について購入責任を負えるかが問われるようになっている。Micronは2027暦年のHBM供給量の大半について、すでに契約を締結しているとも説明しており、その価格は前年比で大幅に上昇する見通しだ。
Dellが抱える950億ドルのAIサーバー受注残を持続的な成長につなげるには、製品を予定通り納入して売上に計上するだけでなく、部品コストの上昇に対応しながら利益を確保する必要がある。顧客側も、求めるメモリ構成の製品をいつ受け取れるのか、供給を予約するためにどのような資金負担や購入義務が生じるのかを見極めなければならない。2027年に予定されるメモリの増産が実際の供給拡大につながり、旺盛なAI需要にどこまで対応できるかが、今後の焦点となる。受注の拡大だけでなく、必要な部品を確保し、AIインフラを注文から実際の稼働へと進められるかが、DellをはじめとするAIサーバーメーカーの成長を左右することになる。
