半導体産業団体SEMIの最新の四半期レポート「World Fab Forecast」によると、2025年に世界で18の新規半導体製造施設(ファブ)の建設が開始される見通しとなった。これらの施設の大半は2026年から2027年の操業開始を予定しており、製造能力の大幅な拡大が見込まれている。
地域別の建設計画と投資動向
2025年に予定される18の新規半導体製造施設は、世界各地でバランスの取れた展開を見せている。最も活発な投資が見込まれるのは米州と日本で、それぞれ4件のプロジェクトが計画されている。これは世界の製造能力の地政学的な分散化が進んでいることを示唆している。
中国および欧州・中東地域はそれぞれ3件の建設プロジェクトを予定しており、グローバルな半導体サプライチェーンにおける存在感を強化する動きを見せている。特に中国は自国の半導体自給率向上戦略の一環として、主力ノード(8nm~45nm)の製造能力拡大に注力している。一方、欧州は自動車産業向けの半導体需要増加に対応するため、成熟ノードの製造能力強化を進めている。
伝統的な半導体製造の中心地である台湾は2件の新規プロジェクトを計画している。台湾の新規投資は比較的少数ながら、その内容は主に先端ノードに焦点を当てており、高付加価値分野での競争力維持を重視する戦略が窺える。韓国と東南アジアはそれぞれ1件のプロジェクトを予定しているが、特に韓国は高性能メモリー分野、具体的にはHBM(High Bandwidth Memory:高帯域幅メモリ)などの製造能力強化に重点を置いている。
SEMIのPresident兼CEOであるAjit Manocha氏は、この地域的な多様性について、「半導体産業は重要な転換点を迎えており、先端技術と基幹技術の両方への投資が世界的な需要の進化に対応している」と評価している。特に生成AI、高性能コンピューティング、自動車、IoTなど、多様な応用分野からの需要増加に対応するため、それぞれの地域が特色のある投資戦略を展開している点が注目される。
製造能力の拡大と技術ノード別の成長予測
2025年における世界の半導体製造能力は、前年比6.6%増となる月間3,360万ウェハーに到達する見通しだ。この成長の中核を担うのが、7nm(ナノメートル)以下の先端プロセスノードだ。生成AI技術の急速な普及と大規模言語モデル(LLM)の計算需要の増大を背景に、この最先端セグメントは年間16%という業界最高の成長率を記録する見込みとなっている。具体的には、300,000ウェハー以上の月間生産能力が新たに追加され、2025年には月間220万ウェハーの製造能力に達する見通しである。
主力となる87nmから457nmの中間ノードにおいては、中国政府が推進する半導体自給率向上戦略が大きな追い風となっている。さらに、自動車産業におけるEV化の加速やIoTデバイスの普及により、このセグメントは6%の堅調な成長が予測されている。2025年には月間1,500万ウェハーの大台を突破する見込みで、全体の製造能力の中で最大のシェアを維持する。この成長は、特に車載用半導体やIoTデバイス向けの需要増加に応えるものとなっている。
一方、507nm以上の成熟ノードについては、市場の回復が遅れていることと製造施設の稼働率が低水準にとどまっていることを反映し、より控えめな5%の成長率となる見通しだ。この成熟セグメントは2025年に月間1,400万ウェハーの製造能力に達する計画だが、既存の製造設備の稼働率向上が当面の課題となっている。産業機器や家電製品向けなど、信頼性が重視される分野での需要は安定しているものの、新規投資については慎重な姿勢が続いている。
ファウンドリーセグメントの躍進とメモリー市場の変化
ファウンドリー部門は2025年に製造能力を前年比10.9%増の月間1,260万ウェハーまで拡大する計画だ。一方、メモリー部門全体の成長は2024年に3.5%、2025年に2.9%と緩やかだが、生成AI需要の高まりを受けて、特にHBM分野で顕著な需要増加が見られる。
DRAMセグメントは2025年に前年比約7%増の月間450万ウェハー、3D NANDは5%増の370万ウェハーの製造能力を見込んでおり、メモリー市場内での成長率の二極化が進んでいる。
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