NVIDIAの次世代フラグシップGPU「GeForce RTX 5090」を含む新製品群の詳細が、パートナーメーカーZotacの公式Webサイトで誤って公開される形で明らかになった。最も注目すべき点は、RTX 5090が32GBものGDDR7メモリを搭載することが確認されたことである。
漏洩した製品ラインナップの詳細
ZotacのWebサイトで誤って公開された情報によると、RTX 5000シリーズは合計5つのモデルで構成される包括的なラインナップとなっている。最上位に位置するRTX 5090は、現行モデルRTX 4090の24GB GDDR6Xメモリから大幅に強化され、32GB GDDR7メモリを搭載する。この大容量メモリの採用により、より複雑なAIワークロードや高解像度ゲーミングにおいて優位性を発揮すると見られる。物理的な特徴として、現行のRTX 4090と同様に3.5から4スロットを占める大型の冷却システムを必要とする設計となっている。
次点となるRTX 5080は、16GB GDDR7メモリを搭載する。これは現行のRTX 4080および4080 Superと同じメモリ容量ではあるものの、より高速なGDDR7規格への移行により、実効的な性能向上が期待できる。このモデルは、高性能を求めるゲーマーやクリエイターをターゲットとしている。
特筆すべきは、RTX 5070 TiとRTX 5070という中核を担う2つのモデルが、シリーズ発売当初から用意されることだ。これはNVIDIAの通常の製品展開戦略とは異なっており、より幅広い価格帯でのシェア確保を目指す姿勢が垣間見える。RTX 5070 Tiは16GBのメモリを、RTX 5070は12GBのメモリを搭載するとされており、これらの仕様は現行の4070 Ti Superおよび4070 Superと同等となっている。
さらに、米国の輸出規制に対応するため、中国市場向けに特別設計されたRTX 5090Dも用意される。このモデルは本来のRTX 5090の性能を制限する形で設計されているが、具体的なスペックの詳細については明らかになっていない。この展開は、重要な中国市場でのプレゼンス維持を図るNVIDIAの戦略的な判断を示している。
なお、中級モデルとなるRTX 5060シリーズについては今回の情報には含まれていなかった。NVIDIAは通常、上位モデルから順次展開していく戦略を取っており、これらのモデルは2025年春から夏にかけて発表される可能性が高いと見られている。
技術仕様と製造プロセス
RTX 5090の心臓部となるGB202チップは、物理的な規模において現行モデルを大きく上回る744平方ミリメートル以上のダイサイズを誇る。この巨大なシリコンダイには、全192基のストリーミングマルチプロセッサ(SM)が搭載されており、そのうち170基が有効化される設計となっている。SMとは、NVIDIAのGPUアーキテクチャにおける演算処理の基本ユニットであり、その数が直接的に演算性能に影響を与える重要な要素である。
中国市場向けの特別モデルRTX 5090Dは、同一のGB202チップを基盤としながらも、米国の輸出規制に適合させるため、意図的に性能を制限した物となる。この制限がSM数の削減という物理的な物なのか、以前言われていたようなファームウェアによる機能制限なのかは不明だが、この制限により理論上の演算性能は通常モデルと比較して約12%低下するものの、依然として強力な処理能力を維持している。
RTX 5080になると、より小規模なGB203チップへと切り替わり、搭載されるSMの数は84基まで減少する。これはRTX 5090の半分以下となるものの、新世代のアーキテクチャによる効率化により、実効性能では現行のRTX 4080 Superを上回ることが期待される。同じGB203チップを採用するRTX 5070 Tiは、さらにSMの数を70基まで削減することで、価格と性能のバランスを図っている。
製造プロセスにおいて、RTX 5000シリーズはTSMCの最新鋭4NPプロセスを採用する。これは5ナノメートル世代の製造技術をベースとしており、現行モデルで使用される4Nプロセスと比較して30%の高密度化を実現している。この進化した製造プロセスにより、同じダイサイズでより多くのトランジスタを搭載することが可能となり、性能向上と電力効率の改善に貢献している。
さらに、新世代のBlackwellアーキテクチャでは、サーバー向け製品(B100/B200)で導入されたFP4およびFP6データ形式のネイティブサポートが、デスクトップ向け製品にも採用される可能性が高い。これらの新しいデータ形式は、特にAI処理における演算効率を大幅に向上させる可能性を秘めている。メモリインターフェースについても、GDDR7の採用により、より高速なデータ転送が可能となり、システム全体の性能向上に寄与することが期待される。
このように、RTX 5000シリーズは製造プロセスからチップアーキテクチャ、メモリシステムに至るまで、全面的な進化を遂げている。ただし、この高度な技術の統合は製造コストの上昇を伴う可能性が高く、最終的な製品価格にも影響を与えることが予想される。
Xenospectrum’s Take
今回のリークは、NVIDIA が次世代 GPU で試みる野心的な挑戦の一端を垣間見せるものだ。32GB GDDR7 という大容量メモリの採用は、AI・機械学習ワークロードへの本格的な対応を示唆している。しかし、Jensen Huang CEO が「チップの価格低下は過去の話」と発言していることを考えると、これらの革新的な仕様は、必然的に高価格帯への移行を伴うだろう。
特に興味深いのは、中国市場向けの5090D の存在だ。米国の輸出規制に対応しつつ、ハイエンド市場での存在感を維持しようとする NVIDIA の戦略的なアプローチが見て取れる。だが、この二重規格は長期的には市場の分断を深める可能性もある。
製品発表は 2024 年 1 月の CES で行われる見込みだが、実際の市場投入時期や価格設定が、この製品ラインの成否を大きく左右するだろう。AMDやIntelが追随できないほどの性能を実現できるのか、それとも価格性能比で巻き返されるのか。2024年のGPU市場は、まさに激戦の幕開けとなりそうだ。
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