DDR4の8Gb DRAMチップの契約価格が、わずか3カ月で24%上昇した。Barclaysの価格分析を紹介した10月12日付のWccftechの報道によると、同期間のDDR5の比較対象品種は20%の上昇にとどまり、DDR4の値上がりが上回った。さらに、公開されている価格データには、同じ容量のDDR4メモリモジュールがDDR5より高い例も見られる。「古い規格なら安く使い続けられる」という常識は、供給が縮小する市場では通用しなくなりつつある。メモリ市場全体の供給不足とDDR4特有の供給事情を切り分けることが、PCの増設や買い替えを判断するうえで重要になっている。
8GB SO-DIMMではDDR4がDDR5より高い
Barclaysの分析によると、DDR4の8Gb品の契約価格は前月比4%、直近3カ月で24%上昇した。一方、DDR5の比較対象品種はそれぞれ3%、20%の上昇だった。
ここでいうDDR4の「8Gb」は、DRAMチップの記憶容量をギガビットで表したもので、後述する「8GB」のメモリモジュールとは異なる。また、DDR4とDDR5では比較対象の品種が異なるため、チップ容量などの条件を完全にそろえた比較ではない。
契約価格は、DRAMメーカーと大口顧客との間で取り決めるチップの取引価格であり、短期の現物取引で形成されるスポット価格や、消費者が販売店で購入するメモリ製品の価格とは区別する必要がある。Barclaysの元レポートについては、公開情報から詳しい集計条件を確認できないため、今回の数字を10月全体の確定値や、日本の店頭価格が一律に上昇したことを示すものと受け取るべきではない。
DDR4とDDR5の価格が逆転する現象は、TrendForceが公開しているDRAMの契約価格データからも確認できる。同社が2026年8月31日に更新した「DRAM Contract Price(2H Aug)」によると、ノートPCなどに使われる小型メモリモジュール「SO-DIMM」の8GB品では、8月後半の平均契約価格が次のようになっている。
| 対象 | 平均契約価格 |
|---|---|
| DDR4 8GB SO-DIMM | 142ドル |
| DDR5 8GB SO-DIMM | 133ドル |
※2026年8月後半の1モジュール当たりの平均契約価格。
DDR5を基準に計算すると、DDR4は約6.8%高い。計算式は「(142÷133−1)×100」だ。容量や形状、集計期間、取引形態をそろえても、旧規格の方が安いとは限らない。ただし、メーカーや動作速度まで一致させた製品比較ではない点には注意が必要だ。
一方、同じ公開ページに掲載されている10月5日のスポット平均価格を見ると、デスクトップPC向けの16GBモジュール「UDIMM」ではDDR4の方がDDR5より安い。こちらは先ほどの8GB SO-DIMMとは容量も形状も取引市場も異なるため、単純には比較できない。
つまり、DDR4の値上がりがDDR5より速いことと、すべてのDDR4製品がDDR5より高いことは別の話だ。 メモリの価格を比較する際には、規格だけでなく、容量や製品形態、取引市場まで確認する必要がある。
DDR4の生産継続は、PC向け供給増を意味しない
DDR4の価格上昇には、新規格への移行に伴って供給が縮小する一方、旧規格を必要とする機器の需要が残り続けているという事情がある。
TrendForceは7月3日付の市場調査で、大手DRAMメーカーによる消費者向け市場からの撤退や減産が続いており、台湾メーカーによるDDR4の増産だけでは供給減を完全に補えないと指摘した。テレビ向けの需要が弱い一方、ネットワーク機器や車載機器ではDDR4の需要が残っている。さらに、従来の供給元から別のメーカーへ発注先を切り替える動きもあり、限られた供給能力に注文が集中している。
MicronがDDR4の生産を続けていることも、PC向けメモリの供給が増えることを意味しない。5月26日付のTrendForceの調査によると、米バージニア州のFab 6で製造されるLPDDR4とDDR4は、主に車載機器や産業機器、ネットワーク機器などに供給される。医療機器や防衛・航空宇宙分野も対象であり、長期間にわたって同じ部品を使い続ける機器向けの供給拠点と位置付けられている。
MicronはFab 6での生産を増やす計画だが、その一方で台湾の拠点では対応する製品の生産を減らす。TrendForceは、Micron全体でLPDDR4とDDR4の生産能力を増やす計画ではないと指摘している。
つまり、ある工場の増産が報じられても、それだけで市場全体の供給が増えるとは限らない。どの製品を、どの工場で、どの顧客向けに生産するのかが重要になる。PC向けの供給回復を判断するには、工場間での生産移管も含めて確認する必要がある。
買い手にとっては、DDR5への移行が簡単ではないことも問題だ。Kingstonの技術解説にあるように、DDR4とDDR5は電気的な仕様や信号方式が異なり、モジュールの切り欠きの位置も違う。DDR4対応のマザーボードにDDR5を挿して代用することはできない。
そのため、DDR4の供給が減って価格が上がっても、既存のPCや産業機器で使う需要がすぐにDDR5へ移るわけではない。供給の縮小と根強い需要が重なることで、旧規格にもかかわらず価格が高止まりしやすい状況が生まれている。
AI向けメモリの容量削減で、供給不足は解消するのか
AI向けメモリでも、搭載容量を減らすことで供給不足に対応しようとする動きが出ている。
TrendForceは9月29日付のHBM市場調査で、GPUや専用AIチップのメーカーが、従来の12層構成に代えて8層構成のHBMを採用することを検討していると報告した。
HBMはDRAMのダイを垂直に積み重ねた広帯域メモリであり、積層数を減らせば1スタック当たりに必要なDRAMの量も減る。GPU1基当たりのメモリ容量を抑えることで、限られたDRAMの供給量でも、より多くのGPUにHBMを搭載できるようになる。
ただし、容量を減らせばメモリの単価も下がるとは限らない。HBMの各スタックには基底となるベースダイが必要で、その費用はDRAMの積層数に比例して減るわけではない。積層数を減らすと、より少ない記憶容量でベースダイの費用を負担することになる。
このためTrendForceは、2027年の8層品について、1Gb当たりの価格が12層品より約10〜20%高くなると予測している。GPU1基当たりの部品費を抑えることと、メモリの容量単価を下げることは必ずしも一致しない。
また、限られた生産能力を取り合っているのはHBMだけではない。TrendForceによると、HBMと通常のDRAMは、先端製造工程やウェハーの生産能力を共有しており、生産配分を巡って競合する関係にある。
同社の9月30日付のDRAM市場調査では、複数の作業をこなすAIの利用拡大を背景に、汎用サーバー向けのメモリ需要も増加していると指摘された。メーカーは低容量のサーバー向けメモリモジュール「RDIMM」の生産比率を引き上げて対応しているものの、部品の調達や組み立て・検査工程にも制約があり、需要を十分に満たせていないという。
したがって、AIチップに搭載するメモリ容量が減ったからといって、PC向けメモリの供給に余裕が生まれるとは限らない。1基当たりの容量を減らしてGPUの出荷数を増やせば、DRAMの供給量は引き続き消費される。汎用サーバー向けの需要も拡大しており、空いた生産能力がDDR4に振り向けられる保証はない。
AI向けメモリの容量削減は、限られた供給量でより多くの製品を出荷するための対応策であり、DDR4の供給回復を示すものではない。
2028年まで続く供給不足、DDR4の増設とPC買い替えはどう判断するか
Micron自身も、DRAMの供給不足が短期間で解消するとは考えていない。
同社は9月30日付の決算説明資料で、暦年2027年と2028年のDRAM業界全体のビット出荷量が、それぞれ20%台前半の伸びを示しても、供給制約は続くとの見通しを示した。
ビット出荷量とは、出荷するチップの個数ではなく、記憶容量の合計を表す指標だ。メモリの総供給量が増えても、需要がそれ以上に伸びれば不足は解消しない。増産と供給不足は同時に起こり得る。
Micronの生産拡張計画では、米アイダホ州の新工場「ID1」が2027年半ば、「ID2」と日本の工場拡張分が2028年末に初期のウェハー生産を開始する予定だ。ただし、生産開始後すぐに大量出荷できるわけではなく、本格的な生産能力の立ち上げにはさらに数四半期を要する。
Micronは需給が均衡を取り戻す時期を見通せないとしており、「2028年も供給不足が続く」という予測から、「2029年には正常化する」と判断することはできない。そもそも、これらの工場計画は、PC向けDDR4モジュールの供給がいつ増えるかを示したものではない。
また、長期契約を結べば価格が固定されるというわけでもない。Micronの同資料によると、戦略的な顧客との契約に基づく見込み売上高の約4分の3には価格設定の枠組みが定められており、そのうち過半には価格の下限と上限が設けられている。一方、残る約4分の1は市場価格に応じて定期的に交渉する仕組みだ。
つまり、市場価格に連動する契約があるからといって、既存契約の価格上限や下限がすべて撤廃されたわけではない。供給を安定的に確保できるか、価格上昇の影響をどこまで抑えられるかは、契約条件によって異なる。
こうした長期的な供給不足の予測を、PCユーザーが一律の購入期限と考える必要はない。
すでにDDR4対応PCを使用しており、メモリ容量の不足が作業の支障になっている場合は、増設に必要な費用と、PCそのものを更新する費用を比較することになる。DDR5へ移行するには対応マザーボードが必要であり、現在のCPUがDDR5に対応していなければCPUも交換しなければならない。ただし、DDR4とDDR5の両方に対応するCPUもあるため、必ずしもCPUまで買い替える必要はない。
一方、新しくPCを組み立てる場合は、メモリ単体の価格差だけでなく、CPUやマザーボードを含めた総費用で比較することが重要だ。DDR4は古い規格だから安い、DDR5は新しい規格だから割高といった単純な判断はできない。必要なメモリ容量や、今後そのPCでどのような作業を何年間続けるかによって、最適な選択は変わってくる。
TrendForceは、2027年にはサーバー向けDRAMへの生産配分がさらに進み、PC向けの供給が減少する可能性も指摘している。
DDR4対応PCを長く使い続けたいなら、必要な容量のメモリモジュールを入手できるか、増設費用がPCの更新費用にどこまで近づいているかを確認することが重要になる。DRAM市場全体で増産が進んでも、その生産能力が旧規格にどれだけ振り向けられるかは別の問題だ。DDR4を安く使い続けられるかどうかは、メモリ市場全体の供給量だけでなく、DDR4そのものの供給動向に左右される。
