AI革命の最前線に立つNVIDIAの従業員たちが直面する過酷な労働環境が明らかになった。同社では、週7日、深夜2時までの勤務が珍しくないという。しかし、急騰する株価による「黄金の手錠」効果で、多くの従業員が高待遇に縛られ、退職を躊躇している状況だ。
過酷な労働環境にもかかわらず離職率はわずか2.7%
NVIDIAの職場環境は、働き方改革が叫ばれ、残業が厳しく規制されている日本からすれば、想像しがたい程に過酷だ。複数の現・旧従業員の証言によると、多くの社員が週7日勤務を余儀なくされ、深夜2時まで働くことも珍しくないという。特に技術サポート部門やエンジニアリング部門では、この傾向が顕著だ。
ある元従業員は、「マーケティング部門では1日に7〜10回、30人以上が参加する会議があり、そこでは叫び声や争いが日常茶飯事だった」と語る。このような高圧的な雰囲気は、創業者でCEOのJensen Huang氏の経営哲学に起因しているとみられる。
Huang氏は、自身が「一緒に働きやすい相手ではない」ことを認めている。彼は「非凡なことを成し遂げたいのなら、それは容易であってはならない」とインタビューで語っている。この発言は、同社の厳しい労働文化を如実に物語るものだろう。
しかし、このような過酷な環境にもかかわらず、NVIDIAの従業員離職率は業界平均を大きく下回っている。2023年の同社の離職率はわずか2.7%で、半導体業界全体の17.7%と比較すると驚異的な低さだ。この背景には、NVIDIAが従業員に提供する”黄金の手錠”と呼ばれる報酬システムがある。
NVIDIAは従業員に対し、給与の最大15%を会社株の購入に充てることができる制度を設けている。しかも、その購入価格は市場価格から15%割引されるという破格の条件だ。この制度を18年間利用し続けたある中堅社員は、6200万ドル(約93億円)相当の株を所有するまでになったという。
この潤沢な株式報酬は、従業員の生活を大きく変えている。サンタクララにあるNVIDIAのオフィスの駐車場には、ポルシェやコルベット、ランボルギーニといった高級車が並び、社内では新しい別荘購入の話題や高額なイベントチケットの話題で持ちきりだという。中には、数百万ドルの家に40〜60%もの頭金を支払う従業員もいるそうだ。
NVIDIAの株価は2019年初頭から3000%以上上昇しており、多くの従業員をミリオネアに押し上げた。しかし、この恩恵を完全に享受するには、通常4年間の勤務期間が必要となる。つまり、早期退職は大きな機会損失につながるのだ。
このように、NVIDIAは過酷な労働環境と引き換えに、従業員に莫大な富をもたらす可能性を提供している。AI時代の最先端技術に携わる機会と、潤沢な報酬パッケージは、多くの従業員にとって魅力的な”黄金の手錠”となっているのだ。しかし、この状況が従業員の健康や長期的なキャリア形成にどのような影響を与えるのか、今後注目される問題となるだろう。
Source
コメント