AMDの次世代APU(Accelerated Processing Unit)、通称「Strix Halo」に関する新たな情報がリークされた。この革新的なチップは「Ryzen AI Max」ブランドで展開される予定で、CPUとGPUの性能を大幅に向上させ、デスクトップPC並みの性能をモバイルデバイスサイズで実現する可能性がありそうだ。
AMD Ryzen AI Max:最大16コアCPUと40コアGPUを搭載する次世代APUの全貌
Ryzen AI Maxは、AMDのAPU技術の集大成ともいえる製品だ。従来のAPUの概念を大きく進化させ、CPUとGPUの性能を同時に最大化することを目指している。最上位モデルでは、16コアのCPUと40コアのGPUを統合し、さらに最大96GBものシステムメモリをGPUメモリとして割り当てることが可能になるという。
この新シリーズは、標準的なRyzen AI 300「Strix」ラインの上位に位置づけられ、さらに「Max」と「Max+」のバリエーションが用意される。この命名規則は、Appleが採用している「Max」や「Ultra」のラベリングを彷彿とさせる。
Ryzen AI Maxの主な特徴は以下の通りだ:
- Zen 5アーキテクチャを採用したCPU
- RDNA 3.5アーキテクチャベースのGPU
- チップレットデザインの採用
- TDP: 55Wから130Wの範囲で調整可能
- 最大64MBの共有L3キャッシュ
- GPUには32MBのMALLキャッシュを搭載
- 256ビットLPDDR5X-8000メモリコントローラ
- XDNA 2エンジンの統合(最大60 AI TOPS)
- 16レーンのPCIe Gen4インターフェース
これらの特徴により、Ryzen AI Maxは高性能なCPU処理、グラフィックス処理、そしてAI処理を1つのパッケージで実現することが可能になる。特に、チップレットデザインの採用は、APUとしては画期的な試みであり、性能と効率の両立を図っている。
Ryzen AI Maxシリーズの詳細
Ryzen AI Maxシリーズは、複数のSKUで構成される。現時点で明らかになっているラインナップは以下の通りだ:
- Ryzen AI Max+ 395
- CPU: 16コア/32スレッド(Zen 5)
- GPU: 40コンピュートユニット(RDNA 3.5)
- TDP: 55-130W
- Ryzen AI Max 390
- CPU: 12コア/24スレッド(Zen 5)
- GPU: 40コンピュートユニット(RDNA 3.5)
- TDP: 55-130W
- Ryzen AI Max 385
- CPU: 8コア/16スレッド(Zen 5)
- GPU: 32コンピュートユニット(RDNA 3.5)
- TDP: 55-130W
これらのSKUは、異なるニーズに対応するために設計されている。最上位モデルのRyzen AI Max+ 395は、デスクトップ級の性能を持つノートPCやワークステーション向けに最適化されている一方、Ryzen AI Max 385は、よりバランスの取れた性能と電力効率を求めるユーザー向けに設計されている。
特筆すべきは、これらのAPUが最大96GBものシステムメモリをGPUメモリとして割り当てられる点だ。これは、従来のAPUとは一線を画す特徴であり、グラフィックス性能を大幅に向上させる可能性がある。Strix Haloプラットフォームは最大128GBのメモリをサポートするため、システムメモリの大部分をGPUに割り当てても、CPU側の処理に支障をきたすことはないだろう。
Ryzen AI Maxシリーズは、2025年の発売が予定されている。同時期には、ZenアーキテクチャをベースにしたFire RangeやKrackan Pointなど、他のモバイル向け製品も発表される見込みだ。これらの製品は、ノートPC、タブレット、ハンドヘルドデバイス、ミニPCなど、幅広いフォームファクターで採用されることが期待されている。
Xenospectrum’s Take
AMD Ryzen AI MaxシリーズはAPUの概念を根本から変える可能性を秘めた製品だ。従来、APUは統合グラフィックスを搭載した低〜中性能のプロセッサとして位置づけられてきた。しかし、Ryzen AI Maxは、ハイエンドデスクトップCPUに匹敵する16コアのCPUと、ミッドレンジ独立GPUに迫る40コアのGPUを1つのパッケージに統合している。
特に注目すべきは、最大96GBものシステムメモリをGPUメモリとして割り当てられる点だ。これは、従来のAPUの限界を大きく超えるものであり、グラフィックス性能を飛躍的に向上させる可能性がある。同時に、このアプローチは、AMDがNVIDIAのRTX 4000シリーズモバイルGPUに対抗する戦略の一環とも考えられる。
しかし、この革新的なアプローチには課題もある。まず、熱設計電力(TDP)が最大130Wに達する点だ。とは言え、これは、ノートPCとしては大きな消費電力であり、バッテリー駆動はあまり考慮していないゲーミングノートPCでの採用を想定しているのかも知れない。また、チップレットデザインの採用は製造コストを押し上げる要因になるかもしれない。
それでも、Ryzen AI Maxシリーズは、モバイルコンピューティングの新たな可能性を切り開く画期的な製品になると期待される。特に、クリエイティブ作業やAI処理を必要とするプロフェッショナル向けのモバイルワークステーションなどで、その真価を発揮するだろう。AMDがこの野心的な製品をどのように市場に投入し、どのように価格設定するのか、今後の動向に注目したい。
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