米司法省(DOJ)は先週金曜日(3月7日)に提出した改訂提案で、Googleに対するChromeブラウザの売却要求を堅持した。2024年8月に検索市場での独占が認定されて以来、Trump政権への移行後も司法省の姿勢は変わらない一方、AIスタートアップへの投資規制は緩和された。この判断はAppleとの200億ドルに及ぶ巨額の検索契約にも影響を与える可能性がある。
司法省の新提案、「経済的な巨人」Google対策でChrome売却を要求
司法省と38州の司法長官は先週金曜日に27ページの最終提案 [PDF]を裁判所に提出し、Googleに対するChromeブラウザの売却要求を再確認した。この提案は「新しいライバルが、Googleの独占的支配から解放されたインターネット検索への重要な入り口を運営する機会を提供する」ことを目的としている。
司法省は提出文書でGoogleを「経済的な巨人(economic goliath)」と表現し、「何が起きようと、Googleが常に勝つことを確実にするために市場に混乱をもたらしている」と批判。さらに「アメリカンドリームは安価な商品や『無料』のオンラインサービス以上の価値がある。これらの価値には言論の自由、結社の自由、革新の自由、そして独占企業の支配する手によって歪められていない市場で競争する自由が含まれる」と主張している。
この提案はまた、AppleやMozillaなどの企業に対してGoogleが支払いを行い、Googleの検索エンジンをデフォルトにする契約の禁止も求めている。Androidについては、提案されたGoogleの対策が効果的でない場合、またはGoogleが一部の提案された解決策を「回避する」方法を見つけた場合に売却が必要になるとしている。
超党派的なビッグテック規制—政権交代後も変わらない姿勢
注目すべき点は、この提案がBiden前政権下で2024年11月に最初に提出されたものをTrump現政権が維持していることだ。政権交代にもかかわらず、司法省の姿勢に変化がないことは、ビッグテック企業に対する監視強化が超党派的な取り組みになっていることを示している。
Trump大統領は、最初の任期中に始まり、Biden前政権下でも継続されたビッグテック企業への取り締まりを続ける意向を表明。現政権は独占禁止法の専門家Gail Slater氏を司法省の取り組みを主導する役職に任命した。
AI競争力への配慮—投資規制から事前通知へ方針転換
一方で、米司法省はGoogleのAI企業への投資売却要求を取り下げた。これはGoogleが支援するAI企業のAnthropicが、Googleの資金なしでは存続が危ぶまれると政府に訴えたことが影響している。
司法省は11月の草案提案以降に入手した証拠から、GoogleのAI投資を禁止することが「進化するAI分野において意図しない結果を引き起こす恐れがある」と判断。代わりに、GoogleがAI関連の将来の投資について政府に事前通知することを義務付ける提案に変更した。
Googleは現在、AnthropicにOpenAIの競合であるMicrosoftと提携している数十億ドル規模の少数株式を保有している。Anthropicは2月の裁判所への書簡で、Googleの投資を失うことで、OpenAIとそのパートナーであるMicrosoftに競争上の優位性を与えることになると述べている。
Apple、200億ドルの検索契約が危機に—「独自検索エンジン開発の意図なし」と主張
GoogleのChromeブラウザ売却がAppleに与える影響も大きいと考えられている。Googleは現在、AppleのSafariブラウザでデフォルト検索エンジンとなる権利に対して、2022年には200億ドルを支払っていた。これはSafariでの検索結果広告収入の36%に相当する。
Chromeブラウザが売却された場合、このGoogleとAppleの検索契約も終了する可能性がある。Appleはこの事態を憂慮し、今年1月に緊急動議を提出してケースの停止を求めたが、Mehta判事に「遅すぎる」として却下された。
Appleは裁判所に対して、独自の検索エンジンを構築する意図はないと主張。Googleとの契約を擁護し、同様の製品を開発するには相当な時間とリソースが必要だと述べている。しかし、ソフトウェア体験を向上させるための強力な検索技術の開発や、Googleに対する交渉カードとしての検索技術の探索は長期的に行ってきたとされる。
Google「消費者と国家安全保障に害を与える」と反発—4月に公聴会へ
Googleはこの提案に強く反発している。同社の広報担当者は「広範な提案が裁判所の決定を超えており、アメリカの消費者、経済、国家安全保障に害を与える」と、Reutersに述べている。
Googleは昨年12月に独自の提案を提出しており、その中にはChromeブラウザの売却は含まれていなかった。代わりに、AppleやMozillaなどのパートナーがGoogleを検索エンジンのデフォルトとして提供し続けることを許可しつつ、それらのパートナーがライバル検索エンジンとも契約を結ぶことを可能にする案を提示。例えば、Appleが異なるデバイス(iPhoneとiPad)で異なるデフォルト検索エンジンを提供したり、ブラウザ企業が12カ月ごとにデフォルト検索エンジンを変更できるようにするという案だ。
また、Googleは判決に対して上訴することを表明している。
Amit P. Mehta判事は4月に両者の主張を聞く公聴会を開き、その後最終的な対策を決定する予定。判決は2025年夏頃に出る見込みだが、Googleの上訴により1~2年、あるいはそれ以上の時間がかかる可能性がある。
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