AMDの次世代アップスケーリング技術「FidelityFX Super Resolution 4(FSR 4)」について、既存のFSR 3.1対応ゲームが発売初日から新技術を利用可能になる可能性が高いことが明らかになった。この情報は、AMD関連の情報に精通した内部関係者Kepler_L2氏によって報告されたものだ。
シンプルな仕組みで実現される下位互換性
FSR 4への移行は、ドライバレベルでのDLLファイルの置き換えによって実現される見込みだという。Kepler_L2氏によれば、「RDNA 4ドライバがFSR 3.1のDLLをFSR 4に置き換える」という仕組みが採用される。この方式により、開発者側での大規模な実装作業を必要とせず、「単純に動作するはず(”it should just work”)」とされている。
この円滑な移行が可能となった技術的背景には、FSR 3.1で実施された重要なアーキテクチャ変更がある。FSR 3.1では、アップスケーリングとフレーム生成のライブラリが分離された。この変更により、FSR 4への移行がより容易になったと考えられる。
ただし、この互換性はFSR 3.0からの直接的なアップグレードには適用されない可能性がある。Kepler_L2氏の指摘によれば、FSR 3.1への更新が前提条件となる見込みだ。
RDNA 4との統合と業界への影響
FSR 4は、3月に予定されているRDNA 4世代のグラフィックスカード発売と同時にリリースされる見通しだ。David McAfee氏(AMDのRyzenおよびRadeon製品部門 副社長兼ゲネラルマネージャー)は、エンジニアチームが現在パフォーマンスの最適化と対応タイトルの拡大に注力していると述べている。特筆すべきは、FSR 4が専用のAIアクセラレーション機能を備えたRDNA 4アーキテクチャの性能を最大限に引き出すように設計されている点だ。
現在、FSR 3.1に対応しているゲームは40タイトルを超え、『Ark』、『Ghost of Tsushima』、『Marvel Rivals』などの人気タイトルが含まれる。さらにAMD公式の発表によれば、FSR 3/3.1対応の予定を含めると100タイトル以上に達する見込みだ。『The Last of Us Part I』のPC版における最近のパッチは、FSR技術の円滑な実装が現実的であることを実証しており、この成功例は他のデベロッパーの参考事例となるだろう。
この展開は、GPUメーカー間の競争において重要な意味を持つ。現在、アップスケーリング技術の分野ではNVIDIAが優位に立っており、同社は事実上の独占状態を築いている。しかし、FSR 4の広範な互換性は、そのような独占状況に一石を投じることになるかもしれない。特に、2019年発売のRadeon RX 5700のような比較的古いグラフィックボードでもFSR 4を利用できる可能性があることは、コスト意識の高いPCゲーマーにとって魅力的な選択肢となるだろう。
FSR 4の成功は、単にAMDの技術力を示すだけでなく、ゲーム開発業界全体のアプローチにも影響を与える可能性がある。従来、新しいアップスケーリング技術の導入には相当な開発リソースが必要とされてきた。しかし、FSR 4が提案する「ドロップイン」アップグレードの手法は、開発者の負担を大幅に軽減する新しいスタンダードとなる可能性を秘めている。このアプローチが成功すれば、将来的な技術アップデートにおいても同様の手法が採用される可能性が高く、業界全体の技術革新のペースを加速させる可能性がある。
ただし、これらの展望には重要な注意点がある。FSR 4の恩恵を最大限に受けるためには、RDNA 4世代のGPUに搭載される専用AIアクセラレーション機能が必要となる可能性が高い。また、FSR 3.0からの直接的なアップグレードパスが提供されない可能性も指摘されており、一部のゲームでは開発者による追加の作業が必要となる可能性も否定できない。これらの課題がどのように解決されるかは、FSR 4の市場での成功を左右する重要な要因となるだろう。
Sources
- Kepler (X)
- via VideoCardz: AMD FSR4 support may be added to all FSR3.1 games
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