Western DigitalがFMS 2024(Flash Memory Summit 2024)において、次世代PCIe Gen5 SSDの開発での大きな進展を披露した。同社の新技術は、驚異的な速度と低消費電力を両立させ、PCストレージ市場に革新をもたらす可能性を秘めている。
Western Digital、自社開発コントローラーで15GB/sの高速Gen5 SSDをデモ
Western Digitalは長らくPCIe Gen5 SSD市場への参入を控えめにしていたが、今回のデモンストレーションで一気に追い上げを見せた。同社が開発した次世代ストレージソリューションは、デスクトップPCからラップトップまで、幅広いコンシューマー向けセグメントを対象としている。
新たに披露されたGen5 SSDは、「Performance」と「Mainstream」の2つのカテゴリーに分かれている。「Performance」モデルは、8チャンネルのコントローラーとDRAMを搭載し、最大15GB/sの転送速度と200万IOPS以上のランダムリード性能を実現。だが、Western Digitalの新たなGen5 SSDの最大の特徴は、その低消費電力設計にある。従来のGen5 SSDが10Wを超える消費電力を必要とする中、Western Digitalの製品は7W以下で動作する。この低消費電力設計により、冷却要件が大幅に緩和され、より幅広いデバイスへの採用が期待できる。特に、ノートPCやモバイルワークステーションなど、放熱設計に制約のあるデバイスにとって、この低消費電力性能は大きな利点となる。
一方、「Mainstream」モデルは4チャンネルのDRAMレスデザインを採用。こちらは5Wという極めて低い消費電力で、最大10.7GB/sの転送速度を実現している。両モデルともBiCS8 218層3D TLC NANDフラッシュメモリを採用し、最大2TBの容量を提供する。
Western Digitalによれば、これらの新製品はGen4 SSDと比較して2倍の性能向上と55%の効率改善を達成しているという。この大幅な性能向上と効率化は、PCユーザーにとって画期的な進歩となりうる。
さらに注目すべきは、これらのGen5 SSDがモバイルワークステーション向けにも展開されることだ。Western Digitalは、モバイル向けソリューションが既存のGen4ドライブと比較して90%もの効率向上を達成したと発表している。これは、高性能なGen5 SSDを薄型ノートPCに搭載する可能性を開くものであり、モバイルコンピューティングの新たな地平を切り開く可能性があるものだ。
Western Digitalの新製品は、2025年の市場投入を予定している。同時期にSamsungなどのライバルメーカーもGen5製品の展開を控えていることから、2025年はGen5 SSD市場が本格的に動き出す年になると予想される。
この新技術は、単にストレージの高速化だけでなく、PCアーキテクチャ全体に影響を与える可能性がある。例えば、高速なデータアクセスと低消費電力を両立することで、AIワークロードの処理や大規模データ解析など、これまで以上に複雑なタスクをモバイルデバイスで実行できるようになるかもしれない。
また、Western Digitalの自社開発コントローラーの登場は、SSD市場の競争構造にも影響を与えそうだ。これまでPhisonやInnoGritなどの外部コントローラーメーカーに依存していた状況から、より独自性の高い製品開発が可能になる。これにより、SSD市場全体の技術革新が加速する可能性もありそうだ。
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