テクノロジー系のニュースでAIと言う単語を見ない日はない。大企業は次々とAIに投資をしており、そこに信じられないような巨額の資金が投じられている。MicrosoftはAIへの取り組みが期待され、株式時価総額は世界1位となっており、Appleは先行するMicrosoftやGoogleに追いつくべく巨額の投資を行っている。次のiPhoneの目玉も多数のAI機能にになると言われている。
では、あなたの周りではどの程度AIサービスは普及しているだろうか?空前のAIブームに皆が当然のように使っているだろうか?あなたのきっと異なる印象を持っているはずだ。そして新たな調査の結果、それはどうやらあなたのその印象は正しいようだ。
AIを毎日使っている人はほとんどいない
Reuters Instituteとオックスフォード大学による新しい研究によると、世間の期待とは裏腹に、ChatGPTのようなAIツールを定期的に使用しているユーザーはごく少数である事が判明した。
この調査では、ChatGPTのようなAIツールの有用性を調べるため、2024年4月と3月にアルゼンチン、デンマーク、フランス、日本、英国、米国の6か国でオンライン調査(各国約2,000人の参加者)が行われた。
ブランド認知度に関しては、ChatGPTが全ての国で最も認知度が高く、Google GeminiとMicrosoft Copilotがそれに続いている。ClaudeとGrokは大きく遅れを取っている事が分かる。
実際にどの程度AIツールが使われているのか、結果は国ごとに異なるが、ChatGPTを少なくとも時々使用している人の割合は、最低だった日本で22%、最高のデンマークで35%だった。OpenAIのお膝元である米国は32%だった。
米国はGoogleのGeminiとMicrosoft Copilotを利用している人の割合が最も多かった。
しかし、毎日使用する人は稀であり、日本では1%、フランスと英国では2%、最も普及している米国でも7%に過ぎない。ほとんどの国で、個人使用がわずかにプロフェッショナル使用を上回っている。
年代毎のAIツールへの接し方も大きく違った。若年層は生成AIツールをはるかに頻繁に使用している。全6か国平均で、18歳から24歳の56%が少なくとも一度はChatGPTを試したのに対し、55歳以上では16%にとどまる。しかし、若年層でも時々使用する程度にとどまることが多い。
回答者の約4分の1(24%)が情報を得るために生成AIを使用したと述べている。また28%が、テキスト、オーディオ、コード、画像、ビデオなど様々なメディアを作成するために使用したと述べている。ニュースをチャットボットを通じて得ようとした人はわずか5%だった。
ジャーナリズムにおけるAI使用に対する意見
多くの人々は、ジャーナリストが様々なタスクで頻繁にAIを使用していると信じており、その多くは背景で行われていると考えている。43%が、スペルや文法の修正に常にまたは頻繁にAIが使用されていると考え、40%がデータ分析に使用されていると考えている。
しかし、高いプロファイルのタスク、例えば見出しや記事本文の執筆にAIが日常的に使用されていると信じている人も多い。見出しの執筆にAIが使用されていると考えているのは29%、記事本文の執筆に使用されていると考えているのは27%である。しかし、AIの結果を公開前に常にまたは頻繁に人間の編集者がチェックしていると考えているのは32%に過ぎない。
大多数の回答者は、完全または主に人間のジャーナリストによって作成されたニュースに対して、AI生成コンテンツよりも安心感を持っている。AIが使用されるとしても、政治や国際問題といった「ハード」なニュースではなく、ファッションやスポーツといった「ソフト」なトピックに限定されるべきだと考えている。
大多数は、コンテンツが主にAIによって作成された場合、少なくとも特定のケースではラベル表示を求めている。しかし、具体的に何をラベル表示すべきかについては意見が一致していない。
AI生成ニュースが人間によって作成されたコンテンツよりも価値があると考えているのはわずか8%であり、41%はそれを価値が低いと考えている。しかし、多くの人々は、AI生成ニュースに対しても純粋に人間が作成したコンテンツと同じ価格を支払う意向がある。
生成AIは多くの人々の認識に到達しているが、まだ日常生活には浸透していない。ジャーナリズムでの使用に関しては、特に読者に対するタスクにおいて懐疑的な見方が強いようだ。
研究の著者は、一般の人々はまだ生成AIに対する明確な意見を形成していないと結論付けている。
これはまだ若い技術であり、その使用法や公衆の認識がどのように進化するかは今後の課題であると指摘している。
調査結果によると、回答者の4分の1から半数が、AIのさまざまな分野や用途に関する評価について中立的な回答を選んだり、「わからない」と答えたりしている。これは、生成AIがどのような役割を果たすべきか、また果たすことになるのかについての大きな不確実性を示している。
多くの人々がそのような製品を使用した個人的経験が限られていることを考えると、一般の人々がまだ決定的な意見を形成していないのは理解できると著者たちは述べている。
報告書
- Reuter Institute: What does the public in six countries think of generative AI in news? [PDF]
参考文献
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