Amazonは、2025年に設備投資を1000億ドル規模に増強する計画を発表した。AWSのAI機能強化を軸に、データセンターやハードウェアへの投資を加速。AI需要の急増に応え、クラウド事業の成長をさらに加速させる狙いだ。
AIへの大規模投資:データセンター、ネットワーク機器、ハードウェアへの集中投資
AmazonのCEOであるAndy Jassy氏は、2024年第4四半期の決算発表後の電話会議で、2025年の設備投資額が昨年を上回るとの見通しを示しており、その大部分がAWS向けのAI関連投資であると明言した。同社は、2022年後半にOpenAIがChatGPTアシスタントをリリースして以来、爆発的に人気が高まっている生成AIに対する需要に対応するため、データセンター、ネットワーク機器、ハードウェアへの投資を急いでいる。
Amazonは、Novaモデル、Trainiumチップ、ショッピングチャットボット、Bedrockと呼ばれるサードパーティモデルのマーケットプレイスなど、AI関連製品を次々と発表している。
競合他社も追随:Google、Microsoft、MetaもAIインフラ構築に巨額投資
他のテクノロジー企業もAIに多額の投資を行っている。Googleの親会社であるAlphabetは、今年約750億ドルの設備投資を予定している。Microsoftは、AIワークロードをサポートするためのデータセンターの構築に、2025年度に800億ドルを費やす計画であると発表している。Metaも、データセンターとコンピューティングインフラの構築に最大650億ドルを費やす予定だ。
投資増の背景:需要拡大と「ジェボンズのパラドックス」への期待
Jassy氏は、今回の投資増は「一生に一度のビジネスチャンス」であり、中長期的には株主にとってもプラスになるとの見方を示した。
一部では、中国のAIスタートアップDeepSeekの初期の成功を受けて、AIへの投資計画に対する懐疑的な見方も出ている。DeepSeekは、OpenAIのo1に匹敵するR1モデルの開発に、わずか2か月と600万ドル未満しかかからなかったと主張している。しかしJassy氏は、AIのコスト削減は、AWSの多様なAI製品群への需要増加につながると反論した。
「ある種のテクノロジーコンポーネントのコストを削減できると、それが何らかの形でテクノロジーへの総支出の減少につながると仮定する人がいます。私たちは、それが事実であるのを見たことがありません」とJassy氏は述べ、AI需要の急増をインターネットやクラウドの初期と比較した。
MetaのCEOであるMark Zuckerberg氏も、長期的にAIに「数百億ドル」を費やすと宣言し、数十億人のユーザーにおける推論需要の増加を理由に挙げている。Alphabetも2025年の設備投資を42%増の750億ドルに引き上げ、CEOのSundar Pichai氏は、AIコストの削減が「より多くのユースケースを実現可能にする」と述べた。
MicrosoftのCEOであるSatya Nadella氏は、DeepSeekに関する議論が加熱する中、ジェボンズのパラドックス(価格低下が需要増加につながるという経済学の概念)に関するWikipediaのページをツイートしている。
サプライチェーンの制約、ハードウェアの品質問題
一方で、AWSはAIインフラ構築に必要な高品質なサーバーの調達に苦労しており、ハードウェアの品質問題やサプライチェーンの制約が課題となっている。Brian Olsavsky CFOは、サーバーとネットワーク機器の耐用年数に関する調査の結果、技術開発の加速、特にAIと機械学習分野の進展を踏まえ、一部サーバーの耐用年数を6年から5年に短縮したことを明らかにした。また、理由不明ながら一部サーバーを早期退役させたことも認めている。
しかし、AmazonはAIインフラ構築において課題にも直面している。Jassy氏は、AWSのAIインフラ構築がサプライチェーンの問題によって妨げられていることを認めた。「サードパーティパートナーからのチップの入荷が以前より少し遅れている」と彼は述べており、「もしキャパシティの制約がなければ、もっと速く成長できただろう」としている。
また、「ハードウェアが期待通りの健全で高品質なサーバーの割合を生み出すには、少し時間がかかる」とも述べ、チップなどの部品供給の遅延や、高品質サーバーの歩留まりの課題、サーバーマザーボードなどの部品不足、電力供給の問題も制約要因として挙げられている
AWSの成長率は競合のGoogleやMicrosoftよりも緩やかであり、これも懸念材料の一つとなっている。
AWSの成長と今後の展望
サプライチェーンの課題を抱えながらも、AWSは成長を続けており、年間売上高は1076億ドルに達し、前年比19%増となっている。第4四半期の売上高は290億ドルで、年間売上高のランレートは1150億ドルに達している。
Amazonは、AI技術を様々な分野に活用することで、さらなる成長を目指している。例えば、出品者が画像やURLから商品情報を自動生成するアプリや、衣料品のサイズ推奨ツール、アメリカンフットボール中継でのAIによる解説機能などを導入している。また、2025年にはAIエージェント「Rufus」をショッピングに活用し、顧客体験の向上を図る計画だ。
2025年第1四半期の売上高は1510億ドルから1555億ドルと予測されているが、投資家の反応は鈍く、株価は時間外取引で下落した。AWSの成長率が競合他社に比べて緩やかである可能性も、懸念材料となっているようだ。
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