銀河の衝突、流星の衝突、さらには恒星の合体は珍しい出来事ではない。しかし、中性子星とブラックホールの衝突はもう少し珍しい。LIGO-Virgo-KAGRAの4回目の観測で、6億5000万光年先のブラックホールと中性子星の衝突による重力波が検出された。ブラックホールの質量は太陽の2.5倍から4.5倍と小さい。
中性子星とブラックホールには共通点があり、どちらも寿命が尽きた大質量星の残骸である。星の寿命が尽きるまでの間、重力の内側に向かう力と、星を輝かせる熱核圧力の外側に向かう力が釣り合っている。太陽のような質量の小さい星では熱核圧力が重力に打ち勝つが、より質量の大きい星では重力が勝つ。コアは圧縮されて中性子星かブラックホールになり(始祖星の質量による)、瞬く間に超新星として爆発する。
2023年5月、LIGO-Virgo-KAGRA(Laser Interferometer Gravitational Wave Observatory-Virgo Gravitational Wave Interferometer and Kamioka Gravitational Wave Detector)ネットワークの第4回観測の結果、合体現象から重力波が検出された。その信号は、太陽の1.2倍の質量を持つ天体と、それよりもわずかに質量の大きい天体からもたらされた。さらに分析を進めると、一方は中性子星、もう一方は低質量のブラックホールである可能性が高いことがわかった。後者はいわゆる「質量ギャップ」に該当し、最も質量の大きい中性子星よりも質量が大きく、最も質量の小さいブラックホールよりも質量が小さい。
天体間の相互作用は重力波を発生させる。2015年に検出されるまでは、恒星質量のブラックホールはX線観測によって発見されるのが一般的だった。一方、中性子星は電波観測で発見されるのが普通だった。この2つの間には、太陽質量の3倍から5倍の質量を持つ天体が存在する。
このギャップは科学者の間で議論の的となっており、ギャップ内に収まる奇妙な天体が発見されると、その存在についての議論が沸き起こった。一般的に、このギャップは中性子星とブラックホールを分けるものと考えられており、この質量グループに属する天体は希少であった。今回の重力波の発見は、この隙間にある天体がそれほど珍しいものではないことを示唆している。
質量ギャップのある天体や天体同士の合体を検出する際の課題のひとつは、検出器の感度である。ブリティッシュ・コロンビア大学のLIGOチームは、鏡の製造に使用されるコーティングの改良に励んでいる。将来のLIGO検出器の性能が向上すれば、検出能力はさらに高まるだろう。開発されているのは光学機器だけでなく、データ解析ソフトウェアを含むインフラの変更にも取り組んでいる。重力波ネットワークのあらゆる側面で感度を向上させることは、将来の実行で成果をもたらすに違いない。しかし、今のところ、観測の前半の残りを分析する必要があり、80以上の候補シグナルを調査する必要がある。
Source
- The University of British Columbia: New gravitational wave signal helps fill the ‘mass gap’ between neutron stars and black holes
この記事は、MARK THOMPSON氏によって執筆され、Universe Todayに掲載されたものを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に則り、翻訳・転載したものです。元記事はこちらからお読み頂けます。
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