Samsung は、Qualcommが2025年にリリースする予定のスマートフォン向け次期フラッグシップ・チップセット「Snapdragon 8 Gen 4」を量産するという、同社に取って千載一遇の機会をTSMCに奪われた可能性が報じられている。TSMCはQualcommの製品に向けて来年、同社の第2世代3nm「N3E」ノードを利用する予定で、MediaTekなどの他社もこの製造プロセスを利用する見込みだ。
Samsungとの二重調達戦略は破綻の模様
TSMCは2024年に3nmプロセスの製造を大幅に拡大する計画だ。現在はAppleのA17 ProとM3にのみ採用されている「N3B」ノードの提供しかないが、これに加えて2024年には「N3E」ノードの稼働も開始する予定だ。N3Eノードでは、歩留まりとウェハー価格の両方が改善されるため、Qualcommにとってこの技術の採用はコストの面でも受け入れ可能な範囲に収まるだろう。元々3nmプロセスの開発はSamsungが先行していたが、TrendForceによると、Samsungが3nmプロセスへの移行に保守的なアプローチをとっているため、今回Snapdragon 8 Gen 4の受注を失うことに繋がったという。
以前、QualcommはSnapdragon 8 Gen 4を量産するために、SamsungとTSMCの両方の3nm技術を活用する二重調達戦略に切り替えると噂されていた。1社依存から2社に見積もりを取らせることにより、チップセットの製造コストを下げることができる。残念ながら、こうした計画は実現せず、最終的にQualcommのサプライヤーはTSMC1社のみとなった。これには、以前噂されたように、Samsungの3nm GAAの歩留まりが、Qualcommが許容するには低すぎた可能性もある。以前の報道では、受注を確保するにはSamsungは歩留まりを少なくとも70%まで高める必要があるとされていた。
また、Samsungの3nm技術がTSMCの技術より劣っているという問題もある。噂レベルではあるが、これはSnapdragon 8 Gen 1においてSamsung Foundryでの製造によって消費電力と発熱の問題に悩まされ、その後TSMCでの製造に切り替えられたSnapdragon 8+ Gen 1では見事に性能向上を果たし、性能と電力効率の両方で驚くべき違いが見られた事からもあり得ない話ではなさそうだ。Snapdragon 8 Gen 2とSnapdragon 8 Gen 3もこの傾向を引き継ぎ、評価の高い製品となっている。
Snapdragon 8 Gen 4は、Qualcommにとって、同社初のカスタムOryonコアを搭載したスマートフォン向けSoCになると言われている。Qualcommは、AppleのAシリーズに対抗するため、2024年にArmのCPU設計から移行する予定だ。しかし、カスタムCPU設計への切り替えは、TSMCのN3Eプロセスでシリコンを大量生産することと共に、Snapdragon 8 Gen 4がSnapdragon 8 Gen 3よりも高価になることを意味し、その結果、メーカーはフラッグシップスマートフォンの利益を最大化するために、いくつかの機能を削るなど、妥協を余儀なくされる可能性もある。
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