SoftBankが、英国の人工知能(AI)チップ開発企業Graphcoreを買収したことが明らかになった。この買収は、SoftBankがかねてより進めているAI向け半導体開発の一環であり、急成長するAIハードウェア市場での存在感を高めることを目的とした物と見られる。
新たな支援を受け、GraphcoreはAIチップ開発で巻き返しを図る
Graphcoreは2016年に設立され、NVIDIAのGPUに代わるAI処理向けの「インテリジェンス・プロセッシング・ユニット(IPU)」を開発していた。同社は過去に約7億ドルの資金調達を行い、2020年末には約30億ドルの評価額を獲得していたが、近年は財務面で苦戦しており、2022年度の売上高はわずか270万ドル、税引前損失は2億500万ドルに達していた。
何ヶ月も前から情報が流れていた今回の買収についてだが、ついに正式に発表された形だ。買収金額は公表されていないが、複数の情報筋によると約6億ドルとされている。これは以前の評価額を大きく下回る金額だが、Graphcoreの共同創業者兼CEOのNigel Toon氏は、この買収を「当社のチームとAI技術を大規模に構築する能力に対する大きな評価であり、当社にとって素晴らしい結果」と評価している。
SoftBankのVikas Parekhマネージングパートナーは、「次世代の半導体とコンピューティングシステムは、AGI(汎用人工知能)への道のりに不可欠です。Graphcoreとこのミッションで協力できることを嬉しく思います」とコメントしている。
この買収により、GraphcoreはSoftBankの傘下に入り、Armと並んでSoftBankのAI戦略の重要な一翼を担うことになる。Toon CEOは、SoftBankの支援により「AIテクノロジーの展望を再定義する」ことができると期待を示している。
買収後もGraphcoreは現在の経営陣のもと、英国ブリストルに本社を置き、独立した子会社として事業を継続する。Toon CEOは、この買収により英国での雇用が「かなり大幅に」増加する可能性があると述示している。
一方で、この買収により一部の元従業員の株式価値が失われたことも報じられている。Toon CEOは「M&Aの構造上、残念ながら元従業員が今後の展開に参加できない場合がある」と説明しつつ、現従業員や投資家にとっては良い結果だったと強調している。
SoftBankの傘下の下、GraphcoreはArmと共に、NVIDIAやAMD、Intelなどの競合他社に対抗する一翼を担うことになる。しかし、AIチップ市場の競争は激しさを増しており、技術革新と市場戦略の両面で成功を収めることができるかが今後の焦点となるだろう。
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