パリに拠点を置くAIスタートアップMistral AIが、同社のAIアシスタント「Le Chat」に大幅なアップデートを実施。「Flash Answers」機能による高速応答、モバイルアプリのリリース、料金体系の刷新により、競争が激化するAI市場での存在感を高めている。
高速応答と新機能でユーザー体験を向上
Mistral AIは、AIアシスタント「Le Chat」のWebインターフェースを刷新し、iOSとAndroid向けのモバイルアプリをリリースした。今回のアップデートで最も注目されるのは、「Flash Answers」機能だ。この機能は、最大で毎秒1,000ワードの応答を生成可能で、Mistral AIは「現在利用可能な中で最速のAIアシスタント」であると主張している。この高速応答は、すべてのユーザーが利用できる。
また、Le Chatには、新たにコードインタープリターが搭載された。これにより、Pythonコードの実行、データ分析、可視化、シミュレーションが可能になっている。ユーザーは、プロンプト内で直接Pythonコードを生成したり、CSVファイルをアップロードしてデータ分析やグラフ作成を指示したりできる。科学計算にも対応しており、簡単な計算から複雑な処理まで、幅広い用途で活用することが可能だ。競合のAnthropicも同様の機能をClaudeに追加しており、データ分析機能はAIアシスタントの標準機能となりつつある。
また、Black Forest LabsのFlux Ultraモデルを採用した画像生成機能も強化されている。Mistral AIは、Flux Ultraを「想像力豊かで鮮やかな画像から、フォトリアリスティックな画像まで、あらゆるものを生成できる」と説明し、OpenAIやGrokの画像生成モデルよりも優れていると主張している。
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加えて、Le Chatは、昨年11月にWeb検索機能を搭載し、ChatGPTやGemini、PerplexityなどのAI検索エンジンと同様の機能を提供している。さらに、最近ではAgence France-Presse(AFP)との提携により、最新のニュース速報をLe Chatの応答に組み込むことが可能になった。これにより、ユーザーは最新の事実に基づいた情報を、引用付きでLe Chatから得られるようになっている。
モバイルアプリと多様な料金プラン
Le Chatは、iOSとAndroidの両方で利用可能になった。これにより、ユーザーはスマートフォンからでも手軽にAIアシスタントを利用できる。
料金プランは4つの層で構成されている。無料の基本プランには、Web検索、ドキュメント処理、画像生成などのコア機能が含まれる。
月額14.99ドルのProプランでは、無制限のブラウジングとメッセージ、ニュースへの拡張アクセス、ファイルアップロード、分析ツールが利用可能。学生は最初の6ヶ月間、半額で利用できる。
2人以上のチーム向けには、月額24.99ドル/ユーザーのプランが用意されており、一元化された請求、優先サポート、APIクレジットが追加される。
大企業向けには、カスタム価格のエンタープライズ層があり、安全な展開オプション、強化されたサポート、詳細な分析が含まれる。
競合との比較:DeepSeek、OpenAIとの差別化
AI市場では、DeepSeekやOpenAIが注目を集めているが、Mistral AIは、データプライバシーとセキュリティに関心を持つユーザーや企業にとって、有力な代替手段としての地位を確立しようとしている。
特に、Le Chatのエンタープライズ層は、プライベートインフラストラクチャ、SaaS、または仮想プライベートクラウド(VPC)でのアシスタントの展開を可能にし、OpenAIのGPT-4やAnthropicのClaudeを検討していたが、データとモデルの制御を強化したい企業ユーザーをターゲットにしている。
DeepSeekは中国のデータ保持および検閲法に関連するプライバシーとセキュリティの懸念があるが、Mistral AIはフランスに拠点を置くヨーロッパ企業であり、EUのデータプライバシー法(GDPR)に準拠している点が、大きな差別化要因となる。
Le Chatは、OpenAIのChatGPT Plus(月額20ドル)やAnthropicのClaudeと比較して、月額14.99ドルからのProプランという価格設定も競争力を持つだろう。
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