高性能PCビルダーとして知られるPuget Systemsが、Intel製およびAMD製プロセッサの故障率に関するデータを公開しているが、結果は最近のIntel製プロセッサに関する話題を鑑みると予想外な物だった。Intel製第13世代及び第14世代Coreプロセッサの不安定性問題と、それによるクラッシュ率、故障率のレポートと相反するものであり、興味深い結果となっている。
Puget Systemsの意外な調査結果
Puget Systemsが公開したデータによると、同社が出荷したシステムにおいて、AMDのRyzen 5000および7000シリーズプロセッサの故障率が約4%であるのに対し、IntelのCore第13世代および第14世代プロセッサの故障率は約2%にとどまっているという。この結果は、ゲーム開発者からの報告で50%から100%という高い故障率が指摘されていたIntelプロセッサの状況とは大きく異なっている。
さらに興味深いのは、Intelの第11世代Coreプロセッサが7%を超える最も高い故障率を記録していたという事実だ。この問題についてはこれまであまり報告されておらず、Intelがどのようにしてこの問題を解決したのか、あるいは解決したのかどうかさえ不明確な状況だ。
Puget SystemsのプレジデントであるJon Bach氏は、この結果について詳細な見解を示している。同氏によれば、Intel Core第13世代および第14世代プロセッサの故障率は確かに上昇しているものの、現時点では事業に重大な影響を及ぼすレベルには達していないという。しかし、Bach氏は将来的な信頼性に関する懸念を表明し、時間の経過とともに問題が深刻化する可能性を指摘している。
この予想外のデータの背景には、Puget Systemsの独自のアプローチがある。同社は2017年以降、マザーボードのデフォルト設定を信頼せず、IntelとAMDのガイドラインに厳密に従った独自のBIOS設定を使用している。この保守的な電圧および電力設定が、エンスージアスト向けマザーボードでしばしば見られる過剰な設定を回避し、結果として低い故障率につながっていると考えられる。
しかし、このデータを解釈する際には慎重を期す必要がある。Puget Systemsの出荷台数は月間約200台のワークステーションと比較的少なく、またIntelとAMDの販売比率も時期によって大きく変動している。通常はIntel対AMDが80対20の比率だが、2021年にはAMDが優位な製品を投入したことでこの比率が逆転したこともあるという。このサンプルサイズの小ささと不均衡な出荷数は、データの一般化を困難にしている要因の一つだ。
また、AMDのRyzen 5000および7000シリーズは2020年と2022年に発売されたのに対し、Intelの第13世代および第14世代は2022年と2023年に発売されたという時間的な差異も考慮に入れる必要がある。この発売時期の違いが、長期的な信頼性の比較を複雑にしている。
Puget Systemsは、Intel製プロセッサの故障が主に6ヶ月以降に集中していることを指摘している。この傾向は、時間の経過とともにプロセッサの劣化が進行する可能性を示唆しており、将来的に故障率が上昇する可能性を示す懸念材料となっている。ただし、現時点での月間5〜7件の故障は、同社の規模からすると「大きな問題」とは言えないレベルだとしている。
この調査結果は、マザーボードメーカーによる過剰な電力設定が、Intelプロセッサの劣化を加速させている可能性を強く示唆する物と言える。Puget Systemsの保守的なアプローチが功を奏していることを考えると、一般消費者向けのシステムでは問題がより深刻化している可能性も否定できない。
業界全体の動向としては、Intelが問題の根本原因を特定し、将来的な劣化を防ぐためのマイクロコードパッチをリリースすると発表している。しかし、既に故障したプロセッサは修復不可能であり、一部の顧客はRMA(返品交換)プロセスで困難に直面しているという報告も出ている。
Puget Systemsは、この状況に対応するためいくつかの措置を講じている。まず、マザーボードメーカーが提供する新しいBIOS更新は、パフォーマンスの大幅な低下を招くか、あるいは十分に保守的ではないとして採用を見送っている。代わりに、同社は自社開発の設定を信頼し、継続して使用する方針だ。また、Intelのマイクロコードアップデートが利用可能になった際には、徹底的な内部テストを行った上で採用を検討するとしている。さらに、影響を受けた顧客全員に対して、保証期間を3年に延長するという対応も行っている。
この予想外のデータは、プロセッサの信頼性と性能のバランスに関する議論を再燃させ、PCビルダーやエンドユーザーに新たな視点を提供するものだろう。Puget Systemsの調査結果は、一般に報告されている問題の深刻さと、実際のシステムビルダーの経験との間に大きな乖離があることを示唆している。今後、他のシステムビルダーからも同様のデータが公開されることで、業界全体の実態がより明確になることが期待される。同時に、この事例は、適切な電力管理と保守的な設定の重要性を改めて浮き彫りにしており、高性能と信頼性を両立させるための新たなアプローチについて再考する必要性を提示する物と言えるだろう。
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