韓国の電子大手Samsungが、次世代の高帯域幅メモリ「HBM4」の開発を急ピッチで進めている。複数の業界報道によると、Samsungは2024年第4四半期までにHBM4のテープアウトを完了させる計画とのことだ。
SamsungのHBM4開発の詳細と今後の展望
SamsungのHBM4開発は、最新の製造プロセスと革新的な技術を組み合わせることで、高性能かつ効率的なメモリソリューションの実現を目指している。DRAMチップには最新の10nmクラス(10c nm、12nm)プロセスを採用し、ロジックダイには4nmクラスプロセスを使用する予定だ。この先進的な製造技術の採用により、高い性能と電力効率を両立させることが可能になると期待されている。
技術的な特徴としては、メモリバス幅が現行の1,024ビットから2,048ビットに拡大されることが挙げられる。これにより、クロック速度を上げることなく、大幅な帯域幅の向上が実現できる。また、ロジックダイとDRAMダイを組み合わせた新構造を採用することで、さらなる性能向上と柔軟性の確保を図っている。
開発のタイムラインについては、2024年第4四半期にテープアウトを完了させ、2025年初頭からサンプリングを開始する予定だ。その後、2025年後半には量産を開始する見込みとなっている。初期段階では12層積層のHBM4スタックを量産し、将来的には16層積層版の開発も視野に入れているという。
しかし、Samsungはこの競争で先行しているわけではない。ライバルのSK hynixも同時期にHBM4の量産を計画しており、両社の競争は激化している。SK hynixは当初、1b DRAM技術を使用する予定だったが、Samsungが1c技術を採用することを受けて、戦略の再考を迫られているという報道もある。Tom’s Hardwareが指摘するように、SK hynixはTSMCと協力してHBM4のベースダイを製造する計画で、12nmクラスと5nmクラスのプロセス技術を活用すると見られている。
HBM4の主要な応用分野としては、次世代AIプロセッサが挙げられる。NVIDIAのRubinアーキテクチャやAMDのMI400シリーズなど、高性能AIチップへの搭載が期待されており、これらの企業がSamsungとSK hynixのどちらからHBM4を調達するかは、両社の開発進捗と製品性能に大きく左右されることになるだろう。
HBM4を搭載した製品が実際に市場に登場するのは早くても2026年頃になると予想されるが、この新技術がAIや高性能コンピューティング分野にもたらす影響は計り知れない。データ処理速度の向上や電力効率の改善は、より高度なAIモデルの開発や、より複雑な科学計算の実現につながる可能性がある。
SamsungとSK hynixの競争は、単に企業間の争いにとどまらず、韓国半導体産業の国際競争力を左右する重要な要素となっている。両社の技術革新が、グローバルなAI・HPC市場におけるリーダーシップの確立につながることが期待されている。今後の開発動向と市場の反応に、業界の注目が集まっている。
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