Micronは、同社初となるEUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外線)リソグラフィ技術を採用した第6世代10nmクラス「1γ(1-gamma)」製造プロセスによる16Gb DDR5メモリの出荷を開始したと発表した。新DRAMは前世代比15%の性能向上と20%の省電力を実現し、AI時代の高まるメモリ需要に対応する。
新世代DRAMの技術革新
Micronが今回発表した1γプロセスは、同社のDRAM製造における第6世代となる10nmクラスの製造技術である。最大の特徴は、同社として初めてEUVリソグラフィを製造工程に導入した点だ。これまでの1α(1-alpha)および1β(1-beta)製造プロセスではEUVを使用していなかった。
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新プロセスで製造される16Gb DDR5 DRAMは、最大9,200 MT/s(メガトランスファー/秒)の転送速度を実現。これは前世代と比較して約15%の性能向上に相当する。同時に消費電力は20%以上削減され、ビット密度は30%向上している。
Micronの執行副社長兼最高技術・製品責任者であるScott DeBoer氏は「Micronの独自DRAM技術開発の専門知識と、EUVリソグラフィの戦略的活用の組み合わせにより、AIエコシステムを前進させる最先端の1γベースメモリ製品の堅牢なポートフォリオが実現した」と述べている。
技術的には、次世代ハイKメタルゲートCMOS技術を採用し、設計最適化と機能サイズの縮小を実現。これにより、省電力とパフォーマンスのスケーリングという二つのメリットを両立させている。また、最先端のEUVリソグラフィに加え、高アスペクト比エッチング技術と業界をリードする設計革新により、業界トップレベルのビット密度を達成したとしている。
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多様な用途に向けた展開計画
1γノードは将来の製品の基盤として、Micronのメモリポートフォリオ全体に順次統合される予定だ。具体的な用途としては以下が挙げられている:
- データセンター:1γベースのDDR5メモリソリューションにより、最大15%高速なパフォーマンスとエネルギー効率の向上を実現。データセンターのラックレベルの電力および熱設計内での最適化を可能にする。
- エッジAI:1γ低電力DRAMソリューションにより、電力削減と帯域幅の向上を実現し、エッジAIソリューションのユーザーエクスペリエンスを向上させる。
- AI PC:1γ DDR5 SODIMMは、パフォーマンス向上と20%の電力削減によりバッテリー寿命を延長し、ノートPCの全体的なユーザーエクスペリエンスを向上させる。
- モバイル:1γ LPDDR5Xにより、エッジでの優れたAIエクスペリエンスを実現し、Micronのモバイル技術におけるリーダーシップを継続する。
- 自動車:1γベースのLPDDR5Xメモリは、容量、長寿命、性能を拡張し、最大9600 MT/sの速度を実現する。
現在Micronは1γ技術で製造された16Gb DDR5 ICとその基盤製品をノートPCとサーバーメーカーにサンプリング中であり、認証は1〜2四半期で完了する見込み。これにより、2025年半ばから小売製品での採用が見込まれている。
産業界への影響とパートナーの反応
新しい1γ DRAMは、デスクトップ向けの性能向上とノートブックおよびサーバー向けの低電力消費という、すべての市場セグメントで価値ある組み合わせを提供する。AIワークロードの台頭により、メモリの需要はかつてないほど高まっているとMicronは指摘している。
AMDのコーポレート・バイス・プレジデント兼サーバー・プラットフォーム・ソリューション・エンジニアリングのAmit Goel氏は「Micronの1γ DRAMノードの進捗に興奮しており、すでにMicron 1γ DDR5メモリの検証作業を開始しています」とコメント。「次世代AMD EPYCプロダクトおよび消費者向けプロセッサポートフォリオ全体におけるコンピュートエコシステムの進化を継続する上で、この緊密な協力は不可欠です」と述べている。
また、Intelのメモリ&IOテクノロジーのバイス・プレジデント兼ゼネラル・マネージャーであるDimitrios Ziakas博士は「Micronの1γノードの進歩は、IntelのサーバーとAI PCに堅実な電力と密度の改善をもたらします。MicronのDRAM技術における継続的な革新を見ることができ、これらの能力に基づいてサーバーシステムのパフォーマンスとPCのバッテリー寿命を強化できることを楽しみにしています」と語っている。
製造については、現在日本のMicronの工場で生産が始まっており、2024年に初のEUVツールが日本の工場に設置された。今後、1γメモリの生産拡大に伴い、日本と台湾の工場にさらに多くのEUVシステムを追加する計画だ。
Micronは将来的に1γ製造技術を使用して、GDDR7、LPDDR5X(最大9600 MT/s)、データセンター向け製品などの他のタイプのメモリ製品も製造する予定であり、この製造ノードは同社の主力技術となる見込みである。
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