Appleの次世代フラッグシップスマートフォン、iPhone 16シリーズが高負荷アプリケーションでの性能を大幅に向上させたことが明らかになった。特に人気ゲーム『原神』のベンチマークテストでは、新たに採用された冷却システムとA18 Proチップの組み合わせにより、驚異的なパフォーマンスを発揮している。
iPhone 16シリーズの改良された冷却システムとA18 Proチップの性能
AppleのiPhone 15、特にProモデルは、過熱の問題から、発売初期にネット上で新たな3nmチップは失敗作なのではないかとの批判が渦巻く事態にも発展した。その後、一部の過熱問題についてはOSアップデートで解消されたが、その後でもやはり高負荷アプリケーション、特にAAAゲームの動作時にはかなりの発熱があり、ユーザーの不満にも繋がっていた。
Appleはこうしたユーザーの不満に対処したのだろう。今年のiPhone 16シリーズでは、全モデルに新たな冷却ソリューションを採用している。この改良により、ゲームなどの高負荷アプリケーション実行時の温度管理と性能維持が可能になっており、特にiPhone 16 Pro Maxは、この新しい冷却システムの恩恵を最大限に受けている。
Geekerwan氏による詳細なテストによると、iPhone 16 Pro MaxのA18 Proチップは『原神』のプレイ時に平均55.5FPSを維持した。一方、同じA18 Proチップを搭載する小型モデルのiPhone 16 Proは49.5FPSを記録していることが明らかになった。
動作時に最高温度も46.8度と、iPhone 15 Pro Maxの47.5度を下回っており、冷却も上手くいっていることが確認出来る。
興味深いことに、標準モデルであるiPhone 16とiPhone 16 Plusの間では、逆の現象が観察された。6.1インチのiPhone 16の方が、6.7インチのiPhone 16 Plusよりも高いフレームレートを記録したのだ。これは、A18チップとA18 Proチップの違いによるものと推測される。
A18とA18 Proの主な違いは、GPUコアの数にある。A18 ProはA18よりも1つ多いGPUコアを搭載しているが、『原神』のベンチマークでは大きな差が出なかった。このため、ゲーミング目的のユーザーにとっては、より安価なiPhone 16モデルも魅力的な選択肢となりそうだ。
A18 Proの性能は確かに印象的だが、今回のテスト結果からは、Qualcommの最新フラッグシップSoC、Snapdragon 8 Gen 3には僅かながら及ばなかったことも判明した。ただし、この比較には重要な注意点がある。
比較対象となったSnapdragon 8 Gen 3を搭載したREDMAGIC 9S Proは、アクティブクーリングファンを備えている。これにより、CPUとGPUの周波数を長時間維持することが可能となり、『原神』のベンチマークで59.9FPSという驚異的な数値を記録した。
そのため、同じSnapdragon 8 Gen 3をパッシブクーラーを搭載したXiaomi 14 Proで動作させると、平均フレームレートは38.9FPSまで低下する。つまり、同じ冷却条件で比較した場合、iPhone 16 Pro MaxのA18 Proは、Snapdragon 8 Gen 3に対して約42.5%のパフォーマンス優位性を持っていることになる。
さらに、A18 ProはMediaTek Dimensity 9300+を搭載したVivo X100sと同等のパフォーマンスを示した。これは、AppleのSoCデザインの優秀性を示す結果と言えるだろう。
昨年モデルのiPhone 15 ProとA17 Proの組み合わせでは、『原神』プレイ時に多くのカクつきと熱によるパフォーマンス低下が報告されていた。今回のiPhone 16 Pro Maxでは、この問題が大幅に改善されているようだ。
Xenospectrum’s Take
今回のベンチマーク結果は、スマートフォンのゲーミング性能における冷却システムの重要性を如実に示している。AppleのA18 Proチップは、パッシブクーリング環境下では最高のパフォーマンスを発揮しているが、それでもアクティブクーリングを採用したゲーミングスマートフォンには若干及ばなかった。
この結果は、スマートフォン市場におけるゲーミング専用端末の存在意義を再確認させるものだ。一方で、汎用性の高いiPhoneが、専用端末に迫る性能を発揮していることも注目に値する。
今後、AppleがiPhoneシリーズでアクティブクーリングを採用する可能性は低いと考えられるが、パッシブクーリング技術のさらなる向上が期待される。また、A18とA18 Pro間の性能差が予想以上に小さかったことから、次世代チップではGPUコア数以外の面でも差別化が図られるかもしれない。
最後に、ベンチマーク結果と実際のゲームプレイ体験は必ずしも一致しないことを念頭に置く必要がある。カクつきやフレームレートの安定性など、数値では表れない要素も、ゲーム体験の質に大きく影響する。そのため、実機でのプレイレビューを待つことをおすすめする。
iPhone 16シリーズは確かに大きな進化を遂げているが、ゲーマーにとって最適な選択肢かどうかは、個々のニーズや予算、そして何より実際のプレイ感覚に基づいて判断すべきだろう。
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