OpenAIの取締役会からAppleとMicrosoftが相次いで撤退するという驚きの展開が明らかになった。両社のこうした動きは、規制当局の厳しい監視が強まる中で、AIテクノロジー業界における競争と協力のバランスの難しさという新たな問題を投げかける物と言えるだろう。
規制圧力に直面するOpenAIと大手テクノロジー企業の関係
Axios、Financial Timesの報道によると、Microsoftが、OpenAIの取締役会におけるオブザーバー席を放棄することを決定したとのことだ。この動きは、同社がわずか8ヶ月前に獲得したOpenAIの非議決権席を早々に手放すことを意味する。MicrosoftがOpenAIに宛てた書簡で、「過去8ヶ月間に新たに結成された取締役会から大きな進展を目の当たりにし、会社の方向性に自信を持っている」と述べ、「限定的なオブザーバーとしての役割はもはや必要ないと考えている」と説明している。
一方、Appleも当初予定されていたOpenAIの非営利取締役会への参加を見送る方針であることが報じられた。両社の決定は、Microsoftとの提携をめぐる独占禁止法上の懸念が高まる中での出来事だ。
こうしたApple、Microsoftの新たな動きの背後に、規制当局による監視の強化が関係しているのは想像に難くないだろう。英国の規制当局は2023年12月にMicrosoftとOpenAIの提携に関する見解を求め始め、EUの規制当局も同様の調査を行っている。さらに、米国連邦取引委員会(FTC)もMicrosoft、Amazon、GoogleのOpenAIとAnthropicへの投資を調査しているのだ。
OpenAIはこの状況を受け、新たなアプローチを採用することを発表した。同社の広報担当者Steve Sharpe氏は次のように述べている。「MicrosoftやAppleなどの主要な戦略的パートナー、そしてThrive CapitalやKhosla Venturesなどの投資家に情報を提供し、関与する新しいアプローチを確立しています」。
具体的には、OpenAIは「安全性とセキュリティに関するより強力な協力を確保するため、定期的なステークホルダー会議を開催し、ミッションの進捗状況を共有する」としている。
この展開は、AIテクノロジーの急速な発展と、それに伴う規制の必要性のバランスを取ることの難しさを示すものと言えるだろう。MicrosoftはOpenAIに100億ドル以上を投資し、独占的なクラウドパートナーとなっている。この提携は、MicrosoftにAIレースでの優位性をもたらし、同社のBing検索エンジン、Copilot、その他多くの製品やサービスにおけるAI機能の基盤となっている。だが、その近付きすぎた関係は規制当局の懸念を呼ぶ物となってしまった。
一方で、AppleもOpenAIとのパートナーシップを通じて、iPhoneやMacユーザーがSiriを使ってChatGPTに質問できるようにする計画を発表したばかりだった。
これらの動きは、AIテクノロジーの発展と普及が加速する中で、大手テクノロジー企業とAI開発企業との関係性が今後どのように形作られていくのか、そして規制当局がどのようにこの分野を監督していくのかという重要な問いを投げかけている。今後のAI業界の動向と、それに対する規制の在り方に注目が集まることは間違いない。
Sources
- The Financial Times: Microsoft and Apple drop OpenAI seats amid antitrust scrutiny
- Axios: Microsoft gives up observer seat on OpenAI board
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