HTX Studioは2026年10月21日、Appleの折りたたみスマートフォン「iPhone Duo」をCT(コンピューター断層撮影)で解析し、ヒンジの内部構造を3Dモデルで再現したレビューを公開した。Appleによると、このヒンジは100点以上の部品で構成され、左右の筐体を連動させながら、画面を途中の角度で保持する仕組みを備える。日本で10月23日に発売された端末の内部を、分解せずに調べたものだ。また、同レビューでは画面の耐久性も検証しており、折り目を目立ちにくくする工夫が施されていても、使用を想定した試験後には形状が変化することが確認された。
歯車で左右の動きを同期、ばねとカムで角度を保持
HTX Studioの解析では、ヒンジを機能別に六つの領域に分けて説明している。上下には対になる機構が配置され、中央には左右の回路を接続するフレキシブルケーブルの通り道が確保されている。レビュー用の端末を分解できなかったため、CT画像とAppleの公式資料を組み合わせて3Dモデルを作成したという。実際に部品を取り外して調べる分解調査とは異なる方法だが、外側からは見えない機構の配置や働きを把握できる。
左右の筐体は中央の軸につながっており、それぞれが回転する。歯車によって両側の動きが連動するため、片側を動かすと反対側も同じ角度だけ回転し、片手で開く際にも左右の動きがそろう。一方、開いた画面を途中の角度で保持する役割は、ばねと「カム」が担う。カムは回転位置によって接触する部品を押す量が変わる形状をしており、画面を折るとばねが押し込まれ、その反発力と摩擦によって回転に抵抗が生じる。この抵抗が筐体の自重による回転を抑え、画面を任意の角度で保持する仕組みだ。
HTX Studioの実機試験では、15〜165度の範囲で画面の角度を保持できた。ただし、これはレビュー機で確認された結果であり、Appleがすべての端末や設置条件で保証する範囲ではない。また、画面を閉じる際には筐体に組み込まれた磁石が左右を引き寄せる。左右の回転を同期させる歯車、角度を保持するばねとカム、閉じた状態を維持する磁石というように、それぞれ異なる部品が役割を分担している。
3.85mmは折り目の深さではない
CT画像から測定された約3.85mmという寸法は、画面を閉じたとき、ディスプレイが内部で水滴形に曲がる空間の最大幅を指す。画面表面に生じる折り目の深さでも、曲がった部分の半径でもない。ディスプレイを鋭く折り曲げず、内部に緩やかな曲線を描くための空間を確保する設計だ。
Appleの公式説明によると、ヒンジは開いた状態のディスプレイ中央部を支える構造にもなっている。画面自体も複数の素材を組み合わせた積層構造で、ディスプレイパネルの上下に高強度のガラス層を配置している。各層は独自の接着剤で結合されており、折り曲げる際には本のページのように互いに滑ることで、変形に対応する仕組みだ。表面にはポリマー製のカバー層と耐擦傷コーティングを採用し、下側にはチタニウム製のプレートを配置している。
こうした構造を理解するには、ヒンジの動きを制御する仕組みと、ディスプレイへの負荷や折り目の見え方を改善する工夫を区別する必要がある。HTX Studioの解析とAppleの公式説明を整理すると、それぞれの役割は次のようになる。
| 担う役割 | 主な部品・工夫 | 改善する対象 |
|---|---|---|
| 左右の動きの同期 | 歯車と回転軸を組み合わせた機構 | 左右の筐体の回転 |
| 角度の保持 | ばねとカム | 自重による回転 |
| ディスプレイの曲げと支持 | 水滴形に曲げる空間、滑る積層構造、中央部の支持機構 | 折り曲げ時の負荷と展開時の支持 |
| 反射の低減 | 表面のNano-texture仕上げ | 折り目付近の反射の見え方 |
これらは各部の役割を分類したものであり、製品寿命や他社製品との優劣を比較したものではない。ヒンジとディスプレイの構造によって折り曲げ時の負荷を抑える一方、表面処理によって折り目の見え方を改善している。両者は異なる仕組みだが、折り目を目立ちにくくするという点では共通している。
HTX Studioによると、光沢のある画面では折り目の曲面に沿って反射がゆがみ、凹凸が目立ちやすくなる。Nano-texture仕上げは光を散乱させるため、こうした反射のゆがみを軽減できるという。ただし、周囲に光がある環境では黒い部分が灰色がかって見える場合もあると指摘している。映り込みを抑える効果と、表示のコントラストにはトレードオフがある。
3,000回の開閉後、折り目の高低差は48μmから167μmに増加
HTX Studioが実施した試験では、iPhone Duoの折り目の山と谷の高低差が、試験前の48μmから167μmへと変化した。試験では、新品のiPhone Duoと他社の新品の折りたたみスマートフォンについて画面形状を測定した後、機械で3,000回の開閉を繰り返し、一定時間閉じた状態で保管してから再測定している。iPhone Duoでは中央の折り目の傾斜も変化し、試験前の0.1度未満から試験後には1.24度へと増加した。
| iPhone Duoの測定項目 | 試験前 | 開閉と閉じた状態での保管後 |
|---|---|---|
| 折り目の山と谷の高低差 | 48μm | 167μm |
| 中央の折り目の傾斜 | 0.1度未満 | 1.24度 |
数値はHTX Studioが10月21日に公開したレビューに基づく。ただし、試験後の測定には3,000回の開閉だけでなく、閉じた状態での保管も含まれているため、どちらの条件が形状変化にどの程度影響したのかは切り分けられない。また、測定装置や試験台数、温湿度、閉じた状態で保管した時間などの詳細も、確認できた説明からは十分に把握できない。したがって、この結果を全製品の平均的な変化や、長期使用時の寿命を示すものとして扱うことはできない。
それでも、この試験は折りたたみディスプレイの評価で重要な点を浮き彫りにしている。新品時に折り目が目立たなくても、その形状が長期間維持されるとは限らない。Nano-texture仕上げによって反射のゆがみを抑えれば、折り目の変化が目につきにくくなる可能性はあるが、表面処理そのものが凹凸をなくすわけではない。新品の見た目だけでなく、開閉を繰り返した後の画面を同じ照明条件で比較することが、実際の使い心地を判断するうえで重要になる。
表面の傷への強さと長期耐久性は別の問題
HTX Studioは、内側のディスプレイに対して、6Bから8Hまでの鉛筆を使った傷の試験も実施した。治具で100g相当の一定の下向き荷重をかけたところ、6Hでは強い光を当てると確認できる薄い傷が付き、8Hでは触れて分かるほど明瞭な傷が生じたという。ここでのHやBは鉛筆の硬度区分を示すもので、鉱物の硬さを示すモース硬度とは異なる。一定の荷重で鉛筆をこすった結果を、鍵や砂などとの接触による傷つきにくさへ、そのまま当てはめることはできない。Appleが2026年内の対応を予定しているApple Pencilについても、書き心地と長期使用による表面の摩耗は分けて評価する必要がある。
筐体とヒンジの素材についても、区別して理解する必要がある。Appleは筐体にグレード5チタニウムを使用し、ヒンジの外側には3Dプリント製のカバーを設けていると説明している。ただし、内部の歯車やばねまで、すべてチタニウム製という意味ではない。また、外側のカバーが内部機構を保護する性能と、可動部が繰り返し動いた後も適切な保持力を維持できるかどうかは、別の評価項目となる。
防塵・防水性能を示すIP68等級にも、試験条件による制約がある。Appleによると、iPhone Duoは管理された実験室環境において、最大水深6メートルで最大30分間という条件に適合している。一方、防沫・耐水・防塵性能は永続的なものではなく、通常の使用によって低下する可能性がある。新品時にIP68を満たしていても、長期間使用した後の密閉性まで保証されるわけではない。
途中で止まるヒンジを、アプリが使いこなせるか
Appleのデザイン指針では、iPhone Duoを本のように途中まで開いて持つ、机の上に置く、側面を下にして立てるといった使い方を想定している。途中の角度で安定して保持できるヒンジは、単に画面を折りたたむための機構ではなく、端末の持ち方や設置方法の自由度を高める役割も担う。ただし、ハードウェアがこうした使い方に対応していても、アプリが適切に動作しなければ、その利点を十分に生かせない。
Appleは開発者に対し、固定幅を前提とするレイアウトを避け、利用可能な表示領域に応じてコンテンツが柔軟に変化する設計を求めている。また、内側と外側のディスプレイを切り替えても、機能や操作状態が引き継がれることが重要になる。画面を途中まで折った状態では、折り目付近に操作ボタンなどを配置しない配慮も必要だ。画面の大きさが変わるだけでなく、端末の姿勢に応じて操作しやすい画面構成へ切り替えられるかが問われる。
日本でも10月23日に発売され、実機を使った評価が始まる。今後は、開閉を繰り返しても狙った角度で安定して止まるか、使用に伴って折り目の見え方がどう変化するか、普段使うアプリがさまざまな持ち方に対応できるかが注目点となる。ヒンジの機構、ディスプレイの耐久性、ソフトウェアの対応がそろって初めて、途中まで開いた状態で使えるという特徴が、端末を手で支える負担や画面の切り替えに伴う手間を減らす実用的な利点につながる。
