Appleが次世代のiPhone 17 Proシリーズで予定していたTSMCの2nmプロセス採用を延期する方針を固めたようだ。製造コストの高騰と歩留まりが主な要因とされ、実装は2026年のiPhone 18 Proシリーズまで持ち越される見通しとなった。
製造コストと歩留まりが採用延期の決め手に
快科技の報道によれば、TSMCは2nmプロセスの試作を新竹宝山工場ですでに開始しているが、現状の製造プロセスは深刻な課題に直面しているという。最も重要な指標である歩留まりは60%と言うことで、これは逆に製造された半導体ウェハーの約40%が品質基準を満たさず、廃棄せざるを得ない状況を意味している。さらに、1枚あたりのウェハーコストは3万ドルという極めて高額な水準に達しており、この低い歩留まりと組み合わさることで、実質的な製造コストは大幅に上昇する結果となっている。
この製造上の課題は、Appleの年間生産規模を考慮した際に特に重要な問題となる。iPhoneシリーズの年間出荷台数は1億台を超えており、そのうちProシリーズが相当な割合を占める。仮に現状の歩留まり率のまま量産を開始した場合、必要なチップ数を確保するためには予定の製造数量を大幅に上積みする必要が生じ、結果としてコストの増大を招くことになる。このような状況を踏まえ、Apple社は2nmプロセスの商用化時期を1年延期し、iPhone 17シリーズでは現行の3nmプロセスを継続使用する決断を下したようだ。
2nmプロセスが約束する性能向上
IEDM 2024会議でTSMCが公開した詳細情報によると、2nmプロセスは現行の3nmプロセスと比較して、複数の重要な技術的優位性を持っている。まず、トランジスタ密度において15%の向上が実現されており、これは同じ面積のシリコンチップ上により多くの演算回路を搭載できることを意味する。また、同一の消費電力条件下で15%の性能向上が達成され、あるいは同一性能を維持した場合には消費電力を24-35%削減できることが確認されている。
さらに、2nmプロセスの最も革新的な特徴として、全環绕栅极(GAA)ナノシート・トランジスタの採用が挙げられる。この新しいトランジスタ構造により、チャネル幅の精密な調整が可能となり、性能と消費電力の最適なバランスを実現できる。特筆すべきは、この新型トランジスタが0.5-0.6Vという極めて低い電圧での動作を可能としながら、同時に顕著な効率改善を実現できる点である。これは、モバイルデバイスのバッテリー寿命延長に直接的な影響を与える可能性を持つ技術革新といえる。
このような技術的優位性にもかかわらず、現時点での製造上の課題が、iPhone 17 Proシリーズへの採用を困難にしている状況は、先端半導体製造における技術的可能性と経済的実現性のジレンマを如実に示している。
Xenospectrum’s Take
半導体製造プロセスの微細化は、物理的限界との戦いであると同時に、経済的な実現可能性との綱引きでもある。今回の延期判断は、Appleの現実主義的なアプローチを示している。確かに2nmプロセスは魅力的な性能向上を約束するが、40%もの歩留まり損失を伴う技術を、年間1億台規模で生産されるiPhoneに導入することは、リスクが大きすぎる。
むしろ注目すべきは、この判断がスマートフォン業界全体に与える影響だ。Appleですら躊躇する製造コストは、他のメーカーにとっては更に大きな障壁となる。結果として、プレミアムセグメントにおける技術的差別化の時期が後ろ倒しになる可能性が高い。
なお、この状況はTSMCにとっても両刃の剣となる。確かに高額な製造プロセスの採用延期は短期的な収益に影響するが、無理な量産化による品質問題や評判の低下を避けられるという側面もある。半導体業界の次の一手が注目される。
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