Samsung Electronicsが半導体受託生産(ファウンドリ)事業の売却を検討している可能性があることが明らかになった。この動きは、同社の最先端3nmプロセス技術の歩留まりが低いことや、業界リーダーであるTSMCとの競争激化を背景としたものだ。
歩留まりの低さが事業に影響
Samsungの3nm GAA(Gate-All-Around)プロセス技術は、わずか20%という低い歩留まりに苦しんでいる。これは、量産を経済的に実現可能にするために推奨される60%を大きく下回っている。この技術的な課題により、Samsungは主要顧客を失い、市場シェアの低下に直面している。
第2四半期の世界ファウンドリ市場において、Samsungのシェアは11.5%に留まっている。一方、業界リーダーのTSMCは62.3%の圧倒的なシェアを獲得している。この格差は、Samsungにとって深刻な懸念事項となっている。
さらに、Samsungの3nmプロセスで製造予定だったExynos 2500チップの歩留まりも低く、来年のGalaxy S25への搭載が不透明になっている。これは同社のスマートフォン事業にも影響を与える可能性がある。
ファウンドリ事業の分離と米国上場の可能性
7月に発表されたSamsung Securitiesのレポート「地政学的パラダイムシフトと産業」では、Samsungの3nmノードでは実用的なシリコンの 10 ~ 20% しか得られず、潜在的な顧客は Samsung との提携を躊躇していると報告されている。Samsung Securities は、Samsung Foundry が LSI 部門とともに今年 5,000 億ウォン (約 547億円) の損失を被ると予測している。
このレポートの中ではファウンドリ事業の分離と米国上場の可能性も示唆されている。この提案は、Samsungのファウンドリ事業が直面する一連の課題を背景としている。
Samsung Securitiesの代表者は、「ファウンドリ事業はクライアントとより密接な接触を必要とするため、米国での追加工場設立など積極的な現地化が必要」と述べている。さらに、「ファウンドリ事業を分離して米国で上場するのはどうか」という提案も行っている。
専門家の間では、この潜在的な分離について意見が分かれている。ある専門家は、「ファウンドリ事業の分離はSamsung Electronicsの戦略的選択であり、その可能性や効果を予測するのは困難」と指摘している。
だが、報道によると、Samsung社内ではすでに利益率の高いメモリ事業に人員を再配置しているとも伝えられている。
ファウンドリ事業の分離と米国上場の可能性は、Samsungが事業構造の再編を通じて競争力を高めようとする戦略的な動きと見ることができる。米国での上場は、資金調達の多様化や現地顧客との関係強化につながる可能性がある。
しかし、この決断には慎重な検討が必要だ。ファウンドリ事業はSamsungの半導体エコシステム全体に深く統合されており、分離によって生じる影響を慎重に評価する必要がある。また、TSMCとの技術格差を埋めるためには、継続的な投資と技術革新が不可欠だろう。
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