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地中海深海で過去最高エネルギーのニュートリノを観測 – KM3NeTが大きな成果

Y Kobayashi

2025年2月13日

2023年2月13日、地中海深くに設置されたニュートリノ観測施設「キュービックキロメーターニュートリノ望遠鏡(The Cubic Kilometer Neutrino Telescope, KM3NeT )」のARCA検出器が、過去最高エネルギーを持つ宇宙ニュートリノ「KM3-230213A」を捉えた。このニュートリノは推定エネルギー220PeV(ペタ電子ボルト)に達し、これまでの記録を大幅に更新するものだ。KM3NeT国際研究協力チームは、この画期的な発見の詳細を2025年2月12日付の科学誌『Nature』で発表した。

KM3NeTとは?深海から宇宙の謎に迫る

ニュートリノは、物質とほとんど相互作用しない素粒子であり、宇宙の極限現象からの情報を直接地球に届ける「宇宙のメッセンジャー」として注目されている。しかし、その性質ゆえに検出は非常に困難であり、巨大な検出器が必要となる。

KM3NeTは、地中海の深海に設置されたニュートリノ観測施設であり、現在建設中である。ARCA(Astroparticle Research with Cosmics in the Abyss)とORCA(Oscillation Research with Cosmics in the Abyss)の2つの検出器で構成され、最終的には1立方キロメートル以上の体積となる予定だ。

KM3NeTは、海水を相互作用媒体として利用し、ニュートリノが水中の原子と衝突した際に発生するチェレンコフ光(青白い光)を高感度の光検出器で捉えることで、ニュートリノを検出する。

過去最高エネルギーのニュートリノ「KM3-230213A」

今回検出されたニュートリノ「KM3-230213A」は、イタリア・シチリア島沖の深海に設置されたARCA検出器で捉えられた。ミューオンが検出器全体を通過し、その軌跡に沿って複数の光検出器が信号を捉えた。KM3NeTは、フランス・トゥーロン沖に設置されたORCA検出器も運用しており、ARCAは高エネルギーニュートリノ、ORCAは低エネルギーニュートリノの観測にそれぞれ特化している。

検出されたニュートリノのエネルギーは、過去に検出された最高エネルギーのニュートリノの20倍以上となる推定220PeVと桁違いのエネルギーを持つものだ。

このニュートリノは、そのエネルギーとほぼ水平な入射方向から、宇宙起源であることが強く示唆される。宇宙線起源ニュートリノであることが示されれば、人類史上初の発見となる。KM3NeTのスポークスパーソンであるPaschal Coyle氏は、「数百PeVのニュートリノの初検出は、ニュートリノ天文学の新たな章を開き、宇宙への新しい観測窓を開く」と述べている。

ニュートリノの起源は?

KM3-230213Aの起源はまだ特定されていない。強力な宇宙加速器(例えば、活動銀河核やガンマ線バースト)から直接来た可能性がある。あるいは、超高エネルギー宇宙線と宇宙背景放射との相互作用で生成される「宇宙線生成ニュートリノ」の可能性もある。

KM3NeTの研究チームは、このニュートリノの到来方向とエネルギーを分析し、その起源を特定しようと試みた。ガンマ線、X線、電波望遠鏡のデータと照合し、ブレーザーや突発天体などの対応天体を探したが、有意な特定には至らなかった。

今後の展望

KM3-230213Aの発見は、ニュートリノ天文学における新たな一歩を記すものである。高エネルギーニュートリノの観測は、宇宙で最も極端な環境についての知見を提供し、宇宙線の起源や加速メカニズムの解明に繋がる可能性がある。

KM3NeTは現在も検出器の増設とデータ取得時間の増加を続けており、感度向上とニュートリノ源の特定能力の強化が期待される。


論文

参考文献

Meta Desctiption

地中海深くに設置されたニュートリノ観測施設KM3NeTが、過去最高エネルギーを持つ宇宙ニュートリノ「KM3-230213A」を観測。この画期的な発見は、ニュートリノ天文学の新たな幕開けを告げるものであり、宇宙の極限現象の解明に繋がる可能性がある。
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