凋落著しい半導体業界の巨人Intelが、次世代ゲーム機PlayStation 6(PS6)のチップ設計・製造契約を獲得できなかった可能性が浮上した。この契約は約300億ドル(4兆円)規模とされ、Intelの契約製造事業にとって大きな打撃となる可能性がある。
PS6チップ開発契約をめぐる熾烈な競争
Reutersの報道によると、Sonyは2022年にPS6用チップの設計と製造に関する入札を実施し、この入札に複数の半導体企業が参加したが、最終的にIntelとAMDの2社に絞られたという。Broadcomも当初は候補に挙がっていたが、最終段階では脱落したとされる。
PS6チップの開発契約は、半導体業界において非常に重要な位置づけにある。過去の実績では、PlayStation 4は約1億2000万台、PlayStation 5は2023年度までに2080万台を売り上げている。このような大規模な需要は、チップ設計者と製造業者にとって安定した収益源となる。
IntelのPat Gelsinger CEOは、同社のファウンドリー事業(半導体受託製造事業)を強化する戦略を打ち出しており、PS6の契約獲得はその重要な一歩となるはずだった。Intelは2021年にファウンドリー部門の立ち上げを発表し、2024年2月にサンノゼで正式に事業を開始している。一方、AMDはPlayStation 4以降、Sonyのコンソール向けチップ設計を手がけており、この分野での実績がある。
Intelが契約を逃した理由と今後への影響
Intelが契約を逃した主な理由として、利益率をめぐる交渉の難航が挙げられている。情報筋によると、IntelはSonyとのチップあたりの利益率について合意に至ることができなかったという。ゲーム機器のような大量生産品では、通常、小さな利益率が一般的だが、Intelはより高い利益率を求めていた可能性がある。
この結果は、Intelにとって大きな打撃となるだろう。同社は現在、大規模な事業再編と人員削減に直面しており、PS6の契約獲得は数年にわたる安定した収益源となり得たからだ。一方、AMDとその製造パートナーであるTSMCにとっては、長期的な収益の確保につながる重要な勝利となる。
Intelの広報担当者は、Reutersの報道に対して「この特徴付けに強く異議を唱える」としながらも、顧客との会話についてはコメントを控えている。AMDとSonyは、コメント要請に対して回答を控えている。
PS6の開発状況と今後の展望
SonyはPS6の正式発表をまだ行っていないが、業界筋によると2027年頃の発売が予想されている。直近では、SonyはPlayStation 5 Proを発表し、2024年11月に119,800円での発売を予定している。
PS6のチップがAMDのプロセッサアーキテクチャをベースにすることになれば、AMD製のチップを搭載したPS4、PS5との後方互換性の確保が容易になる可能性もありそうだ。これは、ゲーム開発者にとっても重要な要素となる。そして、ゲーム機市場全体として、AMDの地位がさらに強化されることにもなりそうだ。
一方、Intelにとっては、ファウンドリー事業の拡大に向けた大きな機会を逃したことになる。同社は現在、AIブームの第一波をNVIDIAとAMDに奪われた状況にあり、新たな成長分野の開拓が急務となっている。
Xenospectrum’s Take
IntelがPS6のチップ開発競争でAMDに敗れた可能性が高いというこのニュースは、半導体業界の競争激化を如実に物語っている。Intelは長年、PCプロセッサ市場で圧倒的な地位を築いてきたが、モバイルやゲーム機器、AI分野での競争力に課題を抱えている。
一方、AMDは過去10年で大きく躍進し、ゲーム機器向けチップでの実績を積み重ねてきた。この結果は、AMDの戦略が功を奏していることを示すとともに、Intelが新規事業領域での競争力強化に苦戦していることを浮き彫りにしている。
今後、Intelがファウンドリー事業でどのように巻き返しを図るのか、また、AMDがゲーム機器市場でのリードをどう活かしていくのか、業界の動向から目が離せない。同時に、この競争がゲーム機器の性能向上やコスト低減にどのような影響を与えるのか、消費者の視点からも注目される。半導体業界の熾烈な競争が、テクノロジーの進化とイノベーションを加速させることを期待したい。
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