2024年前半のメモリ市場が苦戦を強いられている。TrendForceの報告によると、消費者向け電子機器の需要低迷を受け、メモリ製品のスポット価格が急落しているとのことだ。調査によれば、特に第2四半期には、第1四半期比で30%を超える下落を記録したという。
この背景には、スマートフォンや個人用コンピュータの需要低迷がある。中国ではスマートフォンの在庫が過剰水準に達し、PCについては消費者がAI搭載モデルの登場を待つ傾向が強まっている。これらの要因が重なり、メモリ市場の収縮に拍車をかけているようだ。
モジュールメーカーの苦境と在庫増加
メモリモジュールメーカーは、この市場環境の中で厳しい状況に直面している。2023年第3四半期以降、DRAMの在庫を積極的に増やし続けた結果、2024年第2四半期には在庫水準が11〜17週間分にまで膨れ上がった。しかし、予想していた消費者向け電子機器の需要回復は実現せず、出荷量の大幅な減少を余儀なくされている。
TrendForceによると、2024年第2四半期の消費者向けNAND Flashのモジュールメーカー出荷量は、前年同期比で40%も減少した。この急激な落ち込みは、世界的な消費者向けメモリ市場が直面している深刻な課題を浮き彫りにしている。
インフレや金利上昇といった経済要因が消費者の購買意欲を抑制し、間接的にメモリモジュールの出荷量減少につながっている。加えて、NAND フラッシュウェハーの価格上昇がモジュールメーカーの運営コストを圧迫している。需要を喚起するためには価格を魅力的に保つ必要があるが、コスト増を価格に転嫁できないジレンマに陥っている。
今後の市場見通しとAI機器の影響
2024年後半から2025年にかけてのメモリ市場の見通しは、依然として不透明な状況が続いている。TrendForceは、AIスマートフォンやAI PCが近い将来、市場に大きな影響を与える可能性は低いと分析している。これらの新技術が普及したとしても、広範囲にわたる製品のアップグレードサイクルは期待できず、DRAM価格への大きな支援要因とはならない可能性が高い。
2025年に向けては、DRAM価格が徐々に上昇すると予測されているが、その主な要因はHBM3e(高帯域は場メモリ)の普及率上昇による平均価格の引き上げと、新規生産能力の制限による供給の制約にある。しかし、消費者需要が弱いままであれば、この価格上昇予測は期待を下回る可能性がある。
メモリ業界は通常、周期的な変動を経験するが、2024年前半の出荷量の急激な減少は市場予測を上回るものであった。このことは、2024年後半においても需要の大幅な回復は見込めない可能性を示唆している。
業界が直面する課題に対処するためには、需要喚起と供給調整の両面からのアプローチが必要となる。AI技術の進展が新たな需要を生み出す可能性はあるものの、その効果が顕在化するまでには時間がかかる可能性が高い。一方で、生産能力の適切な管理や新技術への投資継続が、長期的な市場安定化につながる可能性がある。
メモリ市場の回復には、マクロ経済環境の改善や新たな技術革新による需要創出が不可欠となるだろう。業界関係者は、これらの要因を注視しながら、柔軟な戦略立案と迅速な対応が求められる状況が続くと予想される。
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