台湾のメモリモジュールメーカーTEAMGROUPは、2026年11月2日に開催した投資家向け説明会で、メモリの供給が最も逼迫する時期を2026年第4四半期から2027年第2四半期末と予測した。説明会を取材した台湾の経済メディア鉅亨網の報道によると、同社は新工場の建設によって全体の生産能力を約50%増やす計画も明らかにしている。
供給不足の長期化と生産能力の増強は、一見すると矛盾するように思える。しかし、TEAMGROUPが増強するのは、調達したメモリチップをモジュールなどの製品に組み立て、検査するための設備だ。上流メーカーが供給するチップの量や、そのチップがどの用途に割り当てられるかは別の問題となる。PC向けメモリの供給見通しを判断するには、この違いを理解する必要がある。
メモリ不足のピークは2027年第2四半期まで、正常化にはさらに時間
鉅亨網の彭昱文記者によると、TEAMGROUPは2026年第4四半期から2027年第2四半期末までが、メモリの供給が最も逼迫する時期になると予測している。ただし、これは需給が特に厳しくなる期間についての見通しであり、2027年第2四半期末に供給不足が解消するという意味ではない。
TEAMGROUPの投資家向け説明資料(19ページ)によると、メモリチップメーカーは生産能力を高帯域幅メモリ(HBM)や高性能DDR5に優先的に割り当てる一方、DDR4の減産を加速させている。HBMはAIアクセラレーターなどで使われる高帯域幅のメモリであり、従来のDDR4とは用途や需要構造が異なる。そのため、メモリ市場全体の生産能力が増えても、すべての製品で供給が改善するとは限らない。
特に影響を受けているのが、製品の供給期間が長い産業機器や通信機器の市場だ。TEAMGROUPは、こうした顧客の間でDDR4の欠品や価格上昇が発生していると説明する。既存機器がDDR4を必要とする一方、チップメーカーが生産を縮小すれば、DDR5などの新世代メモリが増産されても不足分を簡単には補えない。
また、鉅亨網によると、TEAMGROUPは一般PCやスマートフォン向けのメモリ供給が優先されにくくなっており、一部のPCメーカーが搭載メモリの仕様を引き下げていると説明した。同社は、消費者向けメモリモジュール市場が転換点を迎えるのは2028年後半になる可能性があるとも見ている。ただし、2027年第2四半期末という供給逼迫のピークと、2028年後半という消費者市場の転換時期は異なる見通しであり、いずれもPC価格の下落時期を示すものではない。
売上の約88%はDDR5、一方で在庫の約60%はDDR4
TEAMGROUPの事業構成からは、メモリ需要の変化に対応する同社の戦略が見えてくる。
説明会資料の12ページによると、全社売上高に占める企業向け事業(B2B)の割合は、2025年1〜9月の24.60%から2026年同期には64.60%へ上昇した。わずか1年間で40.00ポイントの増加となる。一方、消費者向け事業(B2C)の割合は75.40%から35.40%へ低下しており、売上構成が大きく変化している。
ただし、これらは売上金額に占める構成比であり、出荷数量や売上高そのものの増減率を表すものではない。B2Bの割合が増えたからといって、そのすべてがAIサーバー向けの需要によるものとは限らず、消費者向け製品の出荷数量が同じ割合で減少したとも判断できない。
さらに注目されるのが、DDR4とDDR5の売上・在庫構成の違いだ。説明会資料の13〜15ページでは、以下の数値が示されている。
| 指標 | DDR5 | DDR4 |
|---|---|---|
| 2026年1〜9月のDRAM売上金額に占める割合 | 87.93% | 11.61% |
| 2026年第3四半期のDRAM在庫数量に占める割合 | 38.51% | 60.09% |
売上ではDDR5が約88%を占める一方、在庫数量ではDDR4が約60%と過半数を占めている。一見すると不均衡に見えるが、売上と在庫では集計期間も単位も異なる。売上構成比は一定期間に販売した製品の金額を基準としているのに対し、在庫構成比は四半期時点の数量を基準としており、両者の差から不足量や余剰量を算出することはできない。
また、2026年1〜9月の全社売上高に占めるDRAMの割合は83.63%、Flashは13.68%だった。表に示したDDR5の87.93%は、全社売上高ではなくDRAM売上高の中での割合を指す。在庫についても、DRAMは全在庫数量の70.38%を占めており、その内訳としてDDR4とDDR5の比率が示されている。
この売上と在庫の構成からは、TEAMGROUPがDDR5を収益の中心とする一方、DDR4については長期供給への備えを重視していることがうかがえる。実際、同社は産業機器や通信機器の顧客に対応するため、DDR4の在庫を確保する方針を説明している。ただし、DDR4の在庫が多いことと、一般PC向けに十分な数量を販売できることは同義ではない。
業績も好調だ。2026年第3四半期の連結売上高は101.39億台湾ドルで、前四半期比33.61%増加した。売上総利益率は前四半期の42.77%から49.27%へ上昇し、税引後利益は36.18億台湾ドルとなった。こうした数字は、TEAMGROUPが旺盛な需要と価格上昇の恩恵を受けていることをうかがわせるが、消費者向けメモリの供給が改善したことを意味するわけではない。
新工場で生産能力を約50%増強、ただしチップ供給は別問題
TEAMGROUPは説明会資料の8ページで、台湾・新北市に約1,000坪の新工場を建設する計画を明らかにした。2027年第1四半期に内装工事と設備の搬入を進め、第2四半期の完成・稼働を予定している。この新工場によって、同社全体の生産能力は約50%増加する見込みだ。
新工場では製造・検査設備を増強し、顧客の要求に応じた製品の生産や納品を柔軟に行える体制を整える。ODMやOEM、顧客ごとに異なる検査要件への対応も計画されている。つまり、メモリチップを調達した後、モジュールなどの完成品に組み立て、必要な検査を経て出荷する工程の処理能力を高めることが目的となる。
重要なのは、今回の約50%という増強率が、DRAMチップそのものの製造能力を示すものではないという点だ。メモリチップを製造する上流メーカーのウェハー生産能力が増えるわけではなく、TEAMGROUPが必要なチップをどれだけ調達できるかも別の問題となる。同社は製品別の増産数量や上流メーカーからのチップ調達量、PC向け製品への配分について具体的な数値を明らかにしていない。そのため、新工場によってPC向けメモリの供給が50%増えると解釈することはできない。
新工場が予定どおり稼働しても、上流のチップ供給が不足していれば、生産設備を十分に活用できない可能性がある。また、確保したチップが産業機器や企業向け製品に優先配分されれば、消費者向け市場への影響は限定的となる。DDR4の在庫確保は既存顧客への安定供給を支え、新工場は製造・検査工程の処理能力を高めるものであり、それぞれ異なる制約に対応する取り組みだ。
DDR5チップ価格は約5.5倍に、PCの価格と仕様への影響は
メモリ市場の需給逼迫は、すでに価格にも大きな影響を及ぼしている。TEAMGROUPの説明会資料17ページには、TrendForceを出典とするDDR5 16Gbチップの契約価格が掲載されている。それによると、2025年10月に8.70米ドルだった価格は、2026年9月には48.00米ドルへ上昇した。わずか11か月で約5.52倍になった計算だ。
ただし、この価格はDDR5チップ単体のメーカー間契約価格であり、完成品のメモリモジュールやPCの販売価格とは異なる。16Gbはチップの容量を表し、バイト換算では2GBに相当するため、16GBのメモリモジュールそのものの価格を示しているわけでもない。実際のPC販売価格には、搭載するチップの数やモジュールの構成、流通段階での費用などが影響する。そのため、チップの契約価格が5.5倍になったからといって、PC価格も同じ割合で上昇するとは限らない。
また、TEAMGROUPが言及したPCメーカーによるメモリ仕様の引き下げについても、対象となる製品やメーカー別の詳細は明らかになっていない。ただし、今後のPC市場では価格だけでなく、標準搭載されるメモリ容量や選択可能な構成、納期にも注意が必要となる。価格を維持するために搭載メモリが減らされれば、販売価格が変わらなくても製品の仕様は変化する。
TEAMGROUPの新工場は、メモリモジュールの製造・検査能力を拡大する取り組みとして重要だが、それだけで供給不足が解消するわけではない。今後は新工場の稼働状況に加え、上流メーカーからのチップ調達量、DDR4とDDR5の供給配分、消費者向け製品の出荷状況を確認する必要がある。特にPC市場では、メモリの価格だけでなく、搭載容量や納期がどのように変化するかが、供給改善を判断する重要な指標となる。



