2024年4月3日に台湾で発生したマグニチュード7.2の地震は、この最先端半導体の製造拠点が数多く集まる地であるという特殊性によって、世界の半導体生産にどのような影響があるのかという懸念を巻き起こした。
元々が日本と同じ環太平洋火山帯に属する国ということで、台湾は普段から多くの地震に対する備えを行ってきたが、今回の地震は過去25年間で最も強いものであり、影響はやはり小さな物ではなかった。しかし、TrendForce社がまとめた調査によれば、DRAM生産への影響はそれほど大きくないようだ。
台湾ではMicron(2つの工場を運営)、南亜(1工場)、Winbond (1工場で特殊メモリを生産)、PSMC(1工場で特殊メモリを生産)と言う4つのサプライヤーが拠点を構えている。TrendForceが調査を行った5つのDRAM製造工場では、すぐにフル操業を再開したが、一部のウェハーを廃棄せざるを得なかった。TrendForce社は、今回の地震が第2四半期のDRAM生産に与える影響は軽微であり、影響は1%程度であるとしている。
実際、Micronは1αおよび1β nmプロセス技術でDRAMの生産を増強しており、メモリのビット生産が増加するため、2025年第2四半期の汎用DRAM供給にプラスの影響を与えるだろう。
震災後、DRAMの市況はスポット、コントラクトともに一時的にストップした。しかし、スポット市場の相場はすでにほぼ再開しているが、契約価格は完全には再開していない。特に、MicronとSamsungは震災直後からモバイルDRAMの相場発表を停止しており、4月8日現在も更新されていない。一方、SK hynixは震災当日にスマートフォン向けDRAMの見積りを再開し、第2四半期のモバイルDRAMについてはより緩やかな価格調整を提案している。
TrendForce は、第 2 四半期のモバイル DRAM の季節的な契約価格の上昇幅を 3%~8%と予想している。この緩やかな値上げは、SK hynix がより抑制的な価格戦略をとっていることも一因であり、業界全体の価格戦略に影響を与える可能性が高い。TrendForceによれば、サーバー用DRAMへの震災の影響は主にMicronの先端製造ノードに及んでおり、Micronのサーバー用DRAMの最終販売価格の上昇につながる可能性があるという。しかし、今後の価格の正確な方向性はまだわからない。
一方、台湾以外のDRAMファブでは、地震による直接的な影響は受けていない。これには、日本の広島にあるMicronのHBM生産ライン、韓国にあるSamsungとSK hynixのHBMラインが含まれるが、いずれも通常通り稼働しているようだ。
これまでも、DRAM業界は震災に対して回復力を示し、混乱は最小限に抑えられ、復旧も早かった。
一般消費者向けの標準的なDDR4とDDR5は、最も需要が低いため、実際には最も値上がりが少ないかもしれない。現時点でDDR4やDDR5を必要としているほとんどの人はすでに持っており、生産と在庫への影響は「地震によるわずかな価格上昇」で「速やかに正常化する」とTrendForceは予想している。
DDR3は異常値を示しそうだが、商用寿命が終わりに近づいており、生産量はすでに減少している事も関係しているだろう。
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