Intelの次世代デスクトップCPU「Nova Lake」に関する新たな噂が浮上している。2026年の登場が予定されているこのCPUは、現行のLGA1851ソケットではなく、新しい「LGA1954」ソケットを採用する可能性がありそうだ。つまり、最新のLGA1851マザーボードを購入したユーザーにとっては、将来のアップグレード時にマザーボードの買い替えが必要になるということになる。最大52コアという大幅な性能向上が期待される一方、Intel特有の短いプラットフォームサイクルが再び議論を呼びそうだ。
Nova Lakeとは? 2026年登場予定の次世代CPU
Nova Lake(コードネーム: NVL-S)は、Intelが2026年に投入を予定しているデスクトップ向けCPUである。当初は2025年のデビューが噂されていたが、Intelは2024年第4四半期の決算説明会で、2026年に延期されたことを公式に認めている。
Intelの暫定共同CEO兼Intel Products CEOだったMichelle Johnston Holthaus氏は、決算説明会で次のように述べていた。
「2026年は、クライアントの観点からさらにエキサイティングな年になります。Panther Lake(2025年後半登場予定のモバイル向けCPU)が相当な量に達し、次世代クライアントファミリーであるコードネームNova Lakeを導入するからです。両製品は、PCスタック全体で強力なパフォーマンスを提供し、当社にとって大幅に優れたコストとマージンを実現し、競争上の地位を高め、パートナーや顧客への価値提案を強化します」。
この発言からも、IntelがNova Lakeに大きな期待を寄せていることがうかがえる。特に、既に市場に登場しているAMDのRyzen 9000シリーズ(Zen 5アーキテクチャ採用)との競争において、Nova Lakeは「大幅に優れた」性能とコスト効率を実現する必要がある。
噂されるアーキテクチャとコア構成:最大52コアの可能性
Nova Lakeの内部構造についても、いくつかの噂が流れている。初期の報道では、伝説的なチップアーキテクトであるJim Keller氏が関与した「Royal Core」と呼ばれる設計が採用される可能性が示唆されていた。
より最近のリーク情報によると、Nova Lakeは新しいPコア(高性能コア)「Coyote Cove」とEコア(高効率コア)「Arctic Wolf」を組み合わせ、さらにSoCタイル内に4つの超低消費電力LPEコア(省電力コア)を搭載する可能性があるという。
特に注目されているのは、そのコア数である。デスクトップ向けのフラッグシップモデルでは、16個のPコア、32個のEコア、4個のLPEコアを合わせて、合計52コアという構成になる可能性を指摘している。Intelは近年のCPUでハイパースレッディング(SMT)を廃止する傾向にあるため、これは52コア/52スレッド構成を意味する物となるかもしれない。もしこれが実現すれば、現行のArrow Lake-S(Core Ultra 200シリーズ)の最大24コアから、コア数が倍以上に増加することになる。ただし、これはあくまで噂であり、Intelが最終的にどのような構成を採用するかは不明だ。他にも28コア(8P+16E+4LPE)や16コア(4P+8E+4LPE)構成のSKUが存在する可能性も報じられている。
新ソケット「LGA1954」採用の可能性が浮上
Nova Lakeに関する最も注目すべき噂の一つが、新しいCPUソケット「LGA1954」の採用だ。この情報は、nbd.ltdによって発見された出荷マニフェストや、XユーザーEverestによって指摘された電圧レギュレータ(VR)テストツールの存在に基づいている。
これらの情報によると、IntelはNova Lake-SデスクトップCPU向けとされるLGA1954ソケット用のテスト機器(完全なマザーボードではなく、電圧レギュレーションを検証するための特殊なインターポーザーや治具)を世界中の拠点に配布しているようだ。VRテストツールは、実際のCPUサンプルを装着する前に、CPUへの電力供給や負荷線を評価するためのもので、過電圧や過電流によるチップの損傷を防ぐ安全対策として用いられる。過去には、LGA1700ソケットも同様のリーク情報からその存在が明らかになった経緯がある。
LGA1954は、その名の通り1,954個の電気的に接続される接点を持つことを示唆している。ただし、デバッグ用ピンなどを含めると、実際の総ピン数は2,000を超える可能性もあるだろう。現行のArrow Lake-S(Core Ultra 200シリーズ)が採用するLGA1851ソケット(1,851ピン)と比較して、ピン数が約100ピン増加することになる。このピン数増加は、より高度な電力供給能力や、I/O(入出力)機能の拡張を可能にするためと考えられる。
新チップセット「900シリーズ」の噂も
LGA1954ソケットの登場に合わせて、新しいチップセット(PCH: Platform Controller Hub)も用意されると見られる。リークされた出荷マニフェストには、Nova LakeのPCH用とされる888ボールBGA(Ball Grid Array)チップ(サイズ約25mm x 24mm、面積約600mm²)のリボール治具に関する記述も含まれていた。これは、現行の800シリーズチップセット(Z890など、約650mm²)よりもわずかに小さいパッケージサイズとなる可能性を示唆しているが、現時点では詳細不明だ。この新チップセットは、順当にいけば「900シリーズ」と呼ばれることになるだろう。
LGA1851ユーザーへの影響:ソケット寿命は2世代か?
もしNova Lake-SがLGA1954を採用する場合、現在最新のLGA1851ソケットの寿命は比較的短いものとなる可能性が高い。LGA1851は2024年のArrow Lake-S(Core Ultra 200シリーズ)で導入されたばかりであり、Intelのこれまでの傾向を踏まえると、その次に登場が噂される「Arrow Lake Refresh」(2025年予定)までの対応となり、Nova Lake-S(2026年予定)へのアップグレードにはLGA1954対応のマザーボードが必要になる。
Intelのデスクトッププラットフォームは、伝統的に2世代のCPUをサポートすることが多かった。LGA1700ソケットは第12世代Alder Lakeから第14世代Raptor Lake Refreshまで3世代をサポートしたが、第13世代と第14世代は実質的にリフレッシュ版であり、プロセスノードやアーキテクチャに大きな変更がなかったため、例外的なケースと見なすこともできる。LGA1851がArrow LakeとそのRefresh版のみの対応となれば、Intelは従来の2世代サポートサイクルに戻ることになる。
これは、高性能なZ890マザーボードなどに投資したユーザーにとっては残念なニュースとなる可能性がある。CPUをアップグレードする際に、マザーボードも同時に交換する必要が出てくるため、アップグレードコストが増加することになるからだ。
今後のRazer LakeとPCIe 6.0
LGA1954ソケットは、Nova Lakeだけでなく、その次の世代とされる「Razer Lake」(登場時期未定、おそらく2027年以降)でも引き続き使用される可能性がある。もしそうなれば、LGA1954プラットフォームへの投資は、より長期的な視点で見れば価値を持つことになるかもしれない。
また、Nova Lake世代では、新たな技術の導入も期待され、特にPCIe Gen 6.0がサポートされる可能性が報告されている。これが実現すれば、将来の高性能GPUやNVMe SSDの帯域幅をさらに向上させることができるだろう。メモリは引き続きDDR5が主流になると考えられる。
Intel デスクトップCPU世代比較
Intel CPU ファミリー | プロセス | CPUアーキテクチャ (P/E) | GPUアーキテクチャ | コア/スレッド (最大) | ソケット | メモリ | PCIe | 登場年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Alder Lake (12th Gen) | Intel 7 | Golden Cove / Gracemont | HD 700 Series | 16 / 24 | LGA 1700 | DDR5 / DDR4 | Gen 5.0 | 2021 |
Raptor Lake (13th Gen) | Intel 7 | Raptor Cove / Gracemont | HD 700 Series | 24 / 32 | LGA 1700 | DDR5 / DDR4 | Gen 5.0 | 2022 |
Raptor Lake Refresh (14th Gen) | Intel 7 | Raptor Cove / Gracemont | HD 700 Series | 24 / 32 | LGA 1700 | DDR5 / DDR4 | Gen 5.0 | 2023 |
Arrow Lake (Core Ultra 200) | TSMC N3B | Lion Cove / Skymont | Xe1 (Alchemist) | 24 / 24 | LGA 1851 | DDR5 | Gen 5.0 | 2024 |
Arrow Lake Refresh (TBD) | TSMC N3B? | Lion Cove / Skymont | Xe1 (Alchemist) | TBD | LGA 1851 | DDR5 | Gen 5.0 | 2025? |
Nova Lake (Core Ultra 400?) | 未定 | Coyote Cove / Arctic Wolf | 未定 | 52 / 52? | LGA 1954? | DDR5? | Gen 6.0? | 2026 |
Razer Lake (Core Ultra 500?) | 未定 | 未定 | 未定 | 未定 | LGA 1954? | 未定 | 未定 | 2027? |
(注: Nova Lake以降の情報は噂や推測に基づきます)
期待と不確実性が交錯するNova Lake
現時点での情報をまとめると、Intelの次世代デスクトップCPU「Nova Lake」は2026年に登場し、AMD Zen 5以降のCPUと競合することを目指している。その性能向上の鍵として、最大52コアという大幅なコア数増加や、新しいCPUアーキテクチャの採用が噂されている。
そして、プラットフォーム面では、現行のLGA1851に代わり、新しい「LGA1954」ソケットが採用される可能性が高い。これはピン数増加による機能拡張をもたらす一方で、LGA1851プラットフォームの寿命を短くし、ユーザーにマザーボードの買い替えを強いる可能性がある。
Arrow Lakeのゲーミング性能が一部で期待外れとの評価を受けたこともあり、IntelにとってNova Lakeの成功は極めて重要となるだろう。しかし、今回報じられている情報の多くは、出荷マニフェストなどのリーク情報や噂に基づくものであり、Intelからの公式発表ではない点に注意が必要である。特にコア構成や新ソケットの採用については、開発段階で変更される可能性も否定できない。
今後、Nova Lakeに関するより具体的な情報や、Intelからの正式な発表が待たれる。特に、LGA1954ソケットの採用が確定するのか、そしてLGA1851プラットフォームの最終的なサポート範囲がどうなるのかは、多くのPCユーザーにとって大きな関心事となるだろう。
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