IntelやSamsungなど、半導体メーカーはこれまで大きな変化がなかったプリント回路基板(PCB)の素材に大きな変革をもたらそうとしている。これは、従来の有機材料を用いるのではなく、全く異なるガラス素材を用いる物となるが、この先進的なPCBを採用した製品を早期にリリースするのは、スマートフォン向けチップでも世界で初めて3nmチップを採用したAppleになるかも知れない。
チップ性能を大きく高めるガラス基板
現在のPCBは通常、銅とはんだ層の下にガラス繊維と樹脂を混ぜて作られている。
この素材は熱に弱いため、サーマル・スロットリングによってチップの温度を注意深く制御する必要がある。つまり、チップが最大性能を維持できるのは限られた期間だけで、その後は温度を下げるために性能が意図的に下げられてしまう。
だが、PCBの素材をガラスに変更することで、基板が受け止める事が出来る温度は大幅に上昇し、その結果、チップはより高温で動作することができるため、ピーク性能をより長く維持することができる。
また、ガラス基板は超平坦であるため、より精密な加工が可能で、部品をより近くに配置することができ、任意のサイズ内の回路の密度を高めることができる。
現在、この分野ではIntelがリードしているが、他の企業も追いつこうと懸命に努力している。
DigiTimesによると、Samsungも現在この技術に取り組んでおり、Appleがサプライヤー数社と協議中であることから、その中にSamsungが含まれていることは確実だという。
Samsungグループの子会社が共同で、ガラス・コア基板(GCS)の研究開発に投資し、製品化を加速させる。
Appleは、ガラス基板を電子機器に組み込む戦略を練るため、複数の企業と話し合いを進めていると報じられている。今後Appleがガラス基板を採用することで、応用分野の幅が大きく広がることが予想される。
半導体業界の関係者は、ガラス基板は、基板メーカーだけでなく、世界のIT機器メーカーや半導体メーカーも参加し、国家間の新たな完成分野になる可能性があると指摘している。
先進的な多層ディスプレイの製造に使われる技術の多くは、ガラス基板PCBの製造にも応用できるからだ。
ただし、課題がないわけではない。脆弱性、金属ワイヤへの接着力の欠如、一貫した電気的性能にとって重要な均一なビア充填の達成の困難など、乗り越えるべき課題は少なくない。さらに、ガラスはシリコンと比べて透明度が高く、反射率が異なるため、検査や測定において特有の課題を抱えている。
だが、そうした課題を解決してでも乗り換えるべきメリットがあることもまた確かだ。
ガラス基板がチップ開発における次の大物になるとの見方があるのは、これまでの進歩のほとんどが、より微細なプロセスによって達成されてきたからだ。Appleは現在、iPhone 15 Proモデルに搭載されているA17 Proの3nmチップでリードしており、2nm、そして1.4nmへの移行を計画している。
プロセスの世代が進むごとに、徐々に微細化の実現は難しくなっており、究極的には物理的限界がある。ムーアの法則がいつまで有効か疑問視される中、プロセスサイズの限界に達し始めた今、開発ペースを維持する鍵は新材料にあるという見方もある。
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