NTTが、米AI企業Anthropic向けのデータセンターを大阪府に建設する方向で最終調整に入ったと、日本経済新聞が2026年10月13日に報じた。

建設費は最大1兆円規模に達する見通しで、NTTデータグループとAnthropicが大阪府南部の湾岸地帯で協議を進めているという。実現すれば、生成AI「Claude」を開発するAnthropicにとって、日本初の専用データセンターとなる可能性がある。

Reutersも同日、総受電容量は最大500MWに達し、早ければ2028年に一部の稼働を開始する計画だと伝えている。両社は2026年度末までの契約締結を目指しているという。

ただし、現時点では関係者の証言に基づく報道であり、建設計画や契約内容が正式に確定したわけではない。

NTTはすでに関西でデータセンターの整備を進めており、今回の計画が実現すれば、日本国内のAI計算基盤をさらに強化する動きとなる。一方、国内にデータセンターが設置されることと、日本のClaude利用者が国内でAI処理を受けられること、あるいはデータを国内に保存できることは、必ずしも同じではない。

今回の計画が国内企業にどのような影響を与えるかを判断するには、施設の規模だけでなく、実際に提供されるサービスやデータの取り扱い条件を確認する必要がある。

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大阪府南部の新拠点は、既存の大阪北・京阪奈とは別計画

NTTデータグループは、今回報じられたAnthropic向けデータセンターとは別に、関西で複数の大規模施設を整備している。

その一つが、大阪府茨木市に建設する「大阪北データセンター」だ。

NTTデータグループは2025年5月27日の発表で、同施設の建設計画を明らかにした。当時の計画では、第一期棟を2027年度下期に開設し、2032年には第二期棟を完成させる予定としている。

第一期棟では18MW、第二期棟の完成後には合計36MWのIT電力容量を提供する計画だ。

もう一つが、京都府の京阪奈エリアにある「京阪奈OSK11データセンター」である。

こちらは2026年4月9日に正式開設が発表された施設で、30MWのIT電力容量を備える。クラウドサービスやAI向けの需要に対応するため、高効率な冷却設備などが導入されている。

今回のAnthropic向け施設は、大阪府南部の湾岸地帯で計画されているものであり、所在地も既存の2施設とは異なる。

それぞれの計画と設備規模を整理すると、次のようになる。

施設・計画 所在地 2026年10月13日時点の状況 電力容量
Anthropic向け新データセンター 大阪府南部の湾岸地帯 建設に向けた最終調整中と報道 最大500MWの総受電容量(報道)
大阪北データセンター 大阪府茨木市 2027年度下期に第一期棟の提供を開始する計画 第一期18MW、完成時36MWのIT電力容量
京阪奈OSK11データセンター 京都府 2026年4月に正式開設を発表 30MWのIT電力容量

なお、これらの電力容量を単純に比較することはできない。

大阪北と京阪奈OSK11の数値は、サーバーなどのIT機器に供給できる電力を示す「IT電力容量」だ。

一方、Anthropic向けの新施設について報じられている最大500MWは、電力会社などから施設全体が受け入れられる「総受電容量」である。

総受電容量には、サーバーの動作に必要な電力だけでなく、冷却設備やその他の施設設備に使う電力も含まれる。そのため、500MWすべてをAIの計算処理に利用できるわけではない。

また、建設費の最大1兆円という数字も、現段階では報道に基づく見通しであり、確定した契約額ではない。

AI向けデータセンターでは電力と冷却設備が重要になる

今回の計画を理解するうえでは、NTTがすでに進めている大阪北データセンターの設計が参考になる。

NTTデータグループは同施設について、複数のGPUを搭載した高発熱サーバーや、高密度に計算機を収容するラックに対応できると説明している。

さらに、冷却液を使って機器の発熱部分を直接冷やす「直接液冷(Direct Liquid Cooling)」にも対応する計画だ。

生成AIの学習や推論には、大量のGPUを使った計算処理が必要になる。しかし、高性能なGPUを多数設置するだけでは、安定したAIサービスを提供することはできない。

GPUの数が増えるほど消費電力と発熱量も大きくなるため、十分な電力を確保するとともに、その熱を効率よく取り除く冷却設備が不可欠となる。

従来の空冷方式では、高密度に配置したGPUサーバーの発熱に対応することが難しくなる場合がある。そのため、大規模なAI計算基盤では液冷技術の重要性が高まっている。

大阪北データセンターの計画でも、NTTは用地と電力の確保に加え、高密度ラックや液冷設備への対応を重視している。

ただし、こうした設備を備えたとしても、受電容量だけで実際に利用できるAIの計算能力が決まるわけではない。

導入するGPUの種類や台数、冷却方式、電力供給の効率などによって、施設全体の計算能力は大きく変わる。

また、データセンター同士を接続する通信設備も重要になる。

NTTは大阪北データセンターについて、次世代の光通信基盤である「IOWN APN(All-Photonics Network)」を導入する計画を示している。

これは、NTTグループや顧客が保有するほかのデータセンターとの高速・大容量接続を実現し、既存施設の拡張先としても利用できるようにする構想だ。

複数の施設を接続して利用できれば、計算資源やデータを分散配置しながら、一体的なシステムとして運用する選択肢が広がる。

もっとも、これらは大阪北データセンターについて公表されている仕様であり、今回報じられたAnthropic向け新施設に同じ設備が導入されると決まったわけではない。

NTTデータグループは大阪を、首都圏で災害が発生した際のバックアップ拠点だけでなく、大規模なクラウドサービスを支える重要な地域として位置付けている。

京阪奈OSK11の開設時にも、東京との地理的な分散による事業継続性の向上や、西日本におけるクラウド・AI需要への対応を強調していた。

Anthropic向けの新拠点が実現すれば、こうした関西のデータセンター集積に、最先端AIモデルを開発する企業向けの大規模な計算設備が新たに加わることになる。

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日本にデータセンターができても、Claudeのデータが国内保存されるとは限らない

Anthropicは、日本の企業向け市場での事業拡大も進めている。

同社は2026年4月24日、NECとの戦略的協業を発表した。

この協業では、世界各地のNECグループ従業員約3万人がClaudeを利用できるようにするとともに、日本の金融業、製造業、地方自治体向けに、安全性や信頼性を重視したAI製品を共同開発する方針を示している。

なお、約3万人という数字はNECグループ全体の対象従業員数であり、日本国内でのClaude利用者数を示すものではない。

こうした協業は、Anthropicが日本企業の業務にClaudeを組み込む取り組みを進めていることを示している。

しかし、日本国内にAnthropic向けのデータセンターが設けられたとしても、Claudeの利用者が送信したデータが自動的に日本国内で処理・保存されるとは限らない。

ここで重要なのが、「データを処理する場所」と「データを保存する場所」の違いだ。

Anthropicは2026年6月15日付の公式説明で、Claude EnterpriseやAnthropic APIなどの商用サービスについて、データ処理と保存場所に関する方針を明らかにしている。

その説明によると、別途合意がある場合や利用者から指定された場合を除き、顧客からのリクエストは米国、欧州、アジア、オーストラリアの一部の国にある設備へ送られる場合がある。

一方、データの保存先については米国と明記されている。

つまり、データを処理する地域を選択できる仕組みがあっても、保存先まで同じ地域になるとは限らない。

例えば、日本国内にAIの推論処理を行う設備が設けられたとしても、顧客データの保存先が引き続き米国となる可能性はある。

企業がClaudeを業務に導入する際には、こうした違いが重要になる。

特に、機密情報や顧客情報、規制対象となるデータを扱う企業では、データがどこで処理され、どこに保存されるかが、サービス選定の判断材料となる。

また、Anthropicは安全性に関する確認、製品サポート、インシデント対応などの内部業務について、自社や関連会社が事業を展開する国でデータを処理する場合があるとも説明している。

そのため、通常のリクエストの処理場所だけでなく、保守やサポートを含む運用上のデータの取り扱いも確認する必要がある。

今回の報道では、大阪府に建設するデータセンターが具体的にどのサービスに利用されるのか、詳しい用途は明らかになっていない。

AIモデルの学習に使う施設なのか、利用者への応答を生成する推論処理に使う施設なのかによっても、日本のClaude利用者への影響は異なる。

例えば、主にモデルの学習に利用される場合、日本のユーザーがClaudeへアクセスする際の通信遅延が直接改善するとは限らない。

一方、日本向けの推論処理を担う場合には、国内からのアクセスに伴う通信遅延を抑えられる可能性がある。ただし、実際の応答速度はモデルの処理時間やシステム構成などにも左右されるため、国内に設備を置くだけで高速化が保証されるわけではない。

また、国内でのデータ処理や保存を指定できるサービスが提供されるかどうかも、現時点では分かっていない。

こうした条件は、データセンターの建設計画とは別に、Anthropicが今後公表するサービス仕様や契約条件を確認する必要がある。

今後の焦点は契約成立と稼働時期、Claudeの提供条件

今回の報道が示すのは、NTTデータグループとAnthropicが、日本国内に大規模なAI計算基盤を設ける方向で協議を進めているという動きだ。

建設費は最大1兆円、総受電容量は最大500MWに達する可能性があり、計画どおりに進めば、日本のAIインフラにおける大型投資となる。

ただし、現段階では正式な契約成立や最終的な施設仕様が確認されたわけではない。

今後まず注目されるのは、両社が契約を締結するかどうかだ。続いて、建設地や施設規模、設備の供給時期、実際の稼働開始時期などが判断材料となる。

NTT側では、必要な電力をいつ確保できるのか、どのような冷却設備を整備するのか、GPUなどの計算機をどれほど収容できるのかが重要になる。

一方、Anthropic側では、新施設をAIモデルの学習と推論のどちらに利用するのか、Claudeのどのサービスが対象となるのかが焦点だ。

特に日本企業にとっては、国内拠点の新設によって、データ処理や保存場所の選択肢が広がるかどうかも重要な意味を持つ。

関西では、NTTデータグループをはじめとする事業者によって、大規模なデータセンターの整備が進んでいる。

今回の計画が実現すれば、こうした設備集積にAnthropic向けの計算基盤が加わり、日本におけるAIインフラの選択肢が広がる可能性がある。

ただし、日本国内に大規模なAIデータセンターができることと、日本の利用者が国内でAI処理やデータ保存を完結できることは別の問題だ。

巨額の建設投資が、日本企業にとってどのようなメリットにつながるのか。その答えは、施設の規模だけでなく、実際に提供されるClaudeのサービスと、データの取り扱い条件が明らかになることで見えてくるだろう。