AMDのプロセッサに用いられている3D V-Cache技術は、特にPCゲームのパフォーマンスの面で画期的な改善をもたらしており、ユーザーにとってAMD製品を有望な選択肢にする技術だ。既に印象的な成果を上げているこの技術だが、AMDはこの技術を更に発展させる計画を立てており、今後更なる改良が見込まれるようだ。
Zen 5 X3Dでは更なる3D V-Cacheの更なる改善が見込まれる?
AMDの3D V-Cache技術は、AMDとTSMCが共同開発し、「3D Fabric」技術を活用して、プロセッサダイの上にキャッシュメモリを垂直に積層するもので、これまでにない大容量のL3キャッシュを搭載する事を実現している。これは、PCゲームや3Dグラフィックスアプリケーションのパフォーマンスを大幅に向上させ、ライバルのIntel製品を大きく超えるフレームレートなどの実現に貢献している。
PC Gamerのインタビューに応じたAMDのシニアテクニカルマーケティングマネージャーであるDonny Woligroski氏は、将来の3D V-Cacheの計画について尋ねられた際、「現状には満足していない」と述べ、AMDが「X3D(3D V-Cacheを採用したAMDのプロセッサのブランド名)で出来る事を改善しています」と述べたようだ。
AMDが次にリリースするであろうZen 5チップの3D V-Cache搭載バージョンは、少なくとも標準バージョンのRyzen 9000シリーズがデビューしてから半年は待つことになるだろう。そうなると、2025年初頭のデビューが期待される。
Woligroski氏は具体的な情報については口を閉ざしたままだったが、「X3Dをこれまで以上に優れたものにするための本当にクールな差別化要素に積極的に取り組んでいます」と明かした。
AMDの更なる改良として、PC Gamerが指摘する可能性の1つは、垂直積層されたSRAMを現在のTSMC N7プロセスからN5に変更し、同じ面積で更に多くのキャッシュを詰め込む可能性を指摘している。現在、すべての3D V-Cacheチップは一律に64MBのスライスを使用しているがプレミアムプロセッサに更に高容量のキャッシュを提供することで、Ryzenラインナップ全体で階層ごとの差別化を図ることにも繋がるかも知れない。
もう一つの可能性としては、SRAMの容量はそのままに、体積を縮小し、薄いダイ設計にすることで、より放熱効率を上げ、ブーストクロックを更に高めに設定する可能性も考えられる。また、こうした放熱効率の改善が奏功した場合、L3ダイを両方のCPUダイに搭載することも可能だ。現在の12コアの7900X3Dと16コアの7950X3Dは、2つのCCDチップレットのうち1つにしかキャッシュがスタックされていない。そのため、もう一方のチップレットはより高いブーストクロックに達することができるが、より高いクロックを維持したまま、追加されたキャッシュを2倍にすれば、さらに良くなる可能性がある。
また、3D V-CacheをAMDのAPUおよび統合グラフィックスを搭載したRyzen AIモバイルチップに導入することも考えられる。これらのチップのGPUパフォーマンスは、メモリ帯域幅の制限によってしばしばボトルネックになる。GPUとRAMの間にキャッシュを垂直に積層することで、ハイエンドのRDNA 2および3ディスクリートGPUが巨大なキャッシュを活用しているのと同様に、モバイルAPUでも性能の大幅な向上をもたらす可能性がある。
AMDの具体的な計画はどうであれ、3D V-Cacheは今後更に改良され、進化していくということで、IntelやNVIDIAとの競争に備えるAMDが次にどのような手を打ってくるのか楽しみになってくる。
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