NVIDIAが2024年11月8日からダウ工業株30種平均(DJIA)に新たに採用されることが決定した。同社は25年間にわたり指数を構成してきたIntelと入れ替わる。S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが11月1日に発表したこの変更は、半導体業界におけるAI時代への転換点を象徴する歴史的な出来事となった。
AIブームが生んだ新たな覇者
わずか2年でNVIDIAの株価は14ドルから135ドルへと、驚異の850%超の上昇を記録した。この急成長により、同社の時価総額は3.3兆ドルまで膨らみ、現在はAppleに次ぐ世界第2位の企業価値を誇っている。
成長の原動力となったのは、大手テクノロジー企業によるAIチップの大量調達である。Microsoft、Meta、Google、Amazonといった企業がNVIDIAのGPUを競うように購入し、直近5四半期で同社の売上高は2倍以上に拡大。AI需要の高まりを受け、次世代GPU「Blackwell」への引き合いも「途方もない」水準に達していると同社は明かしている。
転換点に立つIntel
対照的な状況に置かれているのがIntelだ。2024年第2四半期には16億ドルの損失を計上し、約1.65万人規模の人員削減に踏み切らざるを得ない事態となった。PC向けチップで長年市場を支配してきた同社だが、AMDとの競争激化やAI市場での出遅れが響き、2024年に入って株価は50%以上下落している。
Pat Gelsinger CEOは、AIアクセラレータGaudi 3の採用が「期待よりも遅い」と認めながらも、Amazonとのチップ製造協力など、業績回復への道筋を模索している。しかし、かつてIntelが象徴した「Wintel」時代の栄光を取り戻すには、なお時間がかかりそうだ。
時代を映す鏡としてのダウ平均
今回の銘柄入れ替えにより、DJIAにはMicrosoft、Apple、Amazonに続く4社目の時価総額1兆ドル超のテクノロジー企業が加わることになる。これは2月のAmazon採用に続く動きであり、指数自体が伝統的な産業からデジタル経済へとその重心を移していく過程を如実に示している。
1999年、ドットコムバブルの真っ只中でDJIAに採用されたIntelは、当時のPCブームを象徴する存在だった。それから四半世紀。新たなAIブームの旗手としてNVIDIAが指数入りを果たすという歴史の転換点は、半導体産業の世代交代を超えて、テクノロジーが牽引する新時代の幕開けを告げている。
この変更を決定したS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスの委員会は「半導体産業のより代表的な企業を指数に反映させる」と説明している。しかし、この動きの持つ意味はそれだけにとどまらない。それは、コンピューティングの中心がCPUからGPUへ、PCからAIへと移行していく、より大きな技術的パラダイムシフトの証左なのである。
AIブームの勢いが今後も継続するのか、あるいはIntelのような転落の道を辿るのか。NVIDIAのダウ入りは、テクノロジー産業の栄枯盛衰を私たちに問いかけている。
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