本日、Microsoftは新たにAI性能を高め、Windows 11のAI機能を活用できるPCとして新たなブランド「Copilot+ PC」を発表し、Surfaceを初めとする多くのPCを近く発売することを明らかにした。
本日発表された全てCopilot+ PCは、QualcommのSnapdragon X EliteもしくはX Plusを搭載する「Arm」アーキテクチャに対応するものだが、x86アーキテクチャの雄であるIntelはこれに対抗し、x86アーキテクチャによるCopilot+ PCを実現する、次世代モバイル・プロセッサー「Lunar Lake」こと、Core Ultra 200Vプロセッサの新たな情報を明らかにすると共に、今年後半に対応PCが登場する事を発表した。
Lunar Lake: 電力効率とAIに焦点を当てた新アーキテクチャ
Intelは昨年秋にLunar Lakeをデモして以来、高効率のモバイル・プロセッサーであることをアピールしてきた。実際、時代は省電力かつ高性能のPCを求めており、その流れはAppleシリコン「Mチップ」によるMacBookが作ったと言っても過言ではない。
その先陣を切るのがQualcommだが、少し遅れてIntelもLunar Lakeでこの流れに乗る。これはIntelにとって2番目のメインストリーム向けタイル型CPUであり、IntelとしてはMeteor Lakeを反復的に改良する形で、新しいCPUとGPUのアーキテクチャを投入する。
Lunar Lakeの開発はすでに完了しており、Intelは同チップの生産マイルストーンをすべて達成、もしくは上回ったと主張している。これはまた、Lunar LakeがBステップ設計を採用し、すでに生産に入っていることを意味する。
Intelは、このSoCのOEMへの出荷を今年の第3四半期に開始する予定としている。つまり、完成したノートパソコンが小売店の店頭に並ぶのは第4四半期になると言う事だ。一方、Arrow Lakeはデスクトップ用とモバイル用(より高性能なチップとして)の両方があり、第4四半期にIntelから出荷される予定だ。Intelの計画の詳細は、Comptexにて明らかになるだろう。
Alder/Raptor Lake | Meteor Lake | Lunar Lake | Arrow Lake | Panther Lake | |
---|---|---|---|---|---|
Pコアアーキテクチャ | Golden Cove/ Raptor Cove | Redwood Cove | Lion Cove | Lion Cove | Cougar Cove? |
Eコアアーキテクチャ | Gracemont | Crestmont | Skymont | Crestmont? | Darkmont? |
GPU アーキテクチャ | Xe-LP | Xe-LPG | Xe2 | Xe2? | ? |
NPU アーキテクチャ | なし | NPU 3720 | ? | ? | ? |
アクティブなタイル | 1 (モノリシック) | 4 | 2 | 4? | ? |
製造プロセス | Intel 7 | Intel 4 + TSMC N6 + TSMC N5 | Intel + TSMC? | Intel 20A + More | Intel 18A |
セグメント | モバイル + デスクトップ | モバイル | 低消費電力モバイル | ハイパワーモバイル + デスクトップ | モバイル? |
発売日(OEM) | 2021 年第 4 四半期 | 2023 年第 4 四半期 | 2024 年第 3 四半期 | 2024 年第 4 四半期 | 2025年 |
ちなみに、IntelのLunar LakeとArrow Lakeにどのような製造プロセスが使われているのかはまだ不明だ。Intelはファウンドリー事業と製品事業を分離しており、チップ設計グループは最近、好きなファブを自由に選べるようにしている。つまり、Meteor Lakeのように、実際にはTSMCを使用してダイの一部を生産している事が予想される。
今日のプレビューで、Intelは先月のIntel Visionで使用したものと同じLunar Lakeのダイ図を使用した。これは、3つのタイル(SoC(上)、コンピュート(下)、そして構造シリコンとして使用されると思われる3つ目の空のタイル)を持つ、よりコンパクトな設計を示している。これは、Meteor Lakeの4つのアクティブ・タイルから減少している。
このタイルの減少は、消費エネルギーの向上にも一役買っていることだろう。Foveros/EMIB 2.5Dパッケージングによって実現された超短距離移動であっても、ダイからデータを移動させるのは非常に消費電力の高いプロセスであることに変わりはない。これは、Lunar LakeでオンパッケージLPDDR5Xメモリが採用される理由の一部でもある。
また、Lunar Lakeには、IntelのCoveとMontのCPUコアラインナップをさらに進化させた新しいPコアとEコア・アーキテクチャが搭載される事も明らかになった。Pコアには新しいLion Coveアーキテクチャが、EコアにはCrestmontの後継であるSkymontが採用される。
これらのアーキテクチャの詳細はまだ明らかになっていないが、Meteor Lakeで採用されたRedwood Cove/Crestmontアーキテクチャよりも大幅なステップアップとして位置づけられており、IntelはCPUコアの性能について非常に楽観的だ。PコアとEコアの両方が、IPCとワットあたりの性能を大幅に向上させるだろう。後者が完全にプロセスノードの改良によるものだとしても、IPCの向上はより大きな内部の変化を示唆している。
Intelのスライドの脚注には、Lunar Lakeの少なくとも1つのSKU構成が4P + 4E設計で、未公表の数の低消費電力Eコアが搭載されることも確認されている。これに対してMeteor Lake-Uは、2P + 8E + 2LPである。LPコアを別とすると、Lunar Lakeは全体としてCPUコアが2つ少ないが、Pコアは2倍多いということになる。全体として、Meteor LakeやAlder/Raptor LakeのEコア偏重設計よりもはるかにバランスの取れた設計となっている。
このモバイルチップには、新しいGPUアーキテクチャ「Xe2」も搭載される。これは、Intelが近々発表すると見られるディスクリートGPU「Battlemage」に搭載されるGPUアーキテクチャと同じものだ。
Xe2/BMの詳細は不明だが、最も注目すべき点は、Lunar Lakeに搭載されるIntelのXe Matrix eXtention(XMX)コアが、Alchemist以来のアーキテクチャの特徴となっているが、Meteor Lakeに採用されたXe-LPG設計には含まれていないことだ。この変更により、IntelのiGPUはデスクトップと同等の機能に近づくと同時に、IntelのXeSSテンポラル・イメージ・アップスケーリング・テクノロジーの高品質版を実行する手段を得ることになる。一方、新しいiGPUはラスター・グラフィックス性能も50%向上させ、小型チップのピクセル押し出し能力を大幅に高めるはずだ。
そして、このAI全盛の時代において、XMXコアのAIの可能性について触れないわけにはいかないだろう。XMXコアは、ニューラルネットワーク計算を実行するための高性能処理ブロックをLunar Lakeに提供し、60TOPS(INT8)以上の性能が期待されている。
(当然ながら)Lunar Lakeにも新しいNPUが搭載されるが、Intelはここではアーキテクチャの詳細には触れていない。Intelが以前明らかにしたように、Lunar LakeのNPUはINT8精度で最低45TOPSの定格であり、Meteor Lakeの11TOPSのNPUの3倍以上の性能である。一方、チップ全体の性能は100TOPS以上に達すると予想されている。
現時点では、Intel、Qualcomm、AMDの3社は同時に、AI性能の向上に躍起になっている。Intelは、Lunar Lakeが生のパフォーマンスでリードすることを期待しているが、彼らはまた、ツールセットと開発者サポートの概要を説明し、ソフトウェアの角度からかなり強くプッシュしている。
更に重要なのが、Lunar Lakeアーキテクチャの電力効率とバッテリー持続時間だ。Meteor LakeとAlder/Raptor Lakeは改善が見られるが、業界はいまだ、AppleのMシリーズを追いかけている状況だ。Lunar Lakeは、特に低消費電力デバイス向けに設計されたモバイル専用シリコンであるため、Intelはここで大きな成果を上げることを期待しており、Intelのプロダクトマネージャーはこれを「x86の消費電力に変革をもたらす瞬間」と呼んでいる。
Intelがどのようにこれを達成するかについての詳細はこれから発表されるが、その大部分は新しいSoCダイとその低消費電力アイランドにあるようだ。Intelによると、この新しいチップは電力効率のあらゆる面で改善され、現時点では間違いなく最も重要な点であるアイドル時の消費電力も改善されるという。
パフォーマンスへの期待
最後に、IntelはLunar Lakeの性能に関する簡単なスライドを公開し、AMDとQualcomm、そしてIntel自身に対して期待される性能とバッテリー駆動時間を概説している。AMDとQualcommのノートPCはまだ出荷されていないため、時間の経過とともに変化する可能性があるため、現時点では仮定の話となるが、Intelは同じ土俵に立つ準備が出来ているようだ。
Intelの脚注には、Lunar Lakeシステムを17Wと30W(DRAMを含むチップ全体の消費電力)の両方でテストしたことが示されている。しかし、グラフィックス性能の主張以外では、IntelはどのTDP構成がどのテストに使われたかを明らかにしていない。そのため当面は、特に断りのない限り、Lunar Lakeを30Wで使用したと仮定する。
今日のテーマを強調するため、IntelはQualcommのAI性能比較に乗り出し、GIMPフォトエディタ上で実行されるStable Diffusion 1.5において、南の隣人を40%打ち負かすことができると主張している。Qualcommがよく用いるベンチマークの1つであるこれは、Qualcommが公表している数値との比較であるとIntelは報告している。同様に、Intelは、未公表の性能推定値に基づいて、Snapdragon X EliteとAMDのRyzen 7 8840Uの両方に対してリードしていると主張している。
最後に、17WのLunar Lakeと15WのMeteor Lake Core 7 165Uを比較したGPU性能では、ラスターのみのワークロードである3DMark Time Spyにおいて、Intelが50%優れた性能を示している。
消費電力については、IntelはMicrosoft Teamsで、AIエフェクト(Windows Studio Effects)を重ねた9つのビデオウィンドウを含むワークロードを作成した。これは、Intelのラボにあるハードウェアを使用した計量テストであるため、ここでの比較対象はRyzen 7 7840UとQualcommの前時代のSnapdragon 8cx Gem 3でありあまり参考にはならない。当然のことながら、ここではIntelがリードしており、RyzenとSnapdragonにはないメモリを含むLunar Lakeのパッケージ電力測定というハンディキャップがあるにもかかわらず、である。残念ながら、IntelはLunar Lakeの消費電力をMeteor Lakeと比較したデータを公表していない。
今日のLunar Lakeに関する情報開示は、本日のQualcommチップ搭載Copilot+ PCへの牽制と、Computexとその先に向けた発表への期待を高める狙いがあるのだろう。Intelは今月末にTech Tourイベントを開催し、その数日後にはComputexの基調講演を行うため、Intelは他の競合他社同様、より詳細な情報をすぐに提供することになるだろう。
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