AMDのRyzen AI 300シリーズモバイルプロセッサは、AMDとして初めての「Copilot+ PC」を名乗れるパワーを持つ物となるが、AI機能として注目のNPU以外に、やはりメインのCPU部分であるZen 5アーキテクチャの性能向上が著しい点も注目を集める製品となっている。既にいくつかのベンチマークリークによって、その性能の一部を確認する事が出来ているが、改めてこのモバイルプロセッサの驚異的な性能を確認出来る結果がGeekbench Browserに登場した。
Ryzen AI 9 HX 370の強力なシングルコア性能が明らかに
AMDのコードネーム「Strix Point」こと、Ryzen AI 300シリーズは現在2つのSKUが公開されており、今回Geekbench Browserに登場するのは上位モデルの「Ryzen AI 9 HX 370」となる。これは、4つのZen 5コアと、8つのZen 5Cコアを備えた12コア24スレッドで、最大5.1GHzのブーストクロックで動作し、36MB(12MBのL2キャッシュと24MBのL3キャッシュ)を備えている。
今回もGeekbench 6でのベンチマークテスト結果となるが、以前のエンジニアリング・サンプルは問題を抱えていたのか、いささか期待外れだったものの、今回の結果は印象的なものとなっている。
以前のモバイルフラッグシップ「Ryzen 9 8945HS」と比較すると、コア/スレッド数は50%増えており、それに伴いマルチコア・スコアも上がっているが、それ以上に印象的なのはシングルコア・スコアの上昇幅だ。今回、Ryzen AI 9 HX 370は、一つのテストでは、シングルコア・スコアが2833ポイント、マルチコア・スコアが14773、もう一つのベンチマークテストでは、シングルコア・スコアで 2795 ポイント、マルチコア・スコアで 14124 ポイントだった。
Ryzen AI 9 HX 370搭載デバイスのGeekbench 6ベンチマークテスト結果 | ||
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シングルコア・スコア | マルチコア・スコア | |
Asus ProArt P16 ( Ryzen AI 9 HX 370搭載) | 2833 | 14773 |
Asus Zenbook S 16 ( Ryzen AI 9 HX 370搭載) | 2795 | 14124 |
ただ、今回のRyzen AI 9 HX 370はエンジニアリング・サンプル(ES)と言うことで、実際の製品は恐らくこれよりも高い数値を記録する可能性もある。ログによれば、Maxのクロック周波数は4952MHzだったということで、実際に5GHzを越えれば更なるスコアも見られるだろう。それでも印象的な結果である事には違いない。
加えて印象的なのは、最大5.2GHzで動作し、TDP55WのRyzen 9 7845HXと同等の性能を少し低いTDP(15-54W の範囲、場合によってはデフォルトの28Wだった場合更に低いTDP)で実現している点だろう。更に、5.4GHzのRyzen 9 7945HX3Dと同等のシングルコア・スコアもたたき出している。加えて、デスクトップではあるが、現行モデルのZen 4「Ryzen 7 7700X」と同等のシングルコア・スコアという点もまた素晴らしいものがある。ノートPCでデスクトップPC並みの性能を実現すると言っても過言ではないかも知れない。
ただし、Zen 5世代のデスクトッププロセッサ「Ryzen 9000」シリーズは更に性能の向上が著しく、特にZen 5のデスクトップ向けとモバイル向けでの性能の差が更に開く可能性も指摘されている。重量級のゲームを快適に楽しみたいなら、やはりデスクトップZen 5、更にその先のZen 5+3D V-Cacheの「Ryzen 9000X3D」シリーズの登場を待つのが間違いないだろう。
Sources
- Geekbench Bwoser: ASUSTeK COMPUTER INC. ASUS Zenbook S 16 UM5606WA_UM5606WA_00014511B
- via Benchleaks
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