SamsungはGalaxy S23の悪夢を繰り返さないために全力を注いでいるようだが、現在の状況はあまり芳しい物ではないようだ。業界関係者の話では、次期Galaxy S25シリーズに搭載するために開発を進めている「Exynos 2500」の歩留まりは、現在20%未満に留まっているという。
SamsungはExynos 2500の歩留まり改善に全力を注いでいるようだ
ZDNetが業界関係者の話を引用して報じている所では、Samsungの3nmプロセスの状況は依然として芳しくないようだ。
Samsungは、自社設計の「Exynos 2500」モバイル向けプロセッサを次期Galaxy S25シリーズに搭載するために開発を進めており、これの製造にSamsungの第2世代3nm「SF3」を用いることが伝えられていた。
Samsungは業界に先駆けて3nmプロセスの量産を進めており、加えてここではGAA(Gate-All-Around)FETに基づく先進的なテクノロジーも導入されるということで、他社に先行する野心的な物だった。
GAAは、トランジスタ内部の電流が長らえるチャネルの4面全てをゲートで取り囲む方式で、従来のゲートで3面を取り囲むFinFETと比較してリーク電流を抑え、処理速度や電力効率の向上が見込まれる革新的な技術だ。
だが、これを採用した第1世代の3nmプロセス「SF3E」は中国の一部マイニング業者向けのASICの製造にしか用いられなかったと言われており、SRAMを含まない物であった事からTSMCがAppleのA17 ProやM3等で行っている3nmプロセス「N3B」と比較して、“本当の3nmとは言えない”と言う意見もある状況だった。
第2世代のSF3は、改良が施され、歩留まりも改善されたと言われているが、それでも次世代Exynosプロセッサの開発は難航しているようだ。
業界関係者の話では、2024年第1四半期までの時点で、Exynos 2500の歩留まりはなんと“一桁台”に留まっていたという。そのため2月までにエンジニアリング・サンプル(ES)を供給する初期プロジェクトは延期もされたようだ。
事態を重く見たSamsungは、Exynos 2500の歩留まりを高める事に集中し、2024年第2四半期にはこれを20%未満の水準まで引き上げたとのことだが、量産に必要な60%以上の歩留まりには依然として遠い状況だ。
参考までに、TSMCは第2世代3nm「N3E」プロセスでは高い歩留まりを記録しており、同社によれば80%程度にもなるという。これはQualcommのSnapdragon 8 Gen 4やSnapdragon Xシリーズ、AppleのM4等に用いられている。
こうした内部の情報が、一部アナリストがExynos 2500が次期Galaxy S25シリーズには採用されない可能性があると報じる原因になったようだ。TF International SecuritiesのアナリストMing-Chi Kuo氏も「QualcommがGalaxy S25シリーズの唯一のモバイルAP供給元になる可能性」を報じていた。
Samsungとしては年末からの量産開始を見据え、10月頃をタイムリミットに歩留まりの改善に向けた取り組みを進めていくようだ。
業界関係者は「チップ開発を担当するSamsung ElectronicsのSystem LSI事業部も現在の状況が厳しいことを認識し、歩留まり改善に全力を注いでいると聞いている。Galaxy S23でExynosチップが搭載されなかった前例があるため、失敗を繰り返さないよう様々な対策を講じている」と、ZDNet Koreaに説明している。
また、Exynos 2500の歩留まり如何によっては、その供給量が絞られる可能性もあり、地域毎に選択的な搭載という戦略が取られる可能性もあると言う。
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