欧州連合(EU)の競争政策担当者が、半導体大手NVIDIAのAIチップ供給に関する懸念を表明した。AIアクセラレータ市場におけるNVIDIAの圧倒的支配は周知の事実だが、今回のEUの動きはこの流れに一石を投じる物となるかも知れない。
EUがNVIDIAのGPU供給を注視
欧州委員会のMargrethe Vestager上級副委員長は、NVIDIAのAIチップ供給に「大きなボトルネック」が生じていると警告した。シンガポール訪問中にBloombergの取材に応じたVestager氏は、次のように述べ、現時点では規制措置の対象とはなっていないとも付け加えた。「われわれはNVIDIAに質問をしていますが、それは予備的なものです」。
NVIDIAは、AIブームの最大の受益者として知られている。同社のGPU(画像処理半導体)は、AIモデルの開発に必要な膨大なデータを高速処理する能力において、データセンター運営会社から高く評価されている。AIアクセラレータ市場では98%の収益シェアと圧倒的であり、デスクトップGPU市場でも88%のシェアを持つとされる。
Vestager氏は、AIチップ供給における二次市場がイノベーションと公正な競争の喚起に役立つ可能性を指摘しつつ、支配的な企業は将来的に一定の制約を受ける可能性があると述べた。
「市場においてこのような支配的な地位にある場合、小さな企業にはできることでも支配的な企業にはできないことがあります。しかしそれ以外では、自分のビジネスを行い、それを尊重している限り、問題はありません」。
NVIDIAのGPU供給に関しては、異なる見解が存在する。HPEのAntonio Neri CEOは、AI向けサーバー用GPUの不足により2023年第1四半期の収益が期待を下回ったと述べ、リードタイムが20週間以上に及んでいると主張した。一方、分析会社TrendForceは最近、NVIDIAのGPU供給逼迫は解消されつつあるとの見方を示している。
EUの調査の可能性が浮上したことを受け、NVIDIAの株価にも影響が出始めている。Barron’sによると、規制当局がAIアクセラレータ市場における同社の支配的地位を精査し始めたとの観測から、NVIDIAの株価が下落傾向にあるという。
今後、EUがNVIDIAのAIチップ供給と市場支配力についてどのような判断を下すのか、業界関係者の注目が集まっている。
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