世界最大の半導体受託製造企業であるTSMCは23日、中国のHuaweiが米国の輸出規制を回避してAIチップを製造しようとした可能性があることを米商務省に通報したことを明らかにした。
TSMCが米商務省に警告、Huaweiの制裁回避の疑い
TSMCによると、ある顧客から受注した半導体チップの設計が、Huaweiが開発した大規模言語モデル(LLM)トレーニング用プロセッサー「Ascend 910B」と酷似していたという。TSMCは2020年9月以降、米国の制裁措置に従いHuaweiへの製品供給を停止している。
Ascend 910Bは、NVIDIAのA100グラフィックスカードと同等の性能を持つAIプロセッサーとされ、64ビット浮動小数点演算で9.7テラフロップスの処理速度を達成できる。カナダの市場調査会社TechInsightsの分析によると、このチップにTSMCの技術が使用されていた形跡が見つかっている。
さらに注目すべきは、Wall Street Journalの報道によると、Huaweiは今月中にAscend 910Bの後継チップの発売を予定しており、このチップはNVIDIAの最新モデルH100に匹敵する性能を持つとされている。すでに約70,000個、20億ドル相当の受注を獲得しているとも伝えられている。
深まる米中技術覇権争いの影響
米国政府は2年前、中国軍事力の向上を阻止する目的で、高性能AIチップの中国輸出を制限する措置を導入した。この規制の核心は、米国の技術や機器を使用して製造されたチップの中国国内への供給を全面的に禁止することにある。特にHuaweiは、その通信機器に中国政府のスパイ活動に利用される可能性があるバックドアが仕込まれているとの懸念から、米国の主要な規制対象となっている。中国側は、これらの主張を強く否定し、逆に米国側による同様の行為を非難している。
先週には、米メディアThe Informationは、米商務省がTSMCに対し、中国HuaweiへのAIチップおよびスマートフォン向けチップの供給有無について調査を進めていると報じた。これは、2019年に米国の貿易制限リストに掲載されたHuaweiへの制裁措置に関連する動きである。
情報筋によると、この事案における規制コンプライアンス違反について、TSMCに「悪意のある」行為は認められないという。また、商務省の調査はTSMCに「関連する」ものの、同社が調査の中心的な対象となる可能性は低いとされている。
TSMCは声明で「当社は法令を順守する企業であり、適用される全ての規則と規制に従うことを約束している」と述べ、2020年9月以降Huaweiへの供給を完全に停止していることを強調した。
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