GPU大手のNVIDIAが、GeForce RTXシリーズのブランディングに大きな変更を加えた。同社は新たに「Powering Advanced AI」(高度なAIを駆動)というタグラインを追加し、消費者向けGPUにおけるAI能力の重要性を強調する姿勢を明確にし、これまでのゲーミングGPUというRTXシリーズの立ち位置に大きな変化を加えている。
NVIDIAのGeForce RTX、AIパワーを前面に押し出す新戦略
NVIDIAは長年、GeForce RTXをゲーミング向けブランドとして位置づけてきた。しかし、今回のバッジ刷新により、同社がAI市場においてもRTXシリーズの存在感を高めようとしていることが明らかになった。この動きは、サーバー・データセンター向けAIハードウェア市場でトップの座を占めるNVIDIAが、消費者レベルでもAI性能をアピールする新たな戦略を示唆している。
新しいGeForce RTXバッジは、すでにPNYなどのOEMパートナーのWebサイトで確認されている。今後、ノートPCやデスクトップPC、GPU本体のパッケージにも順次採用されていくものと見られる。
GeForce RTXのAI能力と、NVIDIAの市場戦略
GeForce RTXシリーズは、消費者向けAIハードウェア市場において圧倒的な性能とシェアを誇るものだ。最もエントリーレベルのRTX 4050 Mobileでさえ、機械学習に特化した120個のTensorコアを搭載している。この高いAI処理能力は、ゲーミングにおけるDLSS(Deep Learning Super Sampling)やDLSSフレーム生成、ACE(AI Character Engine)といった革新的な機能を可能にしている。
NVIDIAは、RTXシリーズのAI能力が単にゲーム用途だけでなく、より幅広い用途で活用できることをアピールしている。例えば、ChatRTXやAdobe製品におけるAIアクセラレーションのサポートにより、クリエイターや一般ユーザーもRTX GPUのAIパワーを日常的に活用できるようになっている。
この新たなブランディング戦略は、NVIDIAのブランド認知度向上にも寄与すると考えられる。Interbrandの2023年6月の調査では、NVIDIAは世界で最も価値のある企業の1つでありながら、トップ100の認知度ブランドには入っていなかった。「Powering Advanced AI」というタグラインの追加は、同社の強みを明確に示すことで、この課題の解決を図る狙いがあると推測される。
NVIDIAは現在、消費者向けAIハードウェア市場でリードを保っている。同社のRTX プラットフォームは、AMDやIntel、Qualcommなどの競合他社が提供するNPU(Neural Processing Unit)が数十TOPSというAI処理性能で競い合っているのと比較して、数百から数千TOPSという桁違いのAI処理性能を実現している。
今回のブランディング変更は、NVIDIAがGeForce RTXシリーズをゲーミングだけでなく、AI処理能力を必要とするさまざまな用途に対応できる製品ラインとして再定義しようとしている表れと言える。次世代の「Blackwell」アーキテクチャを採用するRTX 5000シリーズでは、さらに高度なAI性能が期待されており、NVIDIAのAI市場における地位がより一層強化されることになりそうだ。
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