MediaTekとNVIDIAが協力して開発中のAI PC向けチップが、2025年前半にリリースされる見込みであることが明らかになった。両社は急成長するAI PC市場での主導権獲得を目指しており、既にリリースされているQualcommのSnapdragon Xチップと共に、長年x86アーキテクチャに支配されてきたPC市場に大きな変革をもたらすことが期待される。
MediaTekとNVIDIAによる新たなAIチップの特徴と開発状況
MediaTekとNVIDIAの共同開発チップは、現在設計段階にあり、2024年第4四半期には検証とサンプリングが行われる見通しで、開発スケジュールは2025年前半の製品発表に向けて順調に進んでいるようだ。
新チップの製造にはTSMCの最先端3nmプロセス(恐らくN3E)が採用される見込みだ。AppleのM4やQualcommのSnapdragon Xチップでも用いられているこの先進的な製造プロセスにより、高性能と低消費電力の両立が期待される。アーキテクチャにはArmが採用され、MediaTekが長年培ってきたモバイルチップ開発のノウハウが活かされる。特に、同社の最新モバイルプロセッサDimensity 9400で実証された電力効率の高さが、PC向けチップにも応用されると見られている。
グラフィックス性能に関しては、NVIDIAの参画により大きな飛躍が期待される。NVIDIAのGPU技術を統合することで、従来のPC向け統合グラフィックスを大きく上回る性能を実現する可能性がある。さらに、AI処理能力の強化も見込まれており、生成AI技術の発展に伴う需要増加に対応できる製品となりそうだ。
MediaTekとNVIDIAの新チップは、QualcommのSnapdragon X Eliteシリーズと直接競合することになる。両社の強みを生かした高性能と低消費電力、さらに競争力のある価格設定により、特に価格感応度の高い市場でのシェア獲得を狙う戦略だ。
業界関係者によれば、MediaTekの強みは高効率と低消費電力にあり、この特長が新しいAI PCプロセッサにも引き継がれる見込みだ。さらに、MediaTekの製品は競合他社と比べて価格が低いことが多く、これが価格に敏感な市場セグメントでの競争力を高める要因となっている。
NVIDIAとの提携により、GPUとAI演算能力の面で大きな相乗効果が期待される。この協力関係により、MediaTekのAI PCチップは市場での競争力を一段と高めることができるだろう。
このチップの登場により、PC市場はArmアーキテクチャとx86アーキテクチャの二強時代に突入する可能性が高まっている。Microsoftの予測によると、2024年末までにArm搭載ノートPCの出荷台数は100万〜200万台に達し、Windows陣営での占有率が5%に達する見込みだ。さらに、Arm CEOはより楽観的な見方を示し、今後5年以内にArmチップ搭載のWindows PCが市場シェアの半分以上を占めると述べている。
この新チップの登場は、Intel、AMD、Qualcommなど既存のPC向けチップメーカーにとっては大きな脅威となる。一方で、消費者にとっては選択肢の増加、性能向上、価格競争の激化によるメリットが期待出来そうだ。
なお、MediaTekとNVIDIAは共同で携帯ゲーム機向けチップの開発を行っている事も伝えられている。こちらの取り組みについての新たな情報はまだないが、両社の提携から目が離せない状況が続きそうだ。
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