Intelの元CEOであるCraig Barrett氏が、同社の取締役会を解任し、前CEOのPat Gelsinger氏を復帰させるべきだと強く主張している。Barrett氏は、一部の元取締役らが提唱する会社分割案に真っ向から反対し、Intelの技術的復活を最優先すべきだと訴える。
「最高の技術が勝つ」:会社分割は技術的優位性を損なう
Barrett氏は、Fortune誌に掲載された意見記事で、Intelの分割案は「最も愚かな考え」であると断言する。同氏は、Intelが最先端の18Aプロセス技術で成功を収めつつある今、会社を分割することは、その勢いを削ぎ、リソースを分散させることになると指摘する。
「Intelは技術的な観点から復活を遂げた」とBarrett氏は述べ、TSMCの2nmプロセスに匹敵する技術力を強調。さらに、最新のイメージング技術(high NA EUVリソグラフィー)とバックサイドパワーデリバリーの両方でリードしているという。これらの成果は、将来の世代のシリコン技術において重要な鍵となる。
「Intelが復活している状況で、複数の大陸に10万人以上の従業員を抱える企業を分割することの利点は何か」とBarrett氏は問いかけている。
Barrett氏は、過去にIntelのファウンドリ事業が失敗した原因は、競合する技術力がなかったことにあると分析。しかし、現在の18Aプロセス技術の成功により、状況は一変したと主張する。「最高の技術が勝つ」という原則に基づき、IntelはTSMCの牙城を崩せると自信を示す。
過去の取締役会を批判、Gelsinger氏の功績を評価
Barrett氏は、Intelの過去および現在の取締役会に対して厳しい評価を下す。「過去10年間にIntelに起こったことに対して、取締役会は最終的な責任を負う」と述べ、経営陣の刷新を求める。
特に、Barrett氏は、昨年12月に突然解任されたPat Gelsinger氏の功績を高く評価。Gelsinger氏が主導した技術開発チームの再建が、現在のIntelの技術的復活につながったと指摘する。同氏は、「Gelsinger氏が過去数年間、適切に職務を遂行してきたことを考えれば、Intelの取締役会を解任し、彼を再雇用して仕事を終わらせる方がはるかに良い」とまで言い切る。
会社分割論を唱える元取締役らへの反論
Barrett氏は、会社分割を提唱する4人の元Intel取締役に対しても反論を展開する。彼らを「2人の学者と2人の元政府官僚」と呼び、「半導体業界の厳しく競争の激しい状況下で戦略を指示するには不適格」と批判する。
これらの元取締役らは、Intelがチップを製造・販売しているため、他のチップ設計会社はIntelを信頼しないだろうと主張する。しかし、Barrett氏は、「最高の技術が勝つ」という半導体業界の原則を無視していると指摘。TSMCが現在優位に立っているのは、最高の技術を持っているからであり、Intelが同等以上の技術を持てば、状況は変わると反論する。
政府の支援と今後の展望
Barrett氏は、米国企業が米国のファウンドリを利用するよう政府が働きかけることや、Intelへの投資など、政府の支援も重要だと指摘。また、現政権には、関税などの支援策を迅速に実施することを期待する。
しかし、Barrett氏は、会社分割という「複雑で注意をそらす」問題に時間を使うのではなく、Intelの技術的復活を基盤に、TSMCのハイエンドファウンドリ事業に食い込むことに焦点を当てるべきだと主張する。
XenoSpectrum’s Take
Craig Barrett氏の意見は、長年Intelを率いてきた経験と深い業界知識に基づいた、非常に説得力のあるものだ。会社分割論は、短期的な視点に囚われ、Intelの持つ技術的ポテンシャルを過小評価していると言える。半導体業界は技術力が全てであり、Intelが18Aプロセスで示す復活の兆しは、同社の将来にとって非常に重要な意味を持つ。Gelsinger氏のリーダーシップの下で技術開発を加速させ、顧客サービス、価格設定、供給能力、そして設計部門とファウンドリ顧客の明確な分離を確保することが、Intelの成功への鍵となるだろう。
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