SK hynixが次世代高帯域メモリ(HBM)の開発を加速させている。同社は今年10月にHBM4メモリの「テープアウト」を完了させる計画だ。これは、NVIDIAの次世代AI向けチップに搭載されることを見据えた動きと見られる。HBM4は現行のHBM3Eの後継となる第6世代のHBMで、データ転送能力が大幅に向上する見込みだ。
Samsungに先駆けてSK hynixがHBM4をテープアウトへ
SK hynixは、HBM4メモリの設計が最終段階に入ったことを明らかにした。HBM4の主な特徴は、データ転送の経路となるI/O(入出力端子)の数が前世代の2倍となる2048ビットに拡大されることだ。これにより、データ転送速度の大幅な向上が期待できる。
さらに、HBM4ではDRAMダイの積層数が最大16層に増加する。現行のHBM3Eが12層であることを考えると、この増加は容量と性能の両面で大きな進歩を意味する。具体的には、単一スタックあたりの容量が64GBに倍増し、24Gbおよび32Gbレイヤーをサポートすることになる。
SK hynixは、現行のHBMメモリと比較して20〜30倍高いパフォーマンスを実現すると約束している。この大幅な性能向上は、AI処理や高性能コンピューティングなどの分野に革新をもたらす可能性がある。特に、データセンターやスーパーコンピューターなど、大量のデータを高速で処理する必要がある環境での活用が期待される。
開発スケジュールに関しては、SK hynixはNVIDIA向けのHBM4チップを供給するための専門開発チームを既に編成している。10月のテープアウト後、量産は2025年末頃に開始される見通しだ。これは、NVIDIAが2026年に発売を予定している次世代高性能GPU「Rubin」シリーズに合わせたタイミングとなっている。Rubinシリーズは12層積層のHBM4を採用する見込みで、AI処理能力の飛躍的な向上が期待されている。
また、SK hynixはAMD向けのHBM4開発も並行して進めており、こちらは年末にテープアウトを行う予定だという。この動きは、高性能メモリ市場での競争が激化していることを示している。
技術面では、SK hynixはHBM4の核となるコアダイに、自社の1b DRAM(第5世代10nmクラスDRAM)を使用する方針だ。これは現行のHBM3Eと同じ技術を採用しており、安定性を重視した選択とみられる。一方、競合するSamsung ElectronicsはHBM4に1c DRAM(第6世代10nmクラスDRAM)の採用を目指すなど、より先進的な技術の導入を試みている。
ロジックダイの製造に関しては、SK hynixは主要ファウンドリであるTSMCの12nmおよび5nmクラスのプロセスを採用すると見られている。この選択は、高性能と製造の安定性のバランスを取る上で重要な役割を果たすだろう。
SK hynixの積極的な開発姿勢は、高性能メモリ市場での競争力強化を目指すものだ。同社はNVIDIAのAIチップ向けHBMの主要サプライヤーとしての地位を固めつつあり、HBM4の早期実用化によって、この優位性をさらに強化しようとしている。
一方で、SamsungもHBM4の開発を進めており、次の四半期にテープアウトを行う計画を立てている。両社の開発競争は、AI処理や高性能コンピューティング市場の発展を加速させる原動力となりそうだ。
このHBM4の開発競争は、単なる技術革新にとどまらず、AI産業全体の発展に大きな影響を与える可能性がある。より高速で効率的なメモリの登場は、AIモデルの学習速度や推論能力の向上につながり、さまざまな分野でのAI応用を加速させることが期待される。
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